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短編集 ~一息~  作者: つるめぐみ
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打開策

 ある市に経営難に陥っている動物園があった。

 閉園を回避するために職員を少人数に抑え、動物たちの餌も商店街から貰って間にあわせている。

 それでも赤字になっている理由は、珍しい動物を扱っていないこと。市の税金でようやく採算が取れているため、展示物に金をかけられないことにあった。

 そこで打開策として園長の部屋に飼育員長が呼ばれた。

 互いに案を出し、園を盛りあげていこうという考えだ。

 まず、園内の状況を一番把握している飼育員長が意見をだした。

「形態展示ではもう限界かと……この費用では行動展示もできないですし、違う手を考えなければいけないですね」

 形態展示は動物そのものの姿を見せる方法である。行動展示は最近有名になった動物本来の動きを見せる方法だ。

 だが、これを経費削減している状態でできるのかというと難しかった。

「入園料を下げているのも限界か」

 園長は大きく息を吐く。

 二十年前からあげていない入園料をあげることしか方法が見つからない。だがこれは苦肉の策だ。入園者数が減ってしまっては意味がない。

 結論が見つからず二人は悩んだ。このままでは閉園してしまう。仕事仲間と愛している動物たちと離れてしまうことになる。

 その時だ。テレビの音声が聞こえてきた。

 どうやら昼休み中の飼育員が動物番組を見ているらしい。

『こんな芸ができるなんて、すごいですね』

 飼い犬が鼻の頭に空き缶を載せながら二足歩行をしている。それを見た園長が立ちあがった。

「これだ! 芸をしよう。それもすごく珍しい芸がいい」

「珍しいですか……それならゴリラがいいですかね。けれど彼は気難しいですよ」

「芸のことは私に任せろ。これから忙しくなるぞ」

 飛び出していった園長を見ながら飼育員長は呆れた。

 動物に芸を教えることがどれほど大変なことなのか。わかっていないように思えたのだ。


 ところが、飼育員長と職員はゴリラの芸に驚倒することとなった。

 熱い焙じ茶を片手に茶菓子を食べる姿は人間にしか見えない。更に器用にリンゴの皮をナイフで剥いていく。

 確かに珍しい芸だ。食事は動物の本能でもある。これは芸を融合させた行動展示だ。

 飼育員長と職員は園長の考えの深さに感動した。すぐにゴリラ舎の中に入る。

 するとそこには、外にいるはずのゴリラがいた。

「さあ、君たち大変になるぞ。あの動物園には芸をするゴリラがいるって、どんどん宣伝してくれよ」

 そして、入ってきたゴリラの着ぐるみを着た誰か。

 背中にチャックの見えるゴリラでは、すぐに嘘だとばれるのでは。

「ところで、ゴリラの月給っていくらになるのかな」

 得意がって笑う園長に、飼育委員長たちは呆れるしかなかった。

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