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暇ならちょっと世界を救ってみませんか?

人が行き交う。

たまに肩がぶつかる。

謝ったり、たまに謝り損ねたり。

そういうことが1分に1回は起きるほど人が混み合った夏祭り会場。

特に目的もないままふらふら歩いていた僕は空に打ちあがる花火を見上げていた。

家でひきニートを中学生2年生のころからはじめ、もう6年ほど経っているのにもかかわらず、今日外に出てきたのには特に理由もなく、ただただ外って今どんな感じなんだろうと思ったことが事の発端だった。


もちろん経った数年で街が大きく変わるなんてことはあるわけなく、中2にいたるまでに散々見飽きてきた街の風景は全く変わらずそこにあった。

しかし、今日という夏祭りというイベントはやはり特別で、花火はとても綺麗なものに写ってしまい、花火が上がり始めてからはずっと目を奪われ続けて道のど真ん中に立ち尽くしていた。


「今までにこんな綺麗なもの見たことあったっけ・・・」


思い出そうにも中2以前の記憶はかなり掠れてしまったようで、思い出そうにもかなりどうでもいいことばかり思い出してしまい、結局綺麗なものを思い出すには至らなかった。


「---・・っ!!-----!!」


ぼーっとしているところに誰かの叫び声のようなものが聞こえ、ふと我に還った。

何かあったのか。周りを見渡してみると、あれほど人がいた自分の周りには自分以外の人は一人もいなくなっていて、自分を中心として円を描くようにして大きく距離が置かれていた。


「はやく逃げろってんだろ!!」


いかにも熱血って感じの男が僕に向かって吠える。額には冷や汗にも似たような何かが光っているのが見えた。その隣も、その奥のほうにも、青ざめたような、何かをあきらめたような顔で僕の顔を見ている人がたくさんいた。


「逃げるって何から・・・」


尋ねる。その瞬間に轟音は響く。


次の瞬間には、目の前にドス黒くて丸い大きな玉が落ちていた。

なにかを悟るよりも、行動するよりも早く。それは光を放ち、轟音を放ち、花を咲かせた。


「 」


死んだ。

みんなが危険なことを教えてくれたのに僕は逃げることができなかった。

そこでふと思った。

危機を教えてくれたのはいい。実際それで気づくこともできただろうし。

でも知らせるだけ知らしておいて誰も手を差し伸べてくれないというのはちょっとおかしいんじゃないか?

クズみたいな思考をしているが、実際のところ事実。

あいつらは知らせるという事実だけを作り上げて、自分にできることはやったという認識を作り上げることで罪の意識を消しただけなのだ。

もしあいつらが今回の事件についてインタビューとかされたとしたらみんな口をそろえてこう言うはずだ。


「危ないとは言ったんですが、本人が動かなかったのでこうなってしまいました。手を差し伸べるような時間もなかったです。本当に残念です」


薄情なやつらだ。人間なんてそんなもんだ。自分さえよければいいんだ。

自分だってそう思う。自分が幸せなら他人が不幸になったって別にどうでもいい。でも自分がピンチな時にはどんな状況であろうと助けて欲しい。

人間なんてそんなもんだ。


「もういいですか?」


ふいに声がした。女神のように綺麗な声だった。

いや待て。僕は死んだんだから誰かの声が聞こえるなんておかしい。

疑いをかけつつ声がした方向を見ると。


「死んだ感想はどうですか?」


女性がいた。シスターのような、でも教科書で見たことのあるシスターの格好とはまた違い、肌を完全に隠したりもしてないし、なんなら寝巻きとにこういうのあったよなと思わせるような格好だった。

歳は19かそれ以下、顔は・・・めっちゃかわいい、彼女にしたいですかといわれたらコンマ数秒の差も置かずに手を上げるレベルだ。


「ちょっと嫌な質問しちゃいましたね。では早速本題に移っちゃいます。正直あなたの都合に合わせるほど私に暇はありません」


発言の様子からするに、顔はかわいいくせに性格はブスということが発覚しそうなので手を上げるのはやめることにした。と思いつつもまずは思ったことを言ってみる。


「あなたは誰ですか?ここはどこですか?僕は死んだはずですよね?」


聞かれたほうは一気に質問するなゆっくり質問してくれと言わんばかりに一気に質問してしまったが、目の前のシスターもどきは手馴れたように質問にすらすらと答えた。


「私は天界に所属している女神です。ここはあなたのいう現実と天国の狭間です。あなたは花火の不発弾によって死にました」


ありえないことを言う。けどあんまり取り乱したようなことを言うとこのシスターもどきにうるさく思われるうえに最終的には嫌われてめんどくさくなるような気がしたので、無理やりにでも状況を理解し、会話を続けることにした。


「で、あなたはなんで僕の前に現れたんですか?」


この質問に対して、シスターもどき改め女神様はにこりと微笑んで答えた。


「はい。それが今回の本題です。」

「あなたは現実世界のほうで死んでしまったので、こちらの天界に来て生まれ変わりの資格がもらえるまで生活するか、異世界に転生するかの選択ができます」


生まれ変わりの資格。天界にいくのは容易ではあるのだが、生まれ変わるには何かしらの条件があるようだ。しかし異世界に転生するというのが気になって仕方ないがまずは生まれ変わりについて質問することにした。


「生まれ変わるためには、天界にてある一定の値まで徳を積まなければなりません。徳を積んだ数値によって、生まれ変わる対象も変わります。」


生まれ変わるためには天界にてたくさんおりこうさんにしないといけないようだ。では異世界というのは・・・?


「異世界に転生についてですが、あなたが住んでいた別の世界にあなたが死んだ直前の身体状況のままで生まれてもらい、いせかいで生活をするというものです。わたしとしてはこちらをオススメします。というのも・・・」


一瞬言葉を詰まらせてから女神様は続けた。


「天界で徳を積んで人間に生まれ変わるには少なくともあなた方人間にとっての感覚では20年近くかかることになります。正直こちらはオススメできません。ていうか・・・」


女神様どこか開き直ったような、今までで一番輝いた笑顔を見せながら。


「どうせ天界にいっても暇になりますし、異世界にいって世界を救ってみませんか?」


僕が異世界に行きたいとか何かしらの答えを出す前になにかのゲートが開き、僕はそこに飲み込まれていた。

女神って、わりと自分勝手なんだな。


こうして、僕の全く望みもしない異世界生活が始まることになったのだ。

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