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6 魔王軍襲来

 帝国歴185年 赤の月 太陽の日

 遂にこの日がやってきた。

 今日、魔王が襲来してくる。



「リーザ、行ってくるよ」

「はい、あなた」


 彼女が抱いているのは俺の子だ。

 これでリーザが、勇者に取られることはない。

 

「……今日は差し入れに来なくていい。タロウを連れてアイバーグのおじさんのところでゆっくりしていなさい。馬車と御者を用意しておいたから」


「急にどうされたのですか?」


「わしも今夜は勇者とじっくり膝を交えて話したいと思っていたから」


「そうでしたか。いよいよ究極奥義の伝授なんですね」


「そうだ」


 初心者の技しか教えてやらんけど。


「分かりました。ではお気を付けて」

「ありがとう」


 リーザ。

 今までありがとう。

 こんな俺を支えてくれて。



 さて。

 行くか。



 俺は勇者を連れ、背の高い木々が生い茂る林を抜けて洞窟の前までやってきた。


「師匠。今日はここで特訓ですか?」


 俺が静かに頷いた、まさしくその時だった。

 頭上から甲高い声が轟く。


「勇者よ! 遂に見つけたぞ」

 

 俺はお決まりのセリフを返す。


「お、おぬしは大魔王……。まさか復活したのか!?」


「ククク。キサマの顔は覚えておるぞ! 先代の勇者が最も頼りにしていたソードマスターだな。それにしても老いたな」


「魔王よ! わしは未だ健在だ!」


「何を言うか、この老いぼれ。キサマなんざ、もはやどうだっていい。言っておくが、俺は単純に復活しただけではない。あの時の千倍の戦闘能力へと進化しているのだ。お前など敵ではない。まずは勇者、キサマからだ!」


 魔王は指先に魔力の弾を生成した。

 同時に魔獣たちも周りを囲む。

 死神はちょっと離れた木陰から、固唾を飲まずうかがっている。


「死ねい! 勇者!!」


 俺は勇者の前に躍り出た。

 魔法弾は、俺の胸で派手に爆破する。


「し、師匠おおおおおおおおおぉぉぉ!」 ← 勇者


「ギャハハ! てめぇからくたばったか」 ← 魔王

「やったー!!!」 ← 死神



 だが。

 砂塵が消え、何事もないように魔王を見上げた。


「バ、バカな」← 魔王&死神


 さらに死神は続けた。


「ま、まさか、あんた、残された時間でレベルを上げたの? でも、そんなことをしても無駄だ。だってあんたのステータス上昇率は0.00001%。レベル上げするのがバカバカしくなる設定だ。どうやってもこの死亡イベントが回避できないように仕組まれているのに、どうしてだ!」


 そんなことくらい知っている。

 このキャラ、序盤は強く設定してあるが、頑張ってもステータスがあんまり上がらない。

 だから上手いプレーヤーは、この爺さんを育成しない。こいつに餌(EX)をやるのが勿体ないからだ。

 そんな酷い扱いのキャラ設定だが、ひとつ抜け穴があった。

 それは……


「転職だ」


「ま、まさか……」


 そうだ。

 このゲームはレベル20を超えると、他のジョブへ転職が可能になる。それはモブキャラもそれは同様。俺はレベルアップ効率の良い餌場を無数に知っている。だから俺はすべての時間をレベル上げに費やし転職を繰り返していた。


 ソードマスター → 魔法使い → 僧侶 → 呪術師 → 光魔導士 → 時空魔導士 →  狩人 → 盗賊 → 武道家 → 戦士 → 竜騎士 → 暗黒騎士 → 忍者 → ギャンブラー → 賢者 → 無職



 無職になれば、今まで経験したすべてのスキルを自在に使うことができる。


 更にだ。

 勝手にイベントを攻略し、船や飛空艇を入手、そして世界を回り、力の種、技の種といったステータスアップのアイテムをゲットして大量摂取している。つまり勇者がゲットする前に、目ぼしい重要アイテムは大方おさえることに成功した。

 


 よって俺のステータスはこうだ!


 レベル:99

 クラス:無職

 HP:9999

 MP:9999

 攻撃力:999

 守備力:999

 魔法力:999

 精神力:999

 俊敏さ:999

 運の良さ:999

 技 時空切り 乱れ打ち …… 以下500個

 魔王 クイックタイム ファイナルディスティネーション改2 …… 以下500個

 嫁:リーザ

 子ども:タロウ

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