03.あっちの人達はもう結構! それより事件に挑むんだ
14日。周りがホワイトデーで盛り上がっている一方、2年3組は静まり返っていた。
「全員いるよな?」
明神が口を開いた。
「こいつは何なんだ!?」
明神が示した黒板には史衣那に対する誹謗中傷と電話番号、SNSのアカウントが書かれていた。
「流留! またてめぇらか!?」
「違う!! あたし達、そんなの知らない!」
「それじゃあ、湊か? それか、灯華とかか?」
湊が首を横に振った。
「私達もやってないんですけど!?」
「そうだよ! 逆に聞くけどよぉ、お前が疑ってる俺らがやったっていう証拠あんのかよ? それともまた、怪しい目撃情報でも入ってんのか?」
灯樹が援護した。明神は言い返せないようだ。
「とにかく、俺らは関係ないからな! 流留達も!」
「ってな訳で解散! はーい、皆散ってー」
犯人探しは灯華が強引に締めくくった。
おしゃれ系グループは最初の嫌がらせ同様担任に告げ口したが、一連の事情を知る彼は呆れた様子で聞き流していた。しかし、普段からひいきしてもらっている副担任は彼女らの言う事を鵜呑みにしたようだ。
「この前のもそうだけど酷すぎよ! 史衣那が何したって言うの?」
1時間目の前にヒステリックな説教が始まったが、生徒のほとんどが完全に聞く耳を持っていなかった。灯華や灯樹、その友人達は教科書やノートを机の上にしっかり揃え、授業が始まるのを待ち、体育会系グループの連中は小さいダンベルを弄んだり、ペンを回して遊んだりしていた。
「って、ちょっと! 皆、聞いてないわよね!?」
「当然ですよ。僕達は無実で無関係ですから」
灯樹がまじめな口調で副担任に言い返した。
「先生も僕達の事疑うんですか……まぁ、そうなりますよね。お気に入りの子がいじめられて、僕達の内の誰かが犯人だって言ってるんですから」
「お気に入りも何も……関係ある人の話を聞くのは当たり前じゃない」
「だったら僕達の事も聞いてくれますよね?」
「それは……」
「いじめっ子の言い訳は聞かないって事ですね。そうですよね、世のいじめっ子達は自分のやった事認めませんからね」
「え、えぇ……そうよ? 当然じゃない」
「それなら、僕達が加害者と思われてる以上話になりませんね。時間もったいないですよ? 早く授業始めてくださいよ。総合コースで3組だけ遅れてますよね?」
不服そうな副担任は投げやりな態度で日本史の講義を始めた。それに対して昼休み、灯華が腹を立てていた。
「先生、本当に何なの!? 蛇田さん達から聞いた話も無視したしさぁ」
「本当! シーナ達ばっか! やっと姉貴達と元通りになったと思ったら……その、何か、変なのに巻き込んじゃったね。ごめん」
流留が急に弱気になった。
「流留達は悪くないじゃん!」
そう言ったのは尾崎だった。
「尾崎?」
「おかしいのはあっち! 元々そうじゃん? だから嫌だったんだよね」
「そうなの!?」
鮎川は驚いた。普段の態度から、尾崎は2大勢力丸ごと嫌っていると思っていたのだ。
「そうなのっ……でさ、皆これからどうする? たぶんあいつら、ずっとあのまんまだよ?」
鮎川達は悩んだ。
「副担任の授業サボっちゃわない?」
「ボイコットってやつぅ!?」
三河の発言に皆が飛び付いた。満場一致で明日以降日本史だけ欠席する事になった。
昼休みは続く。1組と6組でも午前中に何かあったらしく、問題のないクラスも騒ぎ始めていた。
南境が3組を尋ねて来た。
「海椰から、3組が今朝揉めてたって聞いたんだけど大丈夫か?」
「まぁね。騒いでるのは一部の分からず屋だけだから……そっちは何か分かった?」
「全然だ」
「そう……そうだ、皆!」
鮎川は流留や灯華、自分側の生徒達を呼んだ。
「犯人呼ばわりされっぱなのも嫌じゃん? せっかくだし、真犯人探そうよ! 暇潰しにもなるじゃん!」
体育会系グループ、灯華と灯樹やその仲間が鮎川の話に乗った。