対多数戦闘
何でこうなった?
俺がソロチャレンジしたから味方がいないのは当然だ。相手となる魔術戦闘人形が三体なのも、まぁ、仕方ない。
だけどね、実習の順番が一番最後なのはどうしてなのさ!?
「ソロチャレンジなのに三体とはついてないな~、宇乃原。だが実習はキチンとこなしてもらうぞ。」
教師のお言葉はどこか楽しげだ。
悔やんでも仕方がない。集中しよう。人形達は三体、十メートルほど離れている。俺の正面に中央の一体。その左右少し後方に二体待機。構えてこそいないが既に戦闘態勢を整えているようだ。
例え俺自身の能力をコピーしたものでも、たかが人形ごときにおくれをとる訳にはいかない。
「準備はいいか?」
戦闘前の最終確認に頷く。
「では……………始め!!」
教師の合図と共に中央の一体が此方の懐近くにまで一瞬のうちに踏み込んで来た。その勢いのままに右拳で突いてくる。
左の裏拳でその軌道を外側へと弾く。
パペットは弾かれた腕を素早く引き戻し、反対の拳を突き出してくる。
それを左の掌底打で攻撃の軌道を逸らす。パペットの正面が瞬間的に無防備となった反撃チャンス! と思ったが反撃せず、素早くバックステップしてその場から少し後退。
直後、直前にいた場所に真上からもう一体のパペットが蹴りの姿勢で急降下してくる。
残りの一体のパペットは動いてはいない。しかし、此方の方を常に観察しているようにも見える。
着地したパペットからもう少し距離をとるためにさらにバックステップで下がった。
それに合わせるように着地したまま屈みこみその反動を利用し、前方へ突進するかたちで追撃してくるパペットその二。前傾姿勢のまま右手を地面に着くと、そこを軸に盛大に回転足払い。
軽く跳んで回避。
そこにいつの間にか背後に回り込み同じく跳躍し追撃してくるパペットその一。
そろそろ此方からも攻めていこうか?と思ったが次の瞬間にはまだしばらくは防戦一方に徹することになった。
パペットその三の攻撃。それは魔術による狙撃じみた援護攻撃だった。
使用魔術は、魔力攻弾。魔力を練り上げ、攻撃用の弾丸として打ち出す、ごく簡単かつ魔力消費量の少ない初歩中の初歩の攻撃系魔術だ。それだけに威力は他の攻撃系魔術より劣るのだが、簡単であるが故に連射して使用する事も可能である。俺の能力をコピーしているので当然のように連射してきた。
おかげで、今のところ反撃のチャンスは全部潰されてしまっている。回避して無傷でやり過ごすだけになってしまっている。
「そろそろ反撃したいんだが、どうするか?」
呟きながら、近接戦闘を仕掛けてくるパペット二体の攻撃を逸らしたり弾いたりと防戦中。そんな所に魔力攻弾による狙撃も追加というかなり厳しい状況。このまま実力を隠したままではいずれ負けてしまう。
だがどういう理由であれ、人形ごときに負ける事だけは避けたい。
という結論の為、本気を出すとするか!
回避行動を中止し体内の闘気を練り上げ、直撃してくるパペット二体の攻撃を左右それぞれの裏拳に闘気を纏わせてから受け止める。
直ぐに狙撃がこないので二体を力任せに弾き飛ばした。
距離がかるくではあるが開いたので、その極短い間に構えをとる。
左半身を右半身の影に隠れるようにずらす。右腕は軽く伸ばし掌は正面にいるパペットに向ける。左腕は少し曲げて手は腹部手前にくる掌も同じようにパペットに向ける。
その直後、パペット達は一斉に飛び退き、俺を中央にそれぞれが均等に距離をおいた。上から見るとパペット達の位置は正三角形になっている。
少しだけ様子をうかがっていたが、すぐに三体とも行動をおこしてきた。
三体同時に俺に向かって突っ込んで来たのだ。