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エピローグ

ここで本当に終わりです

試験三日前、授業は完全に補習となった。よって学校に行くのは成績が芳しくなかったため指名された者と希望者のみとなる。俺にとっては休みが増えたという認識されてるけどな。

小春も休み、しかし他の連中は悉く授業に出席している。

これから一日中遊び通す予定なんだがその前に他の連中の俺が復活した時のリアクションとわざわざ登校している理由を先に話そうか。

まずみんなの輪に戻った時、畠中健太は

「よかったな」

と一言だけ祝福してすぐにいつも通りの馬鹿話を展開した。あとから聞いた話によると俺のために裏で色々動いていてくれたらしいが、こいつが何も言わないなら俺が追求することもない。ただ一言ありがとうと返しただけで俺たちは親友へと立ち返った。

今は補習の真っ最中、基本的に勉学には頭が回らないやつだからな。

まあせいぜい夏休みの補習には引っ掛からないよう、頑張ってほしいもんだ。


福生も同じく

「よかったね」

の一言だけだった。俺の対応も畠中の時と同様である。福生は神経細いからずいぶん精神を削ってしまったようで申し訳ない。これから挽回しよう。

こいつは成績優秀だが授業があるならさぼれない質らしい。

水口美々は俺が声をかけると一瞬硬直して

「光ちゃーん、寂しかったよー」

と涙ながらに叫びながら抱きついてきた。これは予想できた自体なのだが俺は避けなかった。むしろ両腕を広げて受けとめてやった。

「悪かったな、またよろしくな」

腕の中の美々は潤んだ瞳でにぱっ、と笑い

「当たり前だよ!もうすぐ夏休みだしね、容赦しないんだから♪」

と言った。あんまり無邪気なんでからかいたくなって耳元で囁いた

「その前に試験だけどな」

「うっ……」

全体としては悪くない成績だが数学をはじめとした苦手科目では赤点をとるかとらないかの瀬戸際にいる彼女にとって試験は忘れていたかったことだったはずだ。まあ人生楽ありゃ苦もあるさ。

「こらこら、せっかく祝福してあげてるのにいじめないの」

音もなく表れた水口ももは諭すようなことを言いながら口元には笑みが浮かんでいた。

「お姉ちゃーん」

「よしよし、一緒に勉強しましょうね」

芝居がかった台詞で胸に飛び込んでいった美々をなだめ、俺をもう一度吟味するように見た。

「平気みたいね」

「はい、バッチリです」

「私も心配してたんだからね。この借りは夏休みにたっぷり返してもらうからね」

内心はお姉さんの笑顔の裏に潜むデビルの姿に恐れおののいていたのだがなんとか顔に出さずに首肯することができた。

二人とも心配してくれたことは疑いようもないのでどんなことでも引き受けよう……死なない程度に。

今日は美々が引っ掛かった数学の補習にももが付き合っている。仲いい姉妹だなと思う。

姫野はというと

「おっ、元気になったみたいだね。ぼくは信じてたよ」

「そりゃどうも。おかげさまでもう大丈夫だ」

「うん、見ればわかるよ。もう付き合い長いからね」

「それもそうか」

「だからこの間までの光くんを見てるのが本当につらかったんだよ?ぼくの胸が張り裂けたらどうするの?」

泣きそうになりながらも冗談っぽく言う健気さに逆に胸が張り裂けそうになった。

謝罪と慰めの言葉をかけようとすると

「でもいいの。戻ってきてくれたならそれでいいの」

気丈に言って微笑んだ。

何も言わずに俺は姫野の頭を撫でた。くすぐったそうに目を細める姫野に心の中でありがとうと言っておいた。口に出さなかったのはこの和やかな空気を壊したくなかった、とでも言っておこうか。


宇井先輩に

「吹っ切れたみたいだな」

と声を掛けられて

「おかげさまで」

なんてお礼を言っている最中、背中に柔らかな重みがのしかかってきた。

「おう、冬香もうれしいか」

振り返ると至近距離に成瀬先輩の顔があった。あわてて背中から降りてくれるようお願いした。

渋りながらも背中から降りて……今度は真正面から抱き締められた。天使のハグよりさらにきつく、さらに長く。

「いやもう、抑えられないほどうれしいって感じだな」

「光希、よかった……本当に」

恥ずかしいという気持ちも成瀬先輩の甘い声にかき消され俺はただ黙ってされるがままになっていた。

数分後、俺は抱き締められたまま口を開いた。

「心配かけてすいません」

最初に謝っておいた。特に深く考えたわけじゃない、なんとなく、だ。

「ダメ、許さない」

「マジですか?」

そりゃ困る。つーかどうすりゃいいんだかさっぱりわからん。

「……もうしない?」

「はい、先輩に誓って」

強い口調で言った。先輩はにっこりと笑って

「……特別に……許してあげる」

と言ってくれた。なんかすげえうれしかった。俺も単純だ。

で、先輩達は指名されて授業に出ている。二人とも成績はいい方なのに授業態度が悪い(ほとんど寝ていたらしい)ため呼び出されたそうだ。ご愁傷さま、寝る時は俺みたいに気配を消してばれないようにするべきだ。

そして検査の結果何も異常がなく退院した天宮は授業を休んでいた分の遅れを取り戻すのに必死である。俺のせいなんだが俺が授業に付き合ったところで何もかわらないだろう。

よって俺と小春は二人でどこかをぶらつこうとしていた。試験一週間前に入ってからは遊びまくっているので近辺に飽きつつあるが今日は予定も立てていないので適当に練り歩く。

だがその前に言っとくとしよう。この間気付いた気持ちを。

リビングで朝食をとったあと

「なあ、小春」

「はい、なんですか?」

「この間気付いたんだけどさ、俺お前のこと、

好きだ」

「はい、前にも聞きましたけど?」

あんまり動じてないな。まあ俺もさらりと言ってるが。

「この間は友人としてなのか家族としてなのか、それとも恋愛感情なのかわからないって言ったよな。それがわかったんだよ」

「私はあの時恋愛感情で言ったつもりでしたが、相手にしてくれませんでしたよ?」

小春は悪戯っぽく笑った。なかなか痛いところをつくな。

「あん時は頭に血が上ってたからな。悪かったよ。……でももうわかっただろ?だから俺と付き合っ、んっ」

いきなり俺の唇がふさがれた、小春の唇を以て。

「ダメです」

「えっ?」

意外すぎる答え。大体今キスしてきたのにどうして?

「今のは感謝です。私の気持ちをくんでくれてうれしかったから。でも今はダメです」

たしなめるように言う。黙って耳を傾ける。

「私は中里さんが好きです。愛しています。ただ、中里さんは私を愛していますか?」

「たぶん」

自信を持って答えられないのはつい先日気付いたばかりだからだ。

「中里さんは今私に好意を持ってくれてるんだと思います。それはすっごくうれしいんですけど。

でも中里さんが好意を持ってるのは私だけじゃないと思います。美々さん、ももさん、姫野さんに成瀬先輩、真琴ちゃんにもきっと。工藤さんと生徒会長も少し怪しいです。この人達は逆に中里さんに好意を持ってると思います。

その中から私が一歩近づけたのかもしれません。でもすぐに決めちゃダメです。ゆっくり考えてください」

長いことしゃべったな。確かにそうか。別に期限があるわけでもないしな。ただこれだけは言わせてもらう。

「わかった。だけど俺が今一番想ってるのはお前だからな」

「………………えへへ、うれしいです。じゃあ行きましょうか」

俺たちは部屋を飛び出した。

これから先、試験二日前、試験一日前、試験中、夏休み、さらにもっと先、俺はどうしているんだろうか。

このまま小春を好きで居続けるのか、他の誰かを好きになるのか、それはわからない。

残念ながら俺たちの物語はここまでしか話せない。でも、俺は立ち止まらない。小春が教えてくれたから。

自分がやりたいようにやる。

俺のまわりにはいいやつがたくさんいる。道に迷ったらきっと助けてくれる。そいつらを信じること。

そして自分の仲間を信頼している自分を信じることだ。そうやって生きていけばきっと幸福だ。

昔から言うだろ?

信じるものは救われる!ってな



最後までこの信じるものは救われる!にお付き合い頂き恐悦至極に存じます。初めて完結に至った思い出の作品です。また別の物語を紡ぐようなことがあればその時はまた呼んで頂けると幸いです。それではまたいずれ

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