ぼんやりとまどろみ
「……。」
積み上げられた料理を、ただ黙々と食べ進めているベリア。
とうに限界を迎えた彼女を、どう恨みを晴らしてやろうかというネフィアへの怒りがただただ機械的に手と口を動かす。
「ベリアちゃんは何時見てもいい食べっぷりだねえ!遠慮せずに、たーんとお食べ!」
がちゃんという音と共に更に並べられる料理たち。
長身の筈の彼女の後ろ姿がどこか小さく見えたのは、気のせいだろうか。
「あっ、また散った……。」
一方いち早く食堂を飛び出し広場へと訪れていたネフィアは、暖かな日差しの下、ベンチに腰掛け長閑に過ぎていく時間を1人楽しんでいた。
まだ午前にも関わらず広場には多種多様の屋台や露天が並んでおり、客引きの大きな声が辺りに響き、中央のの噴水周辺では中年の女性達が雑談に花を咲かせていたりと、広場はいつも通りの活気に包まれているようだ。
そんな光景を横目に、ネフィアは目を瞑りベンチへ深くもたれかかると、ぼそりと呟く。
「……ちょっと明るすぎたなあ……。」
そう言うとネフィアはおもむろに立ち上がり、広場から少し離れた住宅地の、影の差す路地へとふらふらと足を進めていく。
「宿に戻ったらベリアに叱られるし……、ああもうめんどうくさいなあ……。」
ふらふらとどこか覚束ない足取りで、ぶつぶつと独り言を呟きながら。
広場から離れるにつれて人の気配が少なくなる路地を、どんどんと進んでいく。
数分程歩いた頃だろうか、広場の喧騒はいつの間にかすっかりと消え、ただ一人歩くネフィアのこつこつという足音だけがこだまする、あまり陽の差さない薄暗い路地へと辿り着いていた。
辺りを一度くるりと見回しふうと一つ大きな溜め息をつくと、ネフィアは日陰にひっそりと置かれた塗装の剥げたベンチへと深く腰掛ける。
「あー……、やっぱりここがいいよね。」
「人の声が聞こえないくらいが……、落ち着く……。」
「……ふぁあ。」
猫のように大きく身体を伸ばして欠伸を一つつき、腰掛けた体勢から横になり目を瞑る。
「こんないい天気の日には、こういう暗い場所でお昼寝するのが一番だよね……。」
いつの間にかどこからか、黒く柔らかい羽毛のクッションのようなものを頭の下に重ね、ネフィアはぽんぽんと頭の乗せ心地を確かめ呟く。
「……お昼寝というか二度寝……?……まあいいや。」
「……いいお天気……。」
風の音と自分の吐息だけが聞こえる薄暗い路地で。
誰に聞かせるでもなく独りごちると、涼しくてどこか心地のよい風に撫でられ、ネフィアはものの数分の内にすやすやと安らかな寝息を立て夢の世界へと落ちていくのだった。
貯めてた分を小出しにしていこうと思ってたら一日に2つ投稿してました、クソァ