おめざめ
「……遅いよ○○、ほら、早く。」
ぼんやりと暗い部屋で、誰かを呼ぶ声がする。
どこか聞き覚えのある、少女の明るい声。
少女は呼んでいる誰かに向かって、急げ急げと手を振り急かす。
「お嬢様が早過ぎるんです……、待ってくださいよぉ……。」
○○と呼ばれた少女はよたよたと身をよろめかせながら、今にも泣き出しそうな声で応え、お嬢様と呼んだ少女の側へと駆け寄っていく。
「〇〇は仕方ないなあ……、ほら、手を握ってあげるから、もう少しだけ頑張ろう?」
そう言って二人の少女しっかりと手を繋ぎ、どこかへと駈け出し、すぐに見えなくなった。
見覚えのある、どこか懐かしいあの二人の少女。
恐らく私はあの二人を知っていて、あれは、あの二人は……。
少し開いた赤地のカーテンから朝日の差し込む部屋で、1人の女性が年季の入ったベッドから身を起こした。
「……。」
腰元ほどまである紫がかった黒髪は汗で首元へと貼り着き、顔半分を完全に隠してしまっている前髪は、所々が癖っ毛のように跳ねていた。
ずきずきと痛む頭を抑え、少しの間呆けたように白い手袋をつけた自らの左手を眺めた後、女性はぽつりと呟く。
「……どうして今更あんな夢を。」
誰に言うでもなく呟いた女性の頬を、一筋の雫がすうっと流れていった。