多数決
暗く狭い空間で会議がはじまった。会議の中心にいる議長がまず口を開く。
「集まった人数は四人か。あとひとりはどうした? 欠席か?」
「気分が悪いと。四人で決めてくれと伝言されました」
議長は「うむ」と半ば困ったような返事をすると、他の三人に意見を述べた。
「俺は男性側の意見に賛成だ。どんな時代になっても考えを改める気はないぞ」
「俺もだ。男性側で遂行するからこそ、生きがいになる!」
中心にいたものに賛成したのはひとり。他の二人は断固反対した。
「そっちの意見を押し通そうとするなんて横暴よ!」
「そう、それに生きがいなんて言い方はおかしい」
男性側と女性側の意見は二対二の物別れで終わった。
あとひとり居てくれたら、どちらかに決まったはずなのに。
四人は息を吐く。そして、議長は最終決定を告げた。
「仕方ないな。では同数票で話を通そう。結果は十か月と十日後に出る」
会議はそのまま終了し、時は流れ、結果の出る十か月と十日後がきた。
会議室のある狭い空間から光あふれる空間に飛び出した時、その案の内容は明らかになる。
「お母さん。頑張りましたね……男の子ですよ!」
分娩室で看護婦に手渡された我が子を抱いて、母親は近くにいる夫にも見せた。
「可愛いわね。顔は私似かしら?」
「本当だな。きっと美男子に育つぞ」
優しい父母に見守られて赤ん坊は育っていく。体内の会議室で決定した案に従いながら。
二対二の同票。そして赤ん坊の彼は、男とは思えない女性のような高い声で泣いた。




