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風雲の場所  作者: yunika
第二章
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二十.それぞれの想い

盗賊の襲来から数日経ち、建物の修繕や

怪我人の治療等が落ち着いた頃。

銀色の髪となった二人の活躍ぶりは村人から

称えられ、また畏れられた。

そんな村人達が輪を作る中、アゲハは

村長であるビッグスの前にローズをどん、と

突き出した。


「この女、隙を見てトージャ様の気を

 ひこうとしていたのよ」


アゲハは怒りに満ちた眼差しをローズに向けた。


「彼と私の祝言が迫っているっていうのに

 一体どういうつもりかしら。


 こんなんじゃ私、不安で結婚できないわ」


アゲハは油屋の長である父親に涙で訴えた。

ローズは真っ青な顔で必死に弁明する。


「アゲハ。ごめんなさい。

 だけど、そんなつもりじゃなかったの。


 あのときは村を、あの木を守るのに

 必死で何も考えていなかった」


ビッグスはしかめ面になりローズを睨んだ。


トージャの父であり村長のビッグスは

普段は温厚であり、この辺りの村に顔が

利く人物だ。若い頃に旅や冒険をしていた

縁で広い人脈を形成することが出来た。


だがそれだけでは村は潤されない。

村が一度貧困の危機にあったとき救世主と

なったのは友であり、彼の為に他の村から

この地に拠点を移してくれた油屋の主人だ。


彼らは互いの子同士を結婚させ真の家族に

なろうと誓い合い、油屋は大事な一人娘にも

関わらずアゲハを長男トージャに嫁がせる

ことを提案してくれた。


その油屋に多大な恩を感じながらビッグスは

トージャの周りをうろちょろするローズを

近頃疎ましく思っていたのも事実であった。


ローズ自身はトージャに惹かれながらも

アゲハの邪魔になることは望んでおらず

気持ちを抑えながらも彼と「男友達」の様に

過ごせたらと願っていた。


だがやはり時折湧く嫉妬からも、周りの目から

見てもやはり自身は女であり、トージャは

身分の違う村長の子であり。垣根を越えて

親しくすることなどもっての他だと実感した。


「本当にごめんなさい……、

 あまりに軽率だったわ」


ローズは心から、村長やアゲハに謝罪した。

慌てて駆けつけたトージャは騒ぎの事情を

知ると咄嗟にローズを庇おうと何か言いかける。

が、隣にいたアキニスに止められた。


「お前が庇うと余計にローズは責められる」


呆れた様な物言いだった。

実際アキニスは呆れていたし

色々と腹立たしかった。


油屋の主人はそれ以上に腹を立て顔を赤らめ

その怒りの矛先をビッグスへと向けた。


「私は君達の為にこの村に移り住んだ!

 私が得た富を村に供給し、君を救うため!

 この地に育ちやすい苗を買い、この村の

 物を売りに行き、この村を立て直した!


 私の可愛い一人娘は、君の息子の裏切りに

 遭いながら村に嫁がなければならないのか?」


そう言うなり、嘆き悲しむアゲハを抱き寄せた。


「でも私、トージャ様と一緒になりたい」


それでもまだ、愚息を想ってくれるのか……。


村長ビッグスはあまりにすまなく思い

油屋にこう切り出した。


「トージャを、サルバト家の婿にしてくれ。

 フォルズ家は、アキニスに継がせる」


周囲にどよめきが起こった。

トージャも驚いて見上げた。

だが父親と油屋の関係、油屋と村の発展の

ことは良く知っていたし、今の自分に何も

言う権利はない、と再び黙った。


油屋はしばし迷った後、こう返答をした。


「もうひとつ、条件がある」

「何なりと」


「あの木を切り倒せ。

 あれがあるから賊がやってくる。

 あれがあるから、村に隙が生まれるのだ」


「だが、あの木は今まで何人が切ろうと

 するもびくともしなかったはず」


村長の言い分に、油屋は首を振った。

そして脇にいた使用人に何やら指図し

彼に一振りの刀を持って来させると

ビッグスに見せた。


「この刀は、我が使用人が盗賊から

 手に入れたものだ。とある国に

 伝わる秘宝だとか。


 さらに手に入れた情報によると

 どうやらあの銀の角には相当な力が

 あるらしい。まあ、その木の実を食べた

 二人を見ても一目瞭然だが。


 そして―――――、この秘刀は、

 銀の角が切り取れる代物だそうだ」


トージャの顔は真っ青になった。




油屋の屋敷では、主人が念入りに

刀を検分していた。隣ではアゲハが

つまらなさそうに髪の毛を指で

くるくると巻いている。


「ローズとトージャ、いつかやらかすと

 思っていたんだ。

 まあ、何もなくとも文句は言ったがな。


 ……これでこの村は私の物となった。

 あとは、銀の角の力を手に入れるだけ」


油屋の主人はニヤリと笑った。

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