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短編集 ~一息~  作者: つるめぐみ
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あなたが落としたのは【挑戦作品:情景描写のみのコメディ】

第三十話ということで、『客席視点の情景描写のみのコメディ』に挑戦させていただきました。

そのため、セリフと心理描写はありません。

更に比喩表現や登場人物の視点から生み出される想像描写もありません。

情景描写だけで、目の前にあるものを想像していただく作品となっております。

読者さまの「なんとなくオチがわかった」は狙いです。

オチがわかっていただけることで、逆に楽しんでいただけると思います。

これから何が起きるのか、何が現れたのか。そして結末は?

文字を紡ぎながら、ご堪能ください。

 一人の男がオノを持ちながら、山道をゆっくりと歩き続けていた。

 しばらく歩いたところで『危険! 泉に近づくな』という看板が姿をみせる。看板を一瞥した男は道を遮るロープを潜ると、さらに奥へと歩を進めた。

 すると、男の進む先――目の前に澄んだ泉が現れた。泉の水面は光を浴びて黄金色に輝いている。男は湖の前に立ててある看板を、目を細くして見た。

 そこには『故意にモノを投げこまないでください。泉の女性が現れます。その時は責任をとってください』という文字が書かれていた。

 看板を見た男は、鼻の下を伸ばしながら笑みを浮かべた。用意していたオノを目を閉じながら投げこむ。

 光り輝く水面に円状の波紋を立てながら、オノは沈んでいく。沈んでいったオノを見つめながら男は手を合わせた。

 すると、気泡が湧きあがるとともに光が放たれて、泉からある者が現れた。男はこれを見て息を呑んだ。目を見開いたまま、腰を抜かしながら後退する。

 彼の目の前には、全身緑色の体躯をした両手足に水かきがある生物がいた。

 生物の頭にある割れた皿には、男が投げこんだ鉄の斧が突き刺さっている。

 陸にあがった緑色の生物は背中の甲羅を掻きながら、水に濡れた足跡を一歩、二歩と創作していく。

 そして、男の眼前で立ちどまると、突き刺さった斧を頭から抜いて彼を見た。男は顔面蒼白になりながら、首を横に振り続ける。

 その男が振り続ける首の動きと合わせるように、緑色の生物も首を横に振り続けると、耳の下まで裂けている口を開けた。

 男は震えた。涙目になりながら這って逃げていく。その後ろ襟を掴んだ生物は、また首を振ると、泉の前に立ててある看板を指差した。

『故意にモノを投げこまないでください。泉の女性が現れます。その時は責任をとってください』

 男が目を見開きながら、緑色の生物に目をやる。緑色の生物は頬を赤らめながら、身をくねらせて近づくと、男の口元に軽く息を吹きかけた。

『その時は責任をとってください』

 男の瞳に看板の文字が映る。同時に、再び泉に波紋が湧きおこると、今度は緑色の生物が四匹現れて一斉に拍手をした。紙吹雪を飛ばしたり、指笛を吹いている。

 男は緑色の生物に接吻を受けながら、顔面蒼白の状態で昏倒した。

 

 金のオノですか? 銀のオノですか?

 人間が創作した物語の結末は泉の女神を気どった、メスカッパには通用しない。

 看板の文字が、犠牲者の心の叫びを語っているのと同様に――。

男が何を期待して行動したのか、その期待に反して泉から何が現れたのか。

最後の一文で大当たり! と喜んでいただけていたら幸いです。


以下、執筆中に単視点の想像描写と判断して変更した文章です。

不気味な→鼻の下を伸ばしながら

注視した→目を細くして

祈っていた→手を合わせていた


おまけに体言どめを連続使用してしまう始末。

この修正に一番苦戦したかも……勉強になりました。

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