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短編集 ~一息~  作者: つるめぐみ
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人間社会

 時刻は九時、静まり返ったある家のキッチンで、小さき会議が行われようとしていた。

「では、本日の議長のイヌくん」

 鳥かごの中にいるインコの指名で、イヌが前に進み出る。

「では、飼い主が出掛けたところで会議をはじめよう。ネコくん、金魚さんも、よろしいかな?」

 全員が緊張した様子で、首を縦に振って答える。イヌは皆の同意を確認すると、会議をはじめた。

「それでは本日の議題について。議題提出者は金魚さんとインコくんだ。ネコくんの行動が横暴すぎる。僕たちを引っかきまわさないでほしい! うむ、確かにこれは深刻な問題だ。では、どちらの言い分が正しいか多数決をとろう。ネコくんが正しいと思う者は手をあげたまえ!」

 手をあげたのはネコ一匹だけ。彼の行動が間違っているほうに他の全員が手をあげた。

「では次、ネコくんが発情期に騒ぐのは迷惑だ。少し静かにしろ。では多数決を――」

 イヌが他の全員に挙手を求めようとした時が、ネコの我慢の限界だった。

「待てよ、さっきから俺のことばっかり。俺をのけものにする気か? いいよ、そのつもりなら。俺を受け入れてくれる家ならある。そこに行けばいいだけだからな」

 それだけ吐き捨てると、ネコは家を出て行ってしまった。我が儘ばかりだった一員が外に出たのを見て、議長の犬が息を吐く。

「よし、うまくいったな。人間がやる多数決とやらでひらめいて、実行に移したのが功を奏した。うちを乱す荒れくれ者がいなくなって清々したよ」

 インコも金魚も喜んだ。これでネコの機嫌を見て生活する必要はなくなったのだ。

 ――と、そこで動きをとめたイヌは、ふと思いついてインコと金魚に訊いた。

「そういえば、あいつ……自分を受け入れてくれる家があるって言っていたよな。これは人間の世界でいうと、離党した議員が違う党に入党するってことでいいのかい?」

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