3 俺の計画
リーザが稽古に誘ってくるが、そんな暇、俺にあるのだろうか?
一刻も早く、状況把握をしておかなくてはならない。
「ところでリーザ、今、いつなんだ?」
「え? 太陽の日ですが?」
「じゃなくて、帝国歴何年だ?」
「どうされたのですか? 今年は帝国歴182年です」
やった!
勇者はまだ8歳。
この爺さんの力をもってすれば、今なら余裕で勝てる。
勇者の力に目覚めるのは9歳の誕生だ。
そうなったら厄介だ。
奇跡の力とかを普通に繰り出し始めたら、もう誰も奴を止められない。
少年漫画のように、追い詰めたらその分強くなっちまうからな。
俺Tueeeeハーレムコースまっしぐらだ。
だから、その前に仕留めてやる。
そうしたら、俺が代わりに魔王を倒してやるぜ。
とにかく、まずは勇者抹殺からだな。
問題は奴の実家だ。
名門の家系で両親家族とも、結構頑丈だ。
父は屈強の戦士。
母は神官。
長女は魔導士。
長男は武道家。
一度に4人はきつい。
一人ずつ行くか?
「おい、リーザ。そろそろ実践とか、どうだ?」
「あ、はい!」
「レベルはいくらまで成長している?」
「7あります」
よし。
リーザの後方支援さえあれば、長男辺りなら、なんとか沈められそうだ。
「ところで人間は憎いか?」
リーザは口を噤んだ。
「そうだよな。お前の故郷を滅ぼしたのは人間だ」
「で、でもヴァルドさまは、とてもお優しいです。こんな孤児の私なんかを大切に育ててくれ、戦う術まで教えてくださったのですから」
「ククク。それはだな、今日の日のためにだ」
「そ、それは、どういう意味なのですか?」
「よいか、リーザよ。人間を信じては駄目だ。奴らは邪悪なる生き物と知れ。お前の故郷を滅ぼしたのも、帝国の人間。だからこれからわしが、奴らに鉄槌をくだしてやる」