祖父
平凡な乗り手のくせに、ぼくは手に入ったポイントを武器では無く現金化することにしている。
田舎に住む祖父へと送るためだ。
こちらに引っ越してくるようにと書き留めた手紙も添える。
国がぼくの家族のように保護対象とするのは、保護した時点での同世帯者だけらしい。
祖父は日本海を臨める場所に住んでいる為、内陸であるこちらへと避難して欲しい。
しかし、危険だからということは書けない。
手紙には検閲が入る。
人形がどうだとか、戦況がどうだとか。そういった文面が少しでも含まれていれば、即座に突き返された。
もどかしい。
毎度、祖父をこちらに引っ張り出す言い訳を考えるのには苦労する。
その点タナバタは気楽なものだった。
引きこもりニートアフィリエイターであり、家族から勘当されて一人暮らしをしていたそうだ。
ぼくのように手紙を送っている様子も無いところを見ると、相当仲が悪かったらしい。
プレイ中に家族が今どうしているか聞いてみると、「家族。なにそれ美味しい」と冗談めかしてはぐらかされ、もう一歩踏み込むと、無言で切り掛かって来た。
味方機を破壊するともれなくマイナス百ポイントが与えられ、現実世界のタナバタが支給されているナイフ片手に襲って来たので、その手の質問は二度とするまい。
「しつこい男は嫌われる」
分かったからナイフを下ろせ。