未定
隙間から差し込む光で目が覚める。
「腕がない」
わかりきってはいるのだが、未だにふと思う。
「おい・・・起きろ。さっさと支度しろ」
重い体を起こし、ホコリまみれの椅子に腰掛け傍らに眠る幼子を起こす。
「・・・。」
すぐに目覚め、黙ったままこちらを見つめる。
そういえばこいつは話せないんだった。
髪は乱れ服もボロボロ。新しい服を買ってやりたいのもやまやまだが、生憎一文無しでどうしてやることもできない。
「準備できたか・・・行くぞ」
その体に釣り合わない大きな袋を背負い出入り口の前に立ちすくむ。
「あぁ、なぜ俺がこんなやつの面倒を見ないといけなくなったのか・・・」
ーーーーー1日前ーーーーー
「お疲れ様です。こちらが討伐報酬となります」
赤黒く汚れた獣の耳をカウンターへ差し、受付係から報酬を受け取る。
「相変わらず器用ですね。その足。ただ・・・」
俺には腕がない。今はこうして足を手の代わりに使えるようになったが何かと不便だ。
義手は高い。そこそこの小金持ちでも手が出せない程に。
そもそも俺には手がないわけだが。
そのため高額報酬が得られるギルドの仕事を受けているわけだ。
「ただ、なんだ?」
「その・・・申し上げにくいのですが、えーと・・・」
「お前の足がクセェんだよ、ボケェが」
「ちょっと、それは言い過ぎですよヴァッズさん!」
隣のカウンターに並んでいた剣士がやってきた。
こいつは何かと俺に突っかかってくる。面倒なやつだ。
「そうか、悪かったな」
人間との付き合いはだるい。早く帰ろう。
今日でやっと片腕の義手を作る資金が貯まったんだ。
「おい、待てよアホゥが。まだ話は終わってないだろ~!たまには飯でも・・・」
話を遮ってその場を立ち去るがまだ何か言ってたようだ。
どうせまた腕のことだろう。
この国では身体欠損者は悪魔崇拝者という目で見られる。
どうやら体の一部を悪魔へ献上し、その配下にしてもらう輩がいるらしい。
その影響で生まれつきであろうと、不慮の事故で失おうと迫害の対象となる。
俺はそんな見にくい人間が嫌いだ。
ギルドを出ると幼い人間がぎっしりと詰まった馬車が立ち往生していた。
「おい!貴様。誰に断ってこんなとこで商売やってんだよ?」
「へへぇ、あっしはぶらりぶらりと旅ゆく奴隷商でございやしてこの街のルールというものを知らなんだもので・・・」
「そんな言い訳通らないんだよ!お、いい娘もちらほらいるじゃねぇか。おい、とりあえず何人かもらってくが文句ないよな?」
「そ、そんなぁ。勘弁してくだせぇよ。この子達は絶対に駄目です。誰一人として」
どうやらこの街を牛耳ってる組織の下っ端と奴隷商がもめているらしい。
他人の揉め事など興味もない。さっさと義手を買いに行くとしよう。
「あぁ、そこの旦那助けてくだせぇ!お礼はできる限りのことをしやすから!」
「離せ。俺には関係ない」