表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

人魚の涙~A mermaid's tear

作者: 綴 麗華

人魚の涙は真珠となる。

人魚はすべての涙が流れたら…

泡となって消えてしまう。

泡となった人魚は記憶から消えてしまう…

家族・恋人・友人…すべての記憶から消える。

泡となった人魚は海を永遠に彷徨う…

どうして人魚は泣くのだろうか…

人魚は大切な人がもうすぐ死んでしまう…

そう言って泣いている。

大切な人…陸に住む者…

人魚は海に住む者…

陸に住む者とは決して交わらぬ運命…

人魚は遠い昔…恋をした…

決してしてはならぬ恋だった。

人魚は人間に…

人間は人魚に…恋をした。

別の世界に住む者同士…

誰がこの恋を許せるだろうか?

束の間の幸せ…すぐに別れの時はやってくる…

二人は引き離され…互いの世界へ帰って行った。

人魚はこの恋が忘れられず…陸を見ていた…

人間はこの恋が忘れられなかった…海を眺めていた…

だが、人魚と人間は流れる時間が違った…

人間の長い時間…人魚にはほんの一瞬…

すべてが違う人魚と人間…

人間は長い月日の間で結婚をした。

そして今、息絶えようとしている…

人魚は人間の死に涙を流している。

人魚は涙を流したら泡となる…

そう知っていながら涙を流した。

大切な人のために…

この涙があの人を救ってくれるなら…

そう思いながら…

人間はずっと後悔していた。

人魚を傷つけたことを…離れたことを…

あの時、人魚を選んであげられなかったことを…

人魚を幸せに出来なかったことを…

人魚のことを忘れたことは一度もなかった。

人魚の涙はすべての万病から救う…

人魚の涙が人間の元に届けられた。

しかし、人間は使おうとしなかった。

人魚を傷つけた罰なのだから…自分は助かる意味などないのだと…

人魚のことを胸に抱いたまま…人間は死んだ…

人魚は人間の死を知らない…

ずっと涙を流し続けていた。

話をすべて終えると人魚の涙が止んだ…

人魚は海を彷徨いながら…再び人間と会える日を待っている…

そう言うと…泡と消えた…

泡となった人魚はすべての記憶から消える。

人魚は命をかけた恋をした…

自分が死ぬと分かっていて涙を流し続けた…

海に住む者と…

陸に住む者との恋は海の記憶には残らない…

だが、言い伝えとして残るだろう。

陸に住む者の記憶には残るのだから…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ