おはようとおはよう
赤地のカーテンが全て開かれ、明るい朝日が差し込む暖かな部屋で、白い薄手のワンピース姿の少女はのそりとベッドから身を起こす。
窓からの光を受け美しく輝く少女の赤色の瞳は、まだ夢と現実の狭間を彷徨っているのか薄ぼんやりとしていて焦点が合っていないようで、首元で綺麗に揃えられた黄金色の柔らかな髪が、うつらうつらとした頭の動きに合わせてふわりふわりと揺れていた。
少女は少しの間船を漕ぎ続けていたが、その内に睡魔に抗う事をやめたのか大きなあくびを一つ吐き、再度夢の世界へと旅立とうとベッドに倒れ込む……、既の所で誰かの手によって抱き上げられた。
「おはよう、こんな良い天気の日に二度寝とは、些か勿体無いんじゃないか。」
少女の身体を横抱きの体勢で抱え上げたのは、少し癖のある紫がかった黒髪を腰元で纏め、きちんと整えられたメイド服を身にまとったすらりとした長身の女性。
顔の左半分が前髪で隠れてしまってはいるが、深い碧色の瞳の整った顔立ちをした見目麗しい女性だ。
女性はまだ眼の開ききっていない少女をベッドへ優しく座らせると、ふわりと頭をなでる。
「……おはよ、もう少し撫でて。そうしたら起きるから……。」
ぼんやりと開いた瞳で女性を見つめ、頭を撫でる手を両手で掴む少女。
そんな少女の姿に、女性はくすりと微笑みかける。
「もう少しだけな、……ほら、これでいいか?」
「……うん、ありがと。」
「さて、それじゃあ食事に行こうか、支度をしておいで。」
少女の頭をぽんぽんと撫でベッドを離れる女性に、少女は声をかける。
「……ねえ、ベリア。」
少女の方へと振り向き、ベリアと呼ばれた女性はなんだと首を傾げる。
「何か悲しい事、あった?」
心配そうな表情でベリアを見つめる少女に、ベリアはふっと笑った。
「何もないさ、何にも。」
そう言って荷物の整理を始めるベリアの背中は、少女にはどこか淋しげに映っていた。
「ベリア、準備出来たよー。」
あれから少女の支度を待ち、椅子に腰掛けて本を呼んでいたベリアに、少女から声がかかる。
少女は真白のワンピースに身にまとって、ひらひらとスカートを翻しベリアへと向けウインクを送る。
「よし、それじゃあそろそろ降りようか。」
そう言って本を閉じ立ち上がるベリアに、少女はぷくりと頬を膨らませた。
「……うん?どうかしたか?」
「……別にい、なんでもなーい。」
「……?」
面白くないと言った表情でベッドに腰掛けとんとんと靴を履き直す少女に、ベリアは合点が行ったと言う表情でああと声を漏らす。
「よく似合っているよ、ネフィア。」
「……でしょ!でしょ!」
ベリアの言葉に、ネフィアと呼ばれた少女は花が咲いたような笑顔をベリアへと向け、ベリアもそれに微笑み返し、ベッドから立ち上がろうとするネフィアに手を差し出す。
「それじゃあ改めて、朝食を頂きに行こうか。」
「うん!」
にこにこと笑いながらベッドから立ち上がり扉へと向かうネフィアに、ベリアもまた微笑みながら、二人は部屋を後にした。
前のお話は暗めだったので当分は明るめに。え?今回も暗さが見え隠れしているって?
書き溜めていた分を少しずつ切りのいいところまで、文字数ばらつきありそうですが投稿していこうと思います。
誤字・脱字・ご意見などありましたら養豚場の豚を見るような目でご指摘お願いします。