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龍闘神戦記  作者: 無電冥路
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日常風景の中の影〈中編〉

 私の攻撃はサンドマン達を全滅させた筈だった。サンドマン達を作り出すソイツは、その行動を止めず更に作り出す速度を上げる。

「アイツ、本当にスパイボールなのかしら?」

 見た目こそ下級クラスの偵察型魔族と同じだというのにこのままだと倒しきれる数より多くなってしまい、確実にこちらが不利だ。

 内心、焦りはじめている時に、一部のサンドマン達が実習中だった生徒達の方へ向きを変え、襲いかかろうとした。

 だが、これは生徒達からの攻撃魔法によってあっさりと迎撃され、撃沈していく。

 あっちは問題ないみたいね。

 視線をスパイボールらしきものにもどす。

「え?」

 その時、あちらは既に次の段階に移っていた。召喚者は現存しているサンドマン達に更に黒いエネルギーを流し込む。するとサンドマン達は黒いオーラに包まれて、一カ所に集まりだした。

「何をするつもりかは分からない。けど、見逃す気はないよ!!」

 最短距離にいたサンドマンに切りかかる。が、黒いオーラがサンドマンを守り斬撃を弾き返す。

「な?!」

 攻撃された事などまるでなかったかのようにサンドマン達の動きは止まらない。

 そしてサンドマン達は先程まで自分達と同じだった砂を吸収しつつ、一つへと姿を変えていく。

 数秒後、それは一つの巨体としてそこに現れた。その高さは校舎と並ぶ程で、腕と足の太さは大神殿の柱のようで、直立状態の私より若干だが幅広い。

砂巨人サンドゴーレム!」

 元は同じ位の大きさだったモンスター数十体が、一体になるとこれだけの巨体になるなんてね。ただ更に緩慢になった動作と首から上がないという全体像は、どこか鈍そうな印象を受ける。これなら、簡単にたおせるかも……。

 と、思ったのは次の瞬間に甘すぎたと後悔した。

「うわっ!?」

 砂巨人の攻撃は腕を振り上げ勢いよく叩き付けるだけの単純なものだった。だが、そのスピードは驚く程速かった。

 しかも、こちらを追い詰めるように次々と振り下ろされている。

 回避こそ間に合っているけど、あんなのが直撃したらたまったもんじゃない。なんとかして反撃したいけど、まだあちらの攻撃は終わりそうにない。

 だがすぐに状況は変化した。

 実習中の生徒達の攻撃魔法が砂巨人の背後に直撃し、それによって攻撃は止まり、攻撃対象を切り換えたらしく、ゆっくりとこちらに背を向ける。

 チャンスだ!!もう一度あの技でとどめを刺す。

「必殺!!結晶剣シャイニング閃光斬スラッシュ!!!」

 鋭く伸びた光の刃は、砂巨人の身体を上下に両断した。

 ゆっくりと形を崩していく砂巨人。

 必殺の一撃の手応えはあった。間違いなく、奴を切り倒した。これで終わりの筈だ。

「※☆#&●◇○★!!!!!」

 だがスパイボールらしきものは耳障りな叫び声を上げ、崩れていく砂巨人の中へと溶け込んでいった。

 途端に崩れていく砂が止まり、その身体は斬られる前の状態へと戻っていく。同時に砂で出来ていた身体の質が生物のそれと酷似したものへと変化していく。

 そうして現れたのは、輪郭こそ砂巨人とほぼ同じだが、胸部の中央にギョロリと睨み付けてくる眼が一つ。その下の腹部の中央あたりに牙剥き出しの大きな口が開いている。

「まさか、魔巨人エビルゴーレム!?」

 ただでさえ、魔族の相手をするのは魔獣や魔物といったその他のモンスター達より大変なのに、耐久力に優れる巨人系ともなると厄介さ加減は思い切り跳ね上がる。

 だからと言ってこの状況で何もしないのは駄目だ。厄介だからって、逃げるわけにはいかない。

 ならば先手必勝!

「ヤァァァァァァァァァ!!!」

 素早く懐に飛び込んで連続で斬撃を繰り出す。が、そのほとんどは魔巨人の肉体を傷つけられず、いくつかできた傷も浅すぎるせいか、瞬く間に修復されてしまう。

「そんな?!」

 ただ普通の攻撃では通用しないと言うの?!

「ゴオォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」

 雄叫びを上げると右腕を無造作に凪ぎ払う。

 その腕から黒く禍々しいエネルギーが鞭の様にしなりつつ襲いかかってくる。

 速い!回避が間に合わない?!

白光閃盾シャインシールド!!!」

 叫ぶように咄嗟に盾を正面に構えると、盾の結晶体が輝き、身体全体を隠せるほどの光の盾が形成される。

 直後に黒いエネルギーが盾に直撃する。

 踏ん張ろうとしたが、無理だった。 

 勢いよく飛ばされ、校舎に叩きつけられる。

「かはっ!」

 マズい。ダメージが大き過ぎて、直ぐには動けない。立ち上がろうとしても、膝に力が入らない。

 魔巨人はゆっくりとこっちに向かってくる。

 このままじゃやられる。

 まだ動けない自分と悠然と此方へと歩を進める敵という状況は私の中の焦りを増幅させる。

 そんな魔巨人の背後に攻撃魔法が直撃し、巨体がバランスを崩し、歩みを止める。

 実習中の生徒達が魔巨人の注意を引き付けるために放ったようだ。

 その目論見は成功したけど、やってはいけない行為だ。

 手練れの戦士や魔術師がチームを組んで初めて戦う事が出来る相手なのだ。魔術師見習い程度の学生が束になってもかなうものではない。

 魔巨人はゆっくりな速度はそのままに生徒達の方へと身体の向きをかえる。

「グオオォォォォォァァァァァァァァァ!!!!!」

 咆哮の直後に黒いエネルギー状となった両腕を地面へと叩き付ける。轟音と共に大地震のごとき揺れに襲われる。

『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 バランスを崩され、学生達は地面に転げ回される。

 でも、気のせいかな?今、少しだけ彼等の身体が宙に浮いたように見えたのだけど。

 次の瞬間、影から巨大な錐が突き上げてきた。が、それが生徒達を直撃する事にはならなかった。

 それは見えない壁に阻まれたように潰れていた。



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