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Sextant  作者: はわら
餓狼跋扈
5/6

逃走2

奴隷王4




木の洞の中は心地よかった。

抱きしめられている気がする。


ほぼ1日眠っていたように思う。疲れすぎて逆に眠りが浅い。熱っぽい。


少しでも腹に何か入れたほうがいい。ただでさえ右足が使えないんだ、体力まで落ちたらもう挽回できない。


さぁ、しんどいが、外に出よう。



あたりは薄暗くなっている。音を頼りに虫をいくつも捕まえて口に入れる。

苦い。聞いた話だとおいしいって話だけどね。気のせいだ。



追っては来ているだろうか。貴族の命を狙った奴隷だ。捕まえようと追ってくるだろう。


時間を使いすぎた。

余裕はないかもしれない。



右足を引きずりながら、さらに森を進む。

リッツや他の奴隷の話では、森の向こう側には、別の国があるそうだ。


そこでひとまず身を隠す。

情報を集めて、落ち着ける場所を探すんだ。


生き延びてやる。



ぐるると鳴った音を思わず腹の虫と勘違いしそうになったが、それは後方から聞こえてきた。

それに気づいた時には、もう奴らの縄張りに入り込んでしまっていたのだと気が付いた。



ゆっくりと振り向く。

そこには真っ白な狼がいた。



蒼い瞳がじっと俺を見つめている。


俺は不思議と落ち着いていた。なんで襲い掛かってこないのか、振り向く前にとびかかってこなかったのか。


疑問が頭をよぎった。そして、潔く座った。


「くうのか?」


久しぶりに声を出した気がした。しわがれた声が出る。白狼はふ、と首をそらす。

そしてまるでついてこいとでも言うようにしっぽを振った。


人は信用できない。

だが、狼はどうか。



狼を信用するも何も、彼らは欺かない。本能にしたがう。そう思う。

では、この白狼はどうか。


俺はつっかえながら進んだ。


どこへ行くんだ?何をすんだ?餌を巣に持ち帰る手間を省いているだけなのか?


日が暮れると白狼は一声鳴いてどこかへ行った。

俺は途方に暮れて座り込んだ。すると目の前にウサギの死骸が現れた。


「食えってか」


はは、と笑った。なるほど。子分としてか。俺は子分か。そうか。

ありがたく頂戴した。

人に使えるより白狼の子分のほうがまだましだ。


生肉は寄生虫入っているかもしれない、腹は減っているが、しんどい。ウサギをおいた。

白狼は食わないと思ったのか、平らげてしまった。


適当な枝と葉っぱをあつめて即席の寝床を作る。

白狼はどういうわけか、何もしてこない。どうせ今の身体能力では何をしても食われる。

だから、潔く寝ることにした。




_________________


_______________________



___






明け方べろべろと顔面を変な感触が襲った。

白狼がべろべろしていた。


幼馴染がもうおっそーいって朝おこすシチュエーションじゃないのか。じゃないか。

あほなことを考えられるくらいには余裕できたってことだ。


良かった。



白狼は起きたらまた同じようについてこい、という仕草をした。昨日と同じようにどこへ向かうかわからない行進が始まった。



日暮れになると、また白狼はどこかへ行った。

今度は赤い木の実のようなものだった。枝付き。そしてまたウサギ肉。


俺はウサギ肉を白狼におしやり、木の実を食べた。すっぱかった。


白狼はようやく肉食わないんだなと気づいたようで、そこから1週間ほどはこのすっぱい木の実だった。

贅沢は言えないが、正直すっぱいのばっかりはきつい。


でもしかたない。


一週間も森の中をさまよって、ようやく、白狼は目的地についたようだった。


森の外だった。それも隣国。白狼は鼻先で俺を押しやった。


「おおーーーーーーーーーーーーん」



おおーーーーーーーーーーーーーん



遠くで別の狼の声が聞こえたような気がする。

「ありがとう助かった」


俺は足を引きずりながら遠くの街道らしき場所へと歩き出した。





俺は、そうしてうかつだった自分を再度思い出すのだった。

奴隷商人に捕まった。



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