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一つの物語【断章】  作者: 世界の一つ
ある秋のパーティータイム
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ある秋のパーティータイム・サツキ編

やっと客足が減った……先程までごった返してたフロアが少しスッキリしている。

とは言っても行列はまだあまり減っていないが、部下達に声掛けをさせて正解だったようだ。


「隊長、お疲れ様でした!丁度いい時間ですし、あとは私たちにお任せ下さい!」


「ほら男性陣!気を抜かいでよ!」


「はぁ……人使いが荒いなぁ、女性陣は……」


くたびれてる男性陣を見てると、女ってかなりタフなんだなと感じさせる。悪いな男性陣、僕はこれで失礼させてもらうぞ……と言っても、見回りも兼ねての自由行動だから厳密には休み時間ではないんだ。僻んだりしないでくれよ


「じゃあ、悪いがあとのことは任せたぞ。何かあったときはいつでも連絡しろ」


『了解しました!』


と、隊員達の敬礼と返答を確認した後、僕はフロアから出た……それと同時に聞きなれた声が近づき、やがて歩みを止めた


「りゅうくん見っけ!!会いたかったよぉ〜スリスリスリスリ♪」


そう言って唐突に馴れ馴れしく抱きついて頬擦りしてきたのは紛れもなくサツキ……いや、デビルガールだった。


「えぇい、鬱陶しい!じゃれつくな!」


「だってぇ、2時間と34分ぶりの再会だよぉ!スリスリ♪」


お前はストーカーか……


「……それで、何にをしにきたんだ?」


「決まってるじゃん!一緒に出店とか見て回ろうと思って来たんだよん♪ レディからのお誘いをまさか断るつもりはないよね??」


「断る」


「断るの禁止ぃ!!もぉ、せっかくのパーティーなんだよ?一緒に楽しもうよぉ!」


たく、やかましいやつだな。いつもそうだが、今日はいつにも増してやかましい気がする、パーティーだから余計テンションが上がっているのだろう


「良いんじゃねぇか?リュウイチ、こういう時くらいお誘いにのってさしあげても」


「カイ……しかしだな」


「おぉ!良いこと言うねぇ、カイ君!」


「せっかくのパーティーなんだ、思い出作りにはもってこいだろ。それに……最近のお前は少し神経を張り詰めてるみたいだし、たまには肩の力抜いてこいよ……な?☆」


チッ、爽やか小僧め……カイの発言にその場にいた他の隊員たちもサツキのフォローをし始めた。


「カイさんの言う通りですよ、たまには羽広げても良いと思いますよ!」


「コラぁ!あんた達はさっさとフロアに戻りなさい!あはは、リュウイチ隊長、こいつらの話なんて"無視"しちゃっていいですからねぇ……じゃあ私もフロアに戻りまぁす!!」


なんか一つの単語に思いっきり感情乗せてなかったか……?

……肩の力を抜く、ねぇ……


「……まあ良いだろう、たまにはお前の誘いに乗ってやる」


「やった〜!!じゃあさっそく行こいこ!あたし行きたい所あるんだぁ、多分りゅうくんも好きそうなお店だよ!自作ゲームでクリアできたらスコアによって景品を選べるんだけど、その景品がりゅうくんの好きなゲームキャラのフィギュアみたいだよ♪」


「それを早く言え!他のやつらに取られてしまったらどうするんだ!さっさと案内しろ、サツキ!」


「は〜い♪」と返事をして僕の手を引きながら走り出す、取られていませんように!


サツキに案内された所は一等市政官ベースのとある部隊のフロアであった。どうやらその持ち前のプログラミングなどの腕前をゲーム制作という形で披露しているようだ。


「ここだよ!ムフフ……腕がなるなぁ!ねぇ、りゅうくん!♪」


「ああ、僕たちのテクニックを見せてやろ……ん?」


僕は返答しながら何となく見たある人物に違和感を感じた……あいつ、どっかで見たことあるような……


……っ!!

まさか、ユウとレナか??なんだあいつらがこんな所に……!

ユウとレナらしき人物はカツラとメガネやマスクを付けているが間違いない、絶対にあの二人だ


「ん?どうしたのぉ??」


「……いや、なんでもない。結構作り込まれているようで少し関心しただけだ……二人で1プレイずつやりたいんだが1回いくらだ?」


「……お二人さんですね、1000円になります……」


そう言うユウ……店員に支払いを済ませ僕はユウたちお手製のゲーム機に入り込む……どうやらバーチャル空間ゲームらしい、かなり精巧に作られている。


「りゅうくん優しい!支払ってくれてありがと!♪」


「どういたしまして……さあ、始めるぞ!」


「了〜解!♪」


ゲーム内容はセンサー付ガンコンで現れた敵を全て排除するというシンプルな内容だが、360度……つまり四方八方から敵が押し寄せて来るので、常に周りに警戒をする必要がある少々技術力を試されるゲームだ。


ふふ、僕とサツキはこういうゲームが大得意だ。他より負けないと自負しているくらいにな!


ーー


ーー


ーー


ーー


……数十分が経ち、僕たちは当然のようにゲームをクリアした。フッ……僕たちの力量を侮っていたようだな。



……やったぁ!!お迎えに上がりましたよ〇〇〇〇様ぁ!!!



「……おめでとう……ご、ございます、リュウイチ……隊長」


おい、せめて名前は伏せておけよ。なんで知ってるのかと不自然に見えるぞ、レナ


「どうも……それよりお前たち、途中でゲームの難易度上げなかったか?」


「あ〜!それあたしも思ったぁ!終盤の方敵の防御が上がってたよね!?」


「あら、バレちゃった?徐々に上げたから分からないかなぁと思ってたんだけど、気づかれちゃったかぁ」


おいおい、口調が完全にユウだぞ。もう少し隠そうという気を強めろ。


「ん〜じゃあ、お詫びにもう一つ景品を選んで良いよ☆」


「ホントに!?わぁい、じゃあどれにしようかなぁ……」


サツキが景品を選んでる間、僕はユウたちの近くに歩み寄り小声で声をかけた。おそらくサツキには聞こえまい


「……パーティーを楽しんでるみたいだな、ユウ、それにレナもまさかお前たちがここにいるとは思わなかった」


「やっぱり気づいてたのね、私たちも参加するようマスターからご連絡があったの……と言っても厳密に言えば自由参加だったんだけどね。 『君たちも参加してもいい』って仰られたからこういう形で参加する事にしたのよ!」


「……私は断ったのだが、ユウの押しに負けてしまってな……」


なるほど……


「マザーとして参加するより一等市政感で参加する方がリスクが少ないって事か」


「正解☆ おかげで随分楽しめてるわ、ねっ!レナちゃん!」


「……フン」


フフ、レナも満更でもなさそうだな。

こいつらにも休養が必要なのは間違いない、他のマザーは……さすがに来てないみたいだな。


「しかし、よくこんなクオリティ高いものを5日間で作り上げたな。二人で作ったのか?」


「いいえ、マザー全員で作ったのよ。マザー代表で私とレナが参加する事になったの、凄かったでしょ!」


レベルを途中で上げておいてよくそんな言葉が出るよな……


「と言うかなんでゲームなんだ?お前らそんなにゲーム好きだったか?」


「何言ってんの?あなたが私達にゲームの面白さを教えてくれんじゃない、忘れた??」


「おかげ私たちの日課となってしまったのだ、その元凶が無自覚だったとはな」


……え、僕が悪いのか?

あの時は単純にこいつらに気晴らしにとススメただけなんだが……


「これに決〜めた!ほら、可愛いでしょ!……ん??どうしたのりゅうくん、その人たち知り合いなの?」


「ゲームについて話していたんだ、どうやら強力な助っ人達がいたらしい。これを5日間で制作できるくらいのな」


「わぁ、すごいねぇ!とっても面白かったよ!」


「ありがとー☆ そう言ってくれると、みんなで頑張った甲斐があったわ!」


「みんなの絆の賜物だねぇ!♪ 特にーー」


うわー……あいつらが共鳴しあってる……面倒な事にならなきゃ良いが……しかも会話長くなりそうだし……


「お前も相当苦労してるみたいだな、リュウイチ」


「……まあな。でもこういう日常を見ると平和を感じなくもない。お前たちとこうして会話をする事も悪くはない」


「そうか……変わったなお前も……そして私も……あれからだいぶ経つが、こんなにも変われるものなのだな」


レナはサツキ達の会話を見ながらそう感慨に浸っている……確かに昔より僕たちの関係や考え方は変わったものもある気がする、昔のままだったらレナも僕もこんなふうに会話する事も無かっただろう


「りゅうくん、りゅうくん!ほら見てこれ!特別の特別だって言われて可愛い腕輪貰っちゃった! ペアみたいだから一緒に付けようよ♪」


「断る、僕以外のやつに付けてもらえ。そういうのは恋人がするような物だろう、僕はそんなもの断じて付けないぞ」


「ぶ〜!」と、むくれ顔をするサツキだが、僕はそれを無視して、ニヤニヤとした顔で僕を見るユウの方に視線を向けた。


余計な物をプレゼントするな!


「……まぁ、いっか。その気になったらいつでもいってね♪」


フン……


「じゃあ、景品も貰ったし、良作も堪能できたから僕たちはそろそろお暇させてもらうぞ」


「楽しかったよユミちゃん!また会おうね!」


「うん、私もその日を楽しみにしてるわ。また会いましょうね!」


「その邂逅が戦場じゃない事を願う……またな、リュウイチ……それにサツキも」


「あれ?なんであたしの名前知ってるの?……あぁ、さっき話してた時にりゅうくんが紹介してくれたの?」


「まあ、そういう事にしておこう……コホンッ!……さあ、行くぞ」


「うわっと!……あ、二人ともまたね〜!♪」


これ以上探られると不味いと思い、僕はサツキの手を引いてフロアを後にした。

……なんで僕が気をつかってやらなきゃいけないんだ?


さて、次はどこをまわるかな……ん?


「どうしたサツキ、顔が赤いぞ」


「え?えっと……あの……手繋いだままだから、少し恥ずかしいなって……」


っ!

しまった、ユウたちから遠ざけようという一心でここまで来てしまった……これは勘違いの嵐が起こりそうだ……


「す、すまん。つい……」


僕はすぐさま手を放そうとしたが、サツキの手がそれを許さず、ぎゅっと手を握りしめたまま放さない……


「おい……」

「あの!あの……」


??

サツキにしては珍しくモジモジとして頬を染めている……なんだ?


「あのさ!今日の18時に第1ホールでダンスパーティーがあるみたいなんだけど……よ、良かったら一緒に踊ってください!」


「ダンスパーティー?……あぁ、広告にそんな事が書いてあったな。そのダンスパーティーか?」


「う、うん……ダメ?」


ダンスか……このパーテイーの大イベントみたいだが……そう易々と承諾していいものだろうか……?


「だ、ダメなら良いだよ?ごめんね、急に変なこと言って……あはは……」


…… 昔ヒメカが言っていたな、他人と過ごす事は自分や相手が進化するための過程だと……僕も進化するべきなんだろうか……?


進化への過程か……


「……分かった。今日は特別だ、とことんお前につきあってやる」


「えっええ?!ほ、ホントに!?ホントのホント?!」


「ああ、だが今日だけだぞ」


「うん!ありがと、りゅうくん!♡」


……こんなにサツキが喜んでる姿を見るのは初めてかもしれない、昔サツキの誕生日にプレゼントをやったときもかなり嬉しそうだったが、今回はそれより喜んでるように見える。


「じ、じゃあ、もっかいパーテイー用のドレスに着替えてくるね♪ 第1ホールの前で待ち合わせでいいかな??」


ドレスと言ったらあの開会式の時に着ていたあれか、女は大変だな……にしても、ドレスで学祭みたいな行事にするなんて、マスターも時々疑問を抱かせる事をするよな。


「うむ、けどあまり待たせるなよ?」


「えへへ、善処しま〜す!じゃあまた後でね!」


そう言うとサツキはパタパタと走り出し、更衣室の方へと姿を消した。

さて、サツキが着替え終える前にもう少しその辺を見回ってくるか。ふむ、この辺りだとキラたちのフロアが近いな


僕はキラたちのフロア、その次はミツキたちのフロア、そしてユキタカたちの演奏会とユマリのフロアなどなど各フロアを一通り巡回した後、僕はサツキと待ち合わせをしている第1ホール前へ移動した。


流石に人が集まっているな、そのほとんどがドレスを着てる女性やタキシードを着ている男たちみたいだ。


……にしてもサツキのやつ遅いな、別れてから数十分経っているぞ。待たせるなと言ったのに……ん?

どっかで見た事あるような女性が真っ直ぐ僕の方へと歩み寄って来ている事に気づいた……まさか


「お前……デビルガールか?」


「サ・ツ・キ!!もう、せっかくりゅうくん用のドレスに着替えて来たのに第一声がそれ!?」


普段のサツキとは全く正反対でお淑やかささえ感じさせる……マジか……


「すまん……というか、少し胸元開き過ぎじゃないか?」


「ふふん!あたしだってみぃ姉に負けないくらいのバストの持ち主なんだよぉ!普段はこういう露出度が高いの着たくないけど、今日はりゅうくんとのダンスができるから特別に……ね?」


……フッ、まあいいか、事実今日は本当に特別な日だからな。サツキとこんな風に二人きりで過ごすのもあの夏以来だな……目一杯楽しんでみるか


「そうだな。そろそろ時間だしホールに入るか……サツキ、僕と踊ってくれるか?」


「りゅうくん……うん!もっちろん、喜んで!♪」


差し出した僕の手をサツキはフワッと乗せるように手を置き、その手をなるべく優しく握った。


「りゅうくん、あたし今とっても幸せだよ。大好きな人とこんな風に同じ時間を過ごすことができて……幸せすぎて怖いくらい……」


……


「でもね!りゅうくんとならそんな怖さも乗り切れる気がするんだ!ダンスのお誘い受けてくれてありがとう……大好きだよ、りゅうくん!♡」


「そうか……僕の方こそ、感謝するぞ……さあ、行くぞ!」


僕とサツキはホールへと向かい、一時のダンスをサツキと共に過ごした……幸せ……か、やはり良いものだな。



ーー



ーー



ーー



ーー




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