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終わり1

 郷原は警務隊へと引き渡された。

 暴行と傷害、器物破損、殺人未遂などの罪で裁かれるだろう。

 おそらくは精神病棟へと隔離されて、二度と社会復帰は望めまい。

 自衛隊病院の病室で、ぼくはアレクシーからその話を聞かされた。

 ぼくは黙って頷く。

 アレクシーも頷いて、話を続けた。

 佐々原は一般的な病院よりは研究室での調整が必要となるとのことで、アレクシーが預かったそうだ。

 公司から引き渡すよう言われたが、大使が米軍に提供している技術の一つを明かすことを条件に佐々原を引き取った。

 佐々原は現在、インダストリの所属となっている。

 だから安心して欲しいと微笑まれた。

 ぼくは黙って頷く。

 アレクシーの笑みが歪む。

 けれど、彼女は返事も返さない相手に延々と語り続けた。

 大使が今は母星に戻っていて、化生の進化についての報告を挙げているそうだ。

 今回の侵攻により、敵は海底を進む力を持っていることが判明した。

 今後は北九州や中国地方だけで無く、日本海側全てを警戒しなければならないだろう。

 ぼくは黙って頷き続けた。

 そうして、ぼくが頷くたびにアレクシーは傷ついたような顔をする。

 分かってはいる。

 自分の態度に問題があることは。

 ただどうしても声が出ない。

 力が、出ない。

 無気力で使えない人間のクズに戻ってしまっている。

 ぼくがここで頑張れてた理由は無くなってしまった。

 ぼくがここで戦う理由は無くしてしまった。

 ぼくのことを無条件で好いてくれる人が。

 ぼくが何をしても見捨てなかった人が。

 いなくなってしまった。

 もう会えないんだ。

 もう。

 アレクシーの顔がくしゃくしゃに歪み、目には涙を湛えていた。

 そして、彼女はぼくの頭を引き寄せ、包み込むように抱きしめる。

「もっと声を出して泣きなよ。あたしがこうやって見えないようにしてあげるからさ」

 何を言ってるんだ。

 泣いているのはお前だろう。

 けれどぼくは気付いた。

 彼女に抱き締められたところが、冷たく滲んでいく。

 ああ。

 泣いてるんだな、ぼくは。

 泣き続けるアレクシーの声を聞きながら、ぼくも声を無くして泣いて、じっと抱かれるままに時間を過ごした。

 延々と。

 えんえんと。

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