第五章 ― 旅の始まり
歩き出して数時間。疲れてきた俺達はゲーム定番の村を求めていた。
「なぁこの世界には人っているのか?」
「いますよ。もうすぐ村に着くので待っててください」
この言葉は何度目だろうか。もうすぐ着くと言われて2時間ずっと森をさまよい続けてる。
「そうだ!空を飛べばいいんだ!これさえあれば村なんてすぐに見つかる」
「あーダメダメ。バグってて現実と同じ動きしかできないようになっているんですよ。あ、でも空が飛べないバグを倒せば空も飛べるようになりますよ。修正されるわけなので」
この世界のシステムがわかった。例えば火が出せなくなるバグを倒したとすると修正されて火が出せる魔法(仮)が使えるようになるわけか。まさにゲームだな・・・いや元々ゲームの中に入っているわけだからゲームみたいな世界観でもおかしくないわけか。
「この世界にいる人もバグなのか?」
「この世界の人はバグではなく元々NPCだった人たちです」
「元々?」
「そーですねNPCだったキャラがバグによって命を吹き込まれたとでも言いましょうか」
こんな感じでユキから話を聞いて夢世界についてまとめてみた。
1、俺達の他にも夢世界の人がこの世界に影響のあるバグと戦っている。
2、しかし俺たちのように神器がないため倒せない。
3、電子機器などは無く時代背景は中世時代。
4、通貨は『Bit』というものらしい
5、時間は現実と同じく24時間で一日が終わる。
今のところわかっているのはこれくらい。
ただ俺達は一文無しで宿もなく野宿確定ってほどだみたいだ。
今は空の暗さからして午後8時ほどだろう。俺は昼から飲まず食わずで数時間も森を歩き続けている為バグと戦う前から死にそうなのだ。
「あとどれくらいで森を抜けれるんだ?」
「わ、わかりません。迷子になったみたいです」
驚きの返答だった。なぜなら旅に出る前は人工知能ですよ?迷うわけが無いじゃありませんか!とあいつは俺に向かって堂々と宣言しやがったからだ。その言った張本人についていったら迷子だぞ?あいつは何を根拠にあんなことを言ったのか俺のは理解できなかった。
「お前じゃ頼りにならない俺についてこい」
「えーっご主人様についていくんですかー?不幸のくせに」
憎たらしい・・・確かに俺は不幸だがこの世界に来て不幸の原因となるのがあいつだ。
しかし俺は森で遭難したときの術を身に着けていた。遭難したときは普通は下山しようと下に行くがそれは違う。地図もない俺たちはまず上へ行き、周りを見渡せる場所に行くのが鉄則だ。それから村や川を探す。
―数十分ほど移動してやっと辺りが見渡せる場所に着いた。幸いにも小さな川があり、やっとのどの渇きを潤すことができた。もう辺りは真っ暗で目の前を見ることすら大変で俺たちは野宿することになった。
とても眩しい光に襲われた。
ユキは何事もなかったように寝ている。俺はユキを起こしつつ辺りに村がないか探すと2㎞ほど先に大きな城下町?のようなものを発見した。
「おーい?少し先に城下町みたいなのがあったからそこに向かうぞ」
「うーん―あれは首都アルカディアですね」
俺がそんな話をしながら首都アルカディアに目指そうとした瞬間―
「ご主人様。後ろからバグが来てますけど大丈夫ですか?」
ユキにそういわれ後ろを振り向くと体長3mほどの化け物が俺達をにらんでいた。
どうやらこの化け物の縄張りだったようだ。
「このバグは何か能力とかは無いのか?」
「無いですね。しかし倒せばステータスの上方修正が入ると思われます」
「つまり能力が何もないから弱いってことか?」
「そういうわけではありません。今の我々より断然ステータスも上なので一発殴られれば即死。運がよくても骨が砕けて半殺し、といったところでしょう」
「それって逃げたほうがいいか?」
「そうですね・・・即!逃げたほうが身のためです」
ユキは半泣きになってそう答えた。
でも当然そうなるだろう自分たちより数倍デカい化け物が目の前にいるんだからな。
俺達は全速力で首都アルカディアまで走った。しかしあのバグは追ってこない。
多分縄張り意識が強いだけで特に短気というわけではないらしい。
走ったおかげで首都アルカディアにはすぐに着いた。ただ俺達は一文無しの為、この世界の通貨『Bit』を稼ぐべくバグ狩りをすることになった。
―作戦はこうだ。
バグを倒す→共通通貨『Bit』をドロップする。
ユキの話によると大体一泊するには30Bit必要でこの地域の雑魚を一匹倒すと大体2~3Bit、ドロップするらしい。つまり雑魚狩りをして稼ぐ場合は最低でも一日に10匹は倒さなければならない。
しかし指名手配されたバグを狙えば一発で100Bitほど手に入る。
その代わりかなりの強者で全然倒せないらしい。ちなみにさっきのバグも指名手配されていた。
(そりゃ強いわけだな・・・)
―もちろん俺達は雑魚狩りだー☆