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真実2

 プログラムにバグでもあるんじゃないかと思われるくらいに、湧いて出る敵の群れ。

 半年を費やした長い戦い。

 いくらポイントを金銭に変えられるとは言え、多くのユーザーが飽いて途中でプレイを止めてしまったことだろう。

 最後まで参加したけど、あんなのは攻略不可能だ。

 そして、三か月前に始まった壱岐諸島防衛戦。

 さすがに日本人プレイヤーたちの力の入れようは違った。ここを攻略されては本島まで目と鼻の先であり、決戦ミッションが発動されてしまう。

 決戦に負ければ、日本人プレイヤーは、まだ侵略されていない他国に亡命することになり、報酬ポイントが大幅に削減されてしまう。

 三日三晩、トイレにも行かずに戦い続ける猛者も複数いた。

 しかし、これに至っては惨敗だった。

 対馬より面積の少ない壱岐では大軍を運用できず、それに対して、敵は自らの死骸を足場として橋頭堡を次々と確保していくのだ。

 勝てるはずもない。

 壱岐防衛戦の後に撤退ミッションが始まる。

 島の九割は敵の侵食を受け、プレイヤーは壱岐島南部にある壱岐空港を拠点に順次撤退を行っていた。

 生き残ったプレイヤーが本土に辿り着く、あるいは壱岐島で散って逝ったところで、本土決戦ミッションが強制発動された。

 任務を説明するオペレーター画面に切り替わる。そこには普段いる女性士官の姿は無く、時の防衛大臣が立っていた。

 ここで驚かされたのは、その大臣が現実世界にいる防衛大臣そのものだったからだ。

 肖像権大丈夫かと、ちょっとしたサプライズにこぼれた笑みが、大臣の言葉によって固まる。

「この映像は上位成績者にのみ配信しております。単刀直入に申し上げます。これはゲームではありません。現在、我が日本国は正体不明の敵によって侵されています。ユーラシア大陸の三割は既に敵勢力下にあり、予断を許しません。現在この映像をご覧になられている優秀なプレイヤーの皆様には、これより安全な場所へと非難して頂きます。繰り返し申し上げます。この画像は――」

「ランキング六十位『イクト』さんですね」

 聞こえてきた声は肉声だった。BMIを外して、声のした方を見上げる。そこにはスーツを着た男たちが立っており、その後ろで母さんが不安げにこちらを見ていた。

「ご同行願います」

「どちら様ですか」

 我ながら間抜けな問いだったが、スーツの一人がパスケースを開いて見せた。

 名刺サイズのカードには『陸上自衛隊証明書 階級:二尉 氏名:郷原弁慶ごうはらべんけい』と印字されている。

 ぼくは知らぬ間に陸自所属の人形乗りになっていたらしい。

 自分の名前が印字されたカードを手渡されたぼくは、家族と共に引っ越すことになった。


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