慟哭2
左腕に衝撃。
次いで人形からのフィードバック。
鈍い痛みが走る。
損傷を確かめるよりも先に、海から離れるよう反射的に右へと飛び去る。
壁になるものが家しか無い、そう脳が判断したのだろう。
着地した先は避難誘導を受ける住民たちのすぐ近く、足元には転んでしまったのか、蹲った祖父の姿があった。
ぼくの人形を追うように描かれる敵の攻撃は、家々を粉砕し、その破片が逃げ惑う人たちの頭上に降り注ぐ。左腕が動かない。残った右腕で庇う様に欠片を薙ぎ払ったが、救えたのは足元近くにいた祖父だけだった。
歯を食いしばって振り返る。
海岸には水に濡れた羽虫のように体を震わせ這いずる流木の群れが見え、足に鈍い痛みが走る。敵木の射出した水流に両足が切断され、世界が反転した。
目の前に逆さまに映る祖父がいた。
「なにしてんだよ! 早く逃げろ!」
「……育人?」
唖然とした表情を浮かべた祖父は、顔色を青から赤色に変化させ「お前、そぎゃんとこでなにしちょお!」とこちらへ向かって走って来る。
良いから逃げろよ、と喚き散した声が掻き消された。
それは空気を切り裂く音。
それは人形の腕を破壊し。
人形の足を切断した音。
それは人なら簡単に。
止せ。
やめろ。
やめてくれ!
伸ばした手は走り寄る祖父に向かって突き出されたが、その手は何も掴むことは無く。
映像が途切れ、眼前にはCONTINUの文字と、三十秒のカウントが表示されていた。
真っ暗な世界の中で、頭の中は真っ白で。
早く動けと、呪詛のように繰り返した。