救出 -前編-
朝から、ここ捜査1課の部屋は重い空気に包まれていた。
ユオが拉致された。捜査を止めないとユオの命は無いと電話が入った。
ラッキーデカ長が険しい面もちでみんなに言った。
「とにかくユオの命が第一だ。監禁されて居そうな場所を片っ端から探すんだ!くれぐれも慎重にな」
「了解!」
その頃ユオは、都内のあるマンションの一室に監禁されていた。
手足をロープで縛られ、口にはガムテープを貼られて床に転がされていた。
隣の部屋から声が聞こえる。
「今晩、゛ジェニー゛で香港に帰るから、あとは任した。あの新米刑事は東京湾に沈めとけ」
「へい」
ユオは聞き耳をたてながら思った。
「ジェニーってなんだろう?」
部屋を出ていく音。
ユオは焦った。ここの場所をみんなに知らせないと!
体をゴロゴロ転がして窓際まで行く。
ベランダにピンクのパジャマが干してあるのが見える。
「左の内ポケットに警察手帳がまだ入ってるな。携帯電話は取られているけど」
今度は壁まで転がっていき、足で壁をドンドン蹴っ飛ばした。
部下のタカノブが部屋に入って来る。
「おい!うるせーぞ!」
「ん~!ん~!」
「なんなんだ!」
ユオの口のガムテープを引っ剥がす。
「いてー!」
「なんだ!」
「トイレ行きたい」
「まったく!しょうがねーな!」
と言って手のロープだけを解く。
ピョンピョン跳ねてトイレに行って
「大の方だからね」
「早くしろよ」
ドアを閉めて便座に座ると、警察手帳を出して差してある鉛筆で手早く書き込む。
そして警察手帳をトイレの窓から外に投げる。
「誰か拾ってくれ!」
ユオは心の中で叫んだ。
その警察手帳が、下を歩いてるサラリーマンのローサンの頭の上に落ちた。
「アイテッ。なんだこりゃ。手帳が降って来た。信じらんない。ウケるんだけど。あれ?警察手帳だ。よ~し、今日から俺はジーパン刑事だ~。なんじゃこりゃ~!ナンチッて!」
捜査1課の部屋。ラッキーデカ長が、ボッサンともりもりを呼び戻した。
「一般市民の人が、ユオの警察手帳を拾ったと届け出てくれた。拾った場所はここだ」
広げた地図で拾った場所を指差す。
「ここに、マンション“ブラックエンペラー”がある。多分、ユオはこのマンションに監禁されていると思われる。しかしどの部屋かは特定出来ない」
ボッサンがユオの警察手帳をパラパラめくる。
「ユオからのメッセージだ」
『ベランダにピンクのパジャマ。みはりは、ひとり。げんかんはいってつきあたりのへや』
ボッサンは呟いた。
「漢字が一個も無いな」
「よし!このマンションに急行してくれ!」
「了解!」
ボッサンとモリモリは部屋を出て行った‥