06.クラスの絆……あたし達はこれで立ち向かう!
21日。埣寺の調べで、相次いだ事件の主犯が綾海である事が分かり、南境から2年3組へと伝えられた。明神もそれを手伝い、なぎさと綾海の関連性をはっきりさせた。
「綾海ちゃん、ねぇ」
史衣那を始めとするおしゃれ系グループの生徒達は一応話を聞いてくれたが、まだ信じられない様子だった。
「あの子がそんな事するなんて……ね、もうちょい詳しい事分かってない?」
「それは……埣寺がさらに調べてる」
「そっか」
史衣那は落ち着いた様子で南境と言葉を交わした。
「それにしても、あの綾海ちゃんがなぁ……分かったけど、正直信じられないや。今日は帰るね」
史衣那は見るからに戸惑っている。チアリーディング部の子に顧問への伝言を頼み、ゆっくりと教室を出た。他のメンバーも彼女に続いた。
「まぁ、覚えてもらっただけでもよしとするか……あの綾海が、って思うのも無理ないしな。俺だって、犯人は綾海でーす! っていきなり言われたら同じ事考えると思う」
南境が史衣那に共感した。
「綾海って子あんま知らないからかな……やった理由が、嫌なやつがどうのこうの、ってのが理解できないんだよね。どういうこっちゃ?」
鮎川は綾海の動機に疑問があった。嫌なやつ呼ばわりされる原因が見当たらないからだ。
「あたし綾海と同じ中学だけど、何かやった覚えないしなぁ」
流留も頭を抱えていた。
ところが次の日の朝、史衣那と明神が以前のように仲良く登校して来た。
「流留ちゃん! あゆさん!」
史衣那に、友達みたいに声をかけられて鮎川と流留は驚いた。
「シーナ? えっ、ちょっ……どういう風の吹き回しよー?」
「熱でもあるんじゃない? 世界史の先生みたくインフルかもよ?」
「もぉっ、二人共違うってば……しぃ、昨夜すっごく悩んだんだよ? 綾海ちゃんがあんな事するはずないし、嵌められていたって思うと悔しくて。それにね、今更流留ちゃん達に謝っても、許してもらえないんだろうなって……」
普段の史衣那とは全く違う、どこか弱気な弁解だった。
「許さない訳ないじゃん! あたし達、一緒なんだからさ」
流留が史衣那の背中を優しく叩いた。
「流留ちゃん……」
「流留、鮎川……うちらも、ごめん」
他のおしゃれな女の子達が申し訳なさそうに顔を覗かせた。
「皆……いいったら! ほら、3組行くぞっ!」
流留と鮎川が駆け出すと、史衣那らは明るい表情で二人に続いた。
3組全員が揃うと、次第に揉め事なんて最初からなかったかのような雰囲気になった。それに対し担任は安心し、副担任は目を丸くしていたがようやく理解してくれた。史衣那達が話したからというのもあるが、樫崎にもこっぴどく叱られたらしい。
同じく22日。放課後、再び南境からの報告があった。
「綾海の事、よーく分かったぜ……あいつ、元々とんでもねぇやつだった」
「とんでもねぇやつー?」
流留と史衣那が返した。
「例の動機、ほぼ100パーセントがただのいちゃもん。それか妬みやっかみ……進学コースはエリート気取りでムカつくだの、流留と史衣那はクラスや部活で偉そうにしてて気に食わなかっただの、ボロクソ言ってたらしいぜ」
「うっわー」
「そんなのないよぉ……」
綾海の陰口を知り、流留と史衣那は引いた。
「けどさぁ、言いがかりつけるだけならまだしも……普通、あそこまでやる? 1組とか相当被害出てるじゃん」
「鮎川、そこだよ! 綾海のとんでもねぇとこ。あいつ……いや、正確に言えばあいつんち、そうやって自分が敵だと認識したやつには容赦ないんだ」
「私、そういうの知ってる!」
三河が声を上げた。
「祖志継家、でしょ?」
南境が黙って頷いた。
「そう、それだ……綾海んち、妃元家は祖志継家に賛同して、次の当主の所に人嫁がせた家なんだ」
「次の当主の所? って事は……あのおばさんが元いた家だ!」
三河が声を上げ、続いて南境に15日や中学時代の事を説明した。
「今の三河の話で完全に繋がったな……なぁ、皆」
ざわついていた3組の生徒達が静かになった。
「もし俺が、黒幕やっつけようぜって言ったら……やるか?」
「やる!!」
3組、総勢40人が揃って答えた。
「なら決まりだな……やるってよ」
南境は教室の前にいた蛇田や海椰、その他の仲間達を教室に招き入れた。
「俺らと3組……1組と空椰もかな? とりあえず、綾海被害者一同、やってやろうじゃん!」
「おう!!」
こうして3組は、南境らと共に一連の事件を仕組んだ綾海に立ち向かう事になった。
一人の悪意に翻弄され、時にはバラバラになった2年3組。真実を知り、クラス一丸で戦うと決心した彼女達の活躍はあともう少し、いや、まだまだ続くだろう。
これより先は、このクラスを思ってくれた友人と共に。