点と線
「どこの何奴だ!まったく!おれのセドリック、蜂の巣にしやがったのは!」
ラッキーデカ長は仁王立ちしてカンカンに怒っている。
あの骨董品のセドリック。ラッキーデカ長がチューニングして仕上げた名機だったのである。
「まあ、2人に怪我が無かったのは不幸中の幸いだったけどな」
「そうっすよ。危なく殺される所だったんだから~」
ユオは腰を落としてアサルトライフルを撃つ真似をしながら言った。
「あれは威嚇だったな」
ボッサンが落ち着いた声で言った。
「え?」
「殺す気だったら、車横付けして銃ぶっ放せばいい話で、わざわざ車から降りて来て銃見せびらかしてんだから
どうぞ逃げて下さいって言ってるようなもんだろ?」
「なるほど」
ユオが腕組みしながら言う。
「じゃあ、ボッサンたちに当たらないように撃ったって事スか?」
モリモリがボッサンに聞いた。
「そう言う事になるな。相手はその道のプロって事だ」
「警告って事?」
ユオがボッサンに聞く。
「奴らが嫌がる何かをウチらがやってるって事か」
「何スかねぇ?」
「ユオ、最近何の捜査した?」
「え~っと、窃盗、万引き、自殺… そう言えば…最近ウチの近所で首吊り死体が見つかって、
その仏サンの会社の同僚って人に話を聞いたらそいつはある調査をしていて、証拠を掴んだって言ってたらしいんだ。
その翌日に自殺するなんて有り得ない。殺されてたんだって。それを警察に言っても信じてもらえず、状況証拠で自殺にされたらしいよ」
「そいつは何を調査してたんだろう」
ボッサンは腕組みをして考える。
「なんでも5年前の保険金詐欺の証拠を掴んだって言ってたらしいよ。その人保険会社の人なんだ」
そこへ鑑識班のボス、番場が入ってくる。
「鑑識結果出たぞ~。セドリックに刺さってた弾、5.56mmのNATO弾。
ユオの証言通り、アメリカ軍採用のM4カービン銃から発射された模様。この弾を使った犯罪が過去に一回だけあった。」
「それは?」
ラッキーデカ長は立ち上がって聞いた。
「5年前の銀座宝石店強盗事件。この時ぶっ放した弾と今回の弾のライフルマークが一致した」
「じゃあ、あの時の犯人が俺らを襲った?」
「それを調べるのがあんたらの仕事。俺の仕事はここまで。じゃあな」
言うが早いか、後ろ姿で軽く手を上げて部屋を出て行く番場。
「確かあの事件は、白昼堂々と銀座の宝石店に、ライフルで武装した4人組が押し入って、店内で銃を乱射。
宝石を根こそぎ持っていったっけ。その時支払われた保険金が5億だっけか」
「ちょっと待てよモリモリ!、資料室行って5年前の宝石店強盗事件の資料持ってこい!」
「イエッサー。」
「ユオ、近所で殺されてたって人の勤めてた保険会社の名前はなんだ?」
「え~っとちょっと待って」
手帳をパラパラめくるユオ。
「あ、あった。オリエント保険会社」
しばらくしてモリモリが帰って来て資料をボッサンに渡した。
ボッサンはファイルをめくって言った。
「やっぱりだ。5年前に襲われた宝石店に保険金を払った会社も、オリエント保険会社だ。繋がったな」
ボッサンはタバコに火をつけて、ニヤリとした。