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キミノタメナラ

作者: 神葉空気

ネタです。

「娘さんを僕にください!!」

 公園に真剣な声が響き渡る。

 腰をほとんど直角になるまで下げ頼み込む男。

「ふざけるなっ!貴様なんぞに娘をやれるか!!」

 だがそんな真摯な男に父親は取りつく島もない。

「愛しているんです。一目見た時から彼女に心を奪われ、一緒に接しているうちにこの思いは収まるどころか高まる一方なのです!どうか、どうか娘さんを僕に」

 男は土下座した。

 ここで目の前の男性にどれだけ情けない姿を見せようとも、叶えたい願いがあるのだ。伝えたい思いが、あるのだ。

 すでに日は落ちかけ、子供たちのいなくなった公園はそれでも普段ならまだ人気もあった。だが、男たちのただならぬ雰囲気に近寄るものはなく、地べたに額をこすりつけ懇願する男と、それを汚物でも見るように見下ろす男の姿があるのみであった。

「絶対に幸せにします。嫌な思いなんて絶対にさせません。僕の全身全霊を持って彼女に尽くします。僕に足りない部分があるのなら言ってください。全部直します。金銭的にだって不自由はさせないし、休日には必ず家族との団欒の時間も作ります。お願いします!」

 それでもめげる訳にはいかないのだ。自身の全てを賭して男はここにいた。

「貴様の何が悪いかって……そんなものッ」

 再び怒鳴ろうとした男の視界に愛しい娘が駆け寄ってくる姿が見えた。

 その姿は目の前で五体投地している男のことを心配しているようにも見える。

「パパ何してるの!」

「愛美これは……」

 言いよどむ父親に詰め寄る娘。

「愛美さん、お父さんは悪くありません。至らない僕が悪いのです」

「先生が悪いの?」

 愛美の何の疑いも持っていない眼差しに酷い罪悪感を覚える。それでもここで逃げるわけにはいかない。

「お父さん!僕の悪いところを言ってください!!絶対に直して見せます。だから愛美さんを……」

「俺を父と呼ぶんじゃねぇぇぇっ」

 視界が一瞬白く染まる。これが火花が散るということのなのだろう。遅れて脳に伝わる激痛に自分が殴られたのだということに気が付く。

「貴様の悪いところ!?んなの決まってるだろうがッ!この腐れロリコン野郎が!!」




 男が愛した娘はまだ五歳の保育園児だった。


 その日一人の保育士が警察に捕まった。


ロリコンダメ、絶対。

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