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短編集 ~一息~  作者: つるめぐみ
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 話をする前に、まずは自己紹介をするとしようか。

 私は詐欺を生業(なりわい)とし、金を得て豪遊する優雅な生活を続けている。当然、詐欺師なので嘘は上手いと言っておこう。

 君はここで考えるかもしれないな。今、私が冒頭で語った全てが嘘ではないかと。

 しかし、それは事実だ。私は詐欺を生業としているのにも関わらず、警察に捕まったことが一度もないんだ。

 だからこそ、本当を嘘だと思わせ、嘘を本当だと思わせることもできる。それがプロの仕事だと考えているからだ。

 警察に捕まったことがないというのも嘘だろうだって? 

 本当だよ。金を得て豪遊する優雅な生活を続けていると先に言っただろう。豪遊は牢獄ではできないからな。

 では、嘘が上手いという話が嘘だと思うかい? そうすると、私は詐欺師ではないということになるな。

 ほら、どれが正しいのか、わからなくなってきただろう。そこで私は既に、君の思考を手中に収めているというわけだ。

 北の大地は南の大地よりも寒いと思いこんではいないだろうか。南半球を見たらどうだ? 寒いのは南側だろう。そういうことさ。

 頭が固すぎるのは時に自らを混乱させ、最悪の場合は破滅をもたらすこともある。時には柔軟に対応することも大事だと思わないとね。

 極端な話だが、警察が真実を語るかといえば、そうではない刑事もいる。詐欺師が嘘をつくかといえば、そうではない詐欺師もいる。

 売れ行きの商品というが、実際はどうなのだろうか。営利目的の嘘ではないだろうかと考えたことはないかい?

 詐欺ではないが、騙していることになると私たち詐欺師としていることは変わらないのかもしれないな。いや、今のは極論だから難しく考えないでくれ。

 ん? 言っていることが支離滅裂になってきたって?

 そうだな。君は正しい。言った通り私は詐欺師だからな。誘導も得意なんだ。

 長々と語っているが、私はこの仕事から足を洗おうと思っている。

 この詐欺という行為と人を騙す生活にうんざりしてきた訳だ。明るみに出ていない詐欺だから、警察にいくなら自首ということになるな。

 しかし、応対してくれた刑事の言い分が納得できないし、理解できない。どうしたものだろうかと悩んでいるんだ。誰でもいいから、この刑事を納得させる理屈を教えてほしい。

「なるほど。では、証拠が見つからないとはどういうことだ? それに言っていることが支離滅裂で理解できない。もっと簡潔に教えてくれ」

 事情を語ったのにこれだ。これで警部というのだから話にならない。

「警部。素性がわかりました。彼女は隣町に住んでいるそうです。話をしたところ親御さんが迎えにきてくれるそうなのですが、困ったことに自分を男として考え、詐欺師と思いこんでいるとか」

「それは一体、どういうことだ?」

「彼女が語った罪や素性は、全て嘘だということですね」

 私は詐欺師。嘘が上手いし警察に捕まるような証拠も残していない。親御さんとは私に、この詐欺という行為を教えた義理の親のことだろうか。

 どうやら私は、足を洗うこともできないらしい。

 私は詐欺師。本当を嘘だと思わせ、嘘を本当だと思わせることもできる。

 けれど今回だけは信じてほしい。私は私なのだということを。

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