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コトダマアソビ  作者: 一初ゆずこ
第5章 花一匁
66/200

花一匁 6

 スローモーションで傾ぐ身体。

 ゆっくりと揺れる短い髪。

 赤味の差した白い頬。

 左頬には、泣き黒子。

 その印を見た時から、坂上拓海は確信していた。

 どうか人違いであって欲しい。他人の空似に懸けていた。

 だが、やはり彼女だった。彼女こそがそうだった。

 自分は、急ぐべきだった。迷う暇はなかったのだ。それが分かる立場にいながら、拓海は何もしなかった。

 激しい後悔と自責の念に胸を熱く焼かれながら、拓海は廊下を駆け出した。

 倒れた少女の元へ、駆け寄って、しゃがみ屈みこんで、助け起こそうと、手を伸ばして――――。



 *



「……あ」

 声を上げたが、通話は既に切られていた。

「へ? 三浦? ……あー」

 未練がましく友人の名を呼んでみても、耳に当てた携帯からは、ツー、ツーと音声が虚しく聞こえるのみだ。諦めて携帯を学ランのポケットへ仕舞いながら、拓海は悄然と背後の壁にもたれた。

 柊吾に突然、通話を切られた。

 急だったので呆けたが、理由は何となく分かっていた。

 七瀬と合流できたのだろう。だから柊吾は拓海にも、グラウンドへ来いと言ったのだ。

 それは、分かっているのだが……指示に従ってそちらへ行くには、些か心が折れていた。

「……はあ」

 溜息を吐き、拓海は雑踏へと首を巡らす。

 受験が終わったばかりの高校は、まだ賑わいを極めていた。昇降口付近は天井や床に声が反響する所為か、声が一際大きく聞こえる。靴音も人の声も、微かなエコーを帯びていた。

 もう四時近いので、校舎はやや薄暗い。蛍光灯の付いた廊下の突き当たりは明るかったが、昇降口の光源は窓からの外光だけだった。

 初めて見る顔ぶれに、入り慣れない校舎の匂い。

 東袴塚中等部の生徒は高等部の図書館を利用できるので、拓海は全く初めての来校ではない。それでもここは、拓海にとって未知の領域だった。

 満ちる歓声も、薄く香る図書館にも似た校舎の匂いも、全てが身体に馴染まない。夢の中を歩いているような覚束なさが、心に常に付き纏う。

 だがどんなに非現実的であれ、これは確かな現実だ。二週間後には受験の結果発表があり、その結果次第で拓海達は、ここへ通うようになる。

 ここが日常の拠点に変わり、皆で過ごせるようになる。

 拓海はそれを、楽しみにしていたはずだった。

 それなのに、今は。

 少し、寂しいと思っている。

「……」

 情けないと、自分でも思う。気にし過ぎだと自覚があった。

 だがそんな自覚を抜きにしても、拓海を置いて行った七瀬が今、柊吾と一緒にいるというのは……ほんの少し、傷ついた。

 心が明らかに弱っていた。七瀬は絶対に何とも思っていないのだ。柊吾もまた同様だろう。二人は撫子を交えて度々勉強に励んでいたので、一緒にいるのに慣れている。こんな事は今更気にするものではなかった。

 拓海の内心を二人が知れば、どんな反応をされるだろう。

 七瀬は怒るかもしれない。平手打ちが飛んできそうだ。とばっちりで柊吾まで一緒に殴られそうな気配もある。そこまで想像すると多少気楽になったが、結局二人を疑った自己嫌悪から、拓海は肩を落として項垂れた。

 元々、女子生徒は怖くて苦手だった。とりわけ七瀬のような活発な子は存在自体が恐ろしく、関わり合いにならないようにと、何かと逃げ腰になっていた。

 そのはずだった相手に対し、今はこうも執着している。

 たった一年で、人はここまで変わるのだ。それが自分でも不思議だったが、薄汚れた感情をも同時に掘り当ててしまった気がして、拓海はやっぱり落ち込んだ。

 申し訳なかった。二人に対して。

 特に柊吾には、別の意味でも顔向けできない。ここ半年、嫌なやり取りばかりが続いているのだ。先程自分が放った棘のある言葉を振り返ると、拓海は頭を抱えて蹲りたくなってしまった。

 本当は、言いたくなかった。

 だが、言おうと決めたのは自分だった。後で何を思おうと、何の言い訳にもなりはしない。そんな葛藤を含めて柊吾に全て見抜かれているのだから、つくづく格好悪い悪役だった。向いていないのだから仕方がないのだろうが、結局それさえも言い訳だ。自己嫌悪がループして、どんどん気が滅入ってしまう。

 思考を打ち切って、昇降口を見渡した。

 生徒の数はまだかなり多かったが、生徒達は皆、帰路を急いでいる風に見えた。ここで立ち止まると通行の邪魔になるからだろう。人の流れは速かった。

 きっとグラウンドは、ここよりずっと混雑している。

 他校の中学生が溢れる中で、拓海は柊吾達を見つけられるだろうか。

 拓海の足は、動かなかった。依然として根が生えたように、廊下に立ち尽くしたままだった。

 ……やっぱりまだ、引き摺っている。

 雑踏に紛れている方が、気楽でいい。

 今だけはまだそうやって、孤独に浸っていたかった。

 だが、そんな風に考えて初めて……一人で過ごすこの状況が、かなり久しぶりだと気づいてしまった。

 学校で過ごす休み時間は、仲のいい男子生徒とつるんでいる。だがそれを除けば、他は七瀬と一緒だった。

 一人で過ごす時間よりも、七瀬といる方が長い。

 実際に時間を計ればそんな事はないのだろうが、そんな風に感じるほどに、七瀬が拓海の日常に占める割合は大きいのだ。

「……」

 七瀬。

 もう、氷花に狙われていない。安全と見ていいかもしれない。

 だが随分と恨みを買った。いつ逆襲されてもおかしくない。現に毬が危ういのだ。それこそが氷花なりの、復讐の形かもしれない。

 七瀬が氷花に関われば、きっと危ない事になる。『鏡』の一件以降大きな事件は起こっていないが、だからと言って油断は出来なかった。

 〝言霊〟に、対抗する。それは簡単な事ではないと拓海は思う。

 拓海の感性をたった一年で塗り替えていった少女は、自らの意思で、そんな戦地へ赴こうとしているのだ。悪意の言葉の地雷原に、全身を晒して歩いている。

 止めなくては、そのままどこまでも進むだろう。

 手が届かない所まで。見えなくなるほど遠くまで。歩いて行って、いなくなる。

 そのまま、帰って来なくなる。

「……」

 むくりと、壁から起き上がった。

 拗ねている場合でも、しょげている場合でもないのだ。

 そんな暇があるのなら、今すぐ、思考をするべきだ。

 氷花の、〝言霊〟。

 その異能に振り回されて、繋がりを得た拓海達四人。

 そのうちの二人。篠田七瀬と、三浦柊吾。

 七瀬は拓海を置いてまで、柊吾を捕まえに走っていった。

 拓海は考える。その動機は、何だろう?

 答えは簡単だ。柊吾と結託する為だ。恐らく酷い目に遭う毬の為に、七瀬は柊吾を頼っている。ちっぽけな嫉妬を抜きにすれば、こうもあっさりと答えは出るのだ。渋い感情を感じつつも引き続き頭の中をクリアにして、拓海は思考を加速させた。

 次の展開を、予測する。

 七瀬は柊吾を味方につけた。その柊吾は、七瀬の要請にどう応える?

 こちらも、答えは簡単だった。

「……」

 表情を、曇らせる。

 こんな事を考えたら、二人にあまりに失礼だ。それを承知で、拓海は思う。

 この組み合わせは、危険過ぎだ。

 柊吾も七瀬も、二人ともが直情型なのだ。強気で頑固で怯まない。前へ前へと進み続けて、攻めの姿勢を崩さない。一切の防御を捨てて攻撃の一手を選ぶ二人は、氷花の〝言葉〟の脅威を前に、魂があまりに無防備だ。

 相手の武器は、言葉の魂。明確な実体を持っていない。言われてしまえばそれで最後、こちらはそのまま負けるのだ。強気な態度も気概も、言葉の前には無力だった。武器にも盾にもなりはしない。拓海達は常に受け身で、一方的な言葉の矢を、ただ受け続ける的に等しい。

 七瀬も柊吾もその辺りの認識が、拓海が見る限り曖昧に見えた。

 それが何よりも、拓海には恐ろしかった。

 認識が、ずれている。そのずれが歯痒かった。だが拓海がいくら訴えても危機感は二人に届かない。どのようにすれば届くだろうと思考しては言葉に変えて、声に出しては衝突した。ぶつかり合う度に謝り合えども差は一向に埋められず、そんな状態が続いたままで、遂にここまで来てしまった。

 もし氷花の放った言葉が、このメンバーの『弱み』を抉るものだったら?

 防ぐ手段は、なかった。耳を塞ぐか、聞こえないよう遠くへ逃げるか。もしくは最初から氷花に出くわさないよう、ひたすら接触を避け続けるか。攻撃も反撃も出来ない拓海達が身を守るには、それが一番堅実的だ。

 だがそんな防御や逃避の手段を、二人が蹴るのは明白だった。

 柊吾は撫子の件で怨恨があり、七瀬はこれから友人が巻き込まれる。事情は痛いくらいに分かっていた。仕方がない状況とはいえ、拓海も内心では辛かった。

 嫌だった。こんな役は。こんな事は、もうやめたい。

 二人を止めるその度に、罪悪感で胸が軋んだ。ずっと辛くて仕方がなかった。

 それでも、拓海がやめないのは――――誰も、死なせたくないからだ。

 きっとその役割を託す為に、呉野和泉は、拓海に見せた。

 この役割は、他に担える者がいない。自分が果たすしかないのだ。

 幸いと言うべきか、柊吾は七瀬に比べたら幾らか冷静な面が残っている。折り合えてはいないが邪見にもされていない。柊吾の優しさにつけ込んでいるようで胸が痛いが、もう柊吾に懸けるしか、拓海にはやりようがなかった。

 そうでなければ、拓海は、柊吾も七瀬も失ってしまうだろう。

 九年前の夏に、青年が家族を失ったように。拓海もまた失くすだろう。

 かけがえのない友人を、皆、失くしてしまうだろう。

 柊吾。

 七瀬。

 それに。

 もう一人。

「……」

 拓海は、携帯を見下ろす。

 操作して、発信履歴の名前を見た。


『雨宮撫子』


 ……柊吾にも、さっき一度伝えていた。

 その時の己の台詞を振り返ると、この不安は言葉の形にした事によって、一層生々しい現実味を帯びた気がする。受験終了の感慨が希薄で危機感ばかりがリアルなのは、解けない問題を置き去りにしたまま先に進むようで、気持ちの悪さが胸に残る。

 不安、だった。気がかりだった。撫子の事が、どうしても。

 もちろん柊吾の言い分は尤もだ。柊吾は撫子を大切にしているし、家族のように慕っているのは、見ているだけでも良く分かる。

 それでも拓海は不安なのだ。柊吾がしっかりしていても撫子が元気に見えても駄目だった。柊吾のように構えられない。どうにも安心できないのだ。

 ――本当に、大丈夫だろうか。

 懸念はずっとあった。柊吾から中二の初夏の事件を聞いた時に、最初の懸念は生まれていた。

 撫子は、本当に大丈夫だろうか。もう、危なくはないのだろうか。

 一見、今回の事件に無関係。

 だが、本当に無関係だろうか?

 撫子は本当に、もう危ない目には遭わないだろうか?

 胸騒ぎがした。何かが引っかかるのだ。袴塚市の花が切られてから、その感覚はずっとだった。

 何がそんなにも気がかりなのか、薄々見当は付いている。

 それを、早く確かめたい。推理した方がいい気がする。いや、すべきだ。一刻も早く。そんな義務感が心を急き立て、安心感など得られなかった。

 きっと拓海は、そういう役回りなのだと思う。拓海には柊吾のような度胸も七瀬のような行動力も、どちらも等しく足りていない。それを引け目に感じて思い悩む事もあったが、七瀬にはそのままの拓海でいいと一度言われていた。卑屈になる事はないのだ。

 出来る事を、やればいい。友達を守る為に、拓海に出来る事をすればいい。

 それがたとえ、友達から嫌われる結果に繋がるのだとしても。憎まれ役を買ったなら、腹を決めて貫くべきだ。

 重い鬱屈を無理に無視して、慣れないながらも、気丈を装う。

 そのようにして拓海は、緩慢ながらも歩き始めた。

 七瀬に、会おう。

 柊吾にも。くどいと思われるだろうが、もう一度謝ろう。

 それから、撫子にも。柊吾には嫌がられたが、叶うならば拓海は、撫子の口からも話をちゃんと聞きたかった。

 それこそがこの事件解明の為の、鍵を握る気がするのだ。

 ささやかな決意を胸に、拓海は歩き始めたが……すぐに足を、止める事になる。

「……?」

 人だかりが、出来ていた。

 前方の、昇降口。等間隔に並んだ下駄箱の一角に、様々な制服を着た男女が顔を見合わせながら立っている。互いに何事かを囁き合い、耳を欹て、視線を一点へと向けていた。

 周囲の者が、異変に気づいていく。喧騒の質が変わり始め、奇妙に思った生徒達が、続々と下駄箱前に集まっていった。

 人だかりの規模が、大きくなった。

「なんだ……?」

 拓海も怪訝に思い、躊躇ってからそちらに近づいた。こんな野次馬のような真似は良くないと思ったが、それでも少し気になったのだ。

 だが結果として、拓海が人ごみに近づく事はなかった。

 突然、悲鳴が弾けたからだ。

「!」

 びっくりする拓海の前で、人垣が二つに割れた。

 女子生徒の甲高い悲鳴が上がり、ざわっと喧騒が唸る。直後水を打ったような静寂の中で、ふらりと、人の影が蠢いた。

 そうなって初めて、拓海はこの人垣が何故生まれたのか、集まった生徒達が何を見ていたのかを知った。

 下駄箱の影からふらふらと、誰かがこちらに歩いてくる。ローファーを履いた足が、簀子板の上に見えた。

 上履きに履き替えていない。土足のまま上がってきている。

 異常の一端をそこに見たが、その人間の全身がこちらに晒された瞬間、拓海は驚き、息を呑んだ。


 その人物は……女子中学生、だった。


 黒いブレザーに、緑のスカート。スカートはチェック柄で、ブラウスの襟を飾るリボンも同じ柄だ。

 見覚えがあった。袴塚中学の制服だ。

 状況が普通だったなら、驚く事は何もない。受験当日の今日、この学園に中学生がいるのは当たりだからだ。

 だがその女子中学生の容貌は、雰囲気は――普通だとは、言い難かった。

 少女は小柄だった。拓海の背が高いからそう思うのだろうが、背はきっと低い方だ。撫子よりは高いだろうが、七瀬よりは低いだろう。

 華奢な体格の少女は覚束ない足取りで歩き、ゆらり、ゆらりと進んでくる。夢遊病者の足取りに合わせて、セミロングの髪が肩の辺りで揺れていた。

 七瀬のような巻き髪。毎朝の念入りな努力を窺わせる、茶がかった頭髪。

 ただ、その髪は乱れていた。丁寧に整えられた痕跡は見受けられたが、巻かれた毛先がほつれている。まるで綺麗にセットした後しばらく放置して、そのまま手直しするのを怠ったような。そんな時間の経過を思わせる乱れ髪に、拓海は微かな違和感と不安を覚えた。

 だが真に異様なのは、少女の髪ではなかった。

 その手に、握られたものだった。


 ――ぱちん、と。


 金属の、噛み合わさる音がした。

 かち、かち、かち。

 まるでカスタネットのように、打音が校舎に響いていく。

 リズミカルに、それでいて不規則に。歪で冷徹な旋律が、少女の手元で打ち鳴らされる。

 その音は、間違っても楽器の発する音ではなかった。少女の手の中に握られたものは、カスタネットの丸型ではない。

 青色の柄に、鈍色の刃が二つ伸びていた。

 刃先は、円い。それに小さかった。

 小学生が使うような、切れ味の悪そうな鋏だった。

「……」

 鋏、だった。

 間違いない。

 少女の手は、鋏を握り締めている。

 腰の辺りで、だらんと下がった腕。その右手に携えられた鋏が、ぱちん、ぱちんと鳴っている。弛緩した身体の、右手と足だけが動いている。幽霊然とした少女の意思とは裏腹に、部分的な筋肉だけが、生気を宿すようだった。

 ぱちん、ぱちん、ぱちん。

 刃先が噛み合い、静寂が満ちる。潮が引くように喧騒が鳴りを顰め、人垣が一斉に引いていった。少女を中心に円形の空間が広がり、そんな倦厭を全く意識する素振りなく、少女は歩みをやめなかった。

「……」

 拓海は、気圧されていた。

 あまりに異様な姿を前に、完全に圧倒されていた。

 少女がふらりと、首を巡らす。

 まるで、誰かを探すように。

 そして、少女の硝子玉のような目が、こちらに、くるりと向いた時――――、ぞくっ、と身体の芯が侵されるような怖気が走り、拓海は文字通り息が止まり、身体を九の字に折った。

「っ!?」

 ぐにゃりと、視界が歪む。急激に平衡感覚が崩れて、身体が横倒しになった。あっと思った時にはもう遅く、拓海の身体はリノリウムの床に向かって、為す術も無く叩きつけられた。手をつく事も身体を庇う事も出来ず、頭から倒れ、脳が揺れてぐらぐらした。

 ――何だ、これ?

 慄然とした。心拍が急速に上がっていく。鼓動がどくどくと早鐘を打った。身体の血流が急激に速さを増して、そんな循環が振動として鼓膜に響くほどに、その時拓海の全身を襲った悪寒は、勘違いや気の所為といった一切の甘えを許さない、濃密なリアリティを持っていた。

「……っ、つ……」

 苦悶の声を絞り出すと、すぐ傍から悲鳴が上がった。少女宛ての悲鳴ではない。倒れた拓海宛ての悲鳴だった。霞んだ視界の中にたくさんの足が見えて、そこに立つ誰かが口元を押さえて後ずさった。

 自分の身体状況よりも、拓海は衆目に怖気づいた。

 咄嗟に感じた羞恥と焦りで、拓海は慌てて身体を起こす。

 途端に、すう、と。まるで憑き物が落ちるように、身体から何かが剥がれていった。

 重い荷物が消えたような感覚は、そのまま浮遊感となって拓海の意識を揺らしたが、そんな眩暈が落ち着いてしまうと、後には何も残らなかった。

 悪寒は、身体に残らなかった。

 残滓さえも残さずに、雪のように消えてしまった。

「……」

 上体をきちんと起こしながら、茫然とする。

 しばし上の空になる拓海だったが……たった今経験したこの症状に、該当する事象が何なのか。それを思い出して愕然とした。

 ――まさか。

 話には、聞いていた。柊吾と七瀬の二人から。

 柊吾は中二の初夏。七瀬はおよそ一年前。中三の春。

 呉野氷花の悪意と対峙した時、二人は共に、奇妙な悪寒を覚えたと言っていたのだ。

 その感触は一瞬で、次の瞬間には煙のように身体から消えたという。二人とも直後に氷花と激しく争ったので、その時感じた異変については深く気に留めなかったらしい。

 確信した。

 間違いない。これがそうだ。

 この感覚は柊吾と七瀬が感じたものと、同一だとしか思えなかった。

 だが、そうなると新たな疑問が湧きあがる。

 ――なんで、今なんだ?

 氷花の異能への、これは拒絶反応だろう。仔細は不明だが身体に訴えたこの感触は、氷花の異能に晒された時の反応と見て間違いないはずだ。

 それが何故、こんな時に?

 何を見た所為で、こうなった?

 おそるおそる、拓海は少女を振り仰ぐ。

 少女は拓海に関心を払った様子はなく、辺りをうろうろと彷徨っていた。

 鋏だけをしょきしょきと別の生き物のように蠢かせながら、周囲の生徒を威圧し、威圧しているという自覚も無いような顔付きで、表情もなく歩く少女。

 人が、目の前でいきなり倒れた。それをこの子も見たはずだ。

 それなのに少女は、何の反応も返さない。拓海という人間など最初からいないかのように、鋏を持って歩いている。

 不気味だった。

 明らかに異常だった。

 拓海は、回想する。どのタイミングで、自分は倒れた?

 ――この子を、見たから?

 だから、嫌な感じがした?

 ……氷花では、ないのに?

「……」

 危険だ。

 直感した。五感が訴えている。理由は分からなかったが、一切の理論は捨て置いた。本当は裏付けが欲しかったが、そんなものは後でいくらでも出来るのだ。

 とにかく。

 この子は、危険だ。関わってはいけない。

 猜疑心が弾き出した答えに、明確な自信を拓海が持った時だった。


「あの……大丈夫、ですか?」


 声が、掛けられたのは。

「へ……?」

 不意打ちだった。

 驚いて振り返ると、そこには一人、別の少女が立っていた。

 黒のブレザーに、緑のチェックのスカート。

 先の少女と、同じ制服。袴塚中学の制服だ。

 ただ髪型は、鋏の少女と全く違った。

 拓海を気遣わしげに見下ろす少女の黒髪は、肩につかないほど短く、毛先はくるんと微かに丸い。童顔と相まってか、こけしを髣髴とさせる可愛らしさがあった。

 少女は今にも泣き出しそうな目で、床の拓海を見下ろしている。

 そんな眼差しに気づいてようやく、拓海は転倒してから今までの間、立ち上がっていなかったと気づかされて――羞恥心で、体温が上がるのを感じた。

「あ……、えと、大丈夫だからっ」

 慌てて、立ち上がる。見れば周囲の生徒達も皆、拓海を気遣わしげに見つめていた。

 ただそんな視線は、拓海が思うほど多くはなかった。

 というのも、改めて辺りを見回すと、拓海同様に床へ蹲る者や顔色の悪い者が、かなりの数いたからだ。好奇や心配の目は拓海一人に集中せず、周囲のそこかしこに分散されていた。

 拓海の他にも、気分が悪くなった生徒がいたのだ。

 その事実にも驚かされたが、自分だけが奇異の目で見られなかった事に、拓海は場違いな安堵を覚えた。

 学ランについた砂埃を軽く叩いて、拓海は鞄を肩にかけ直す。そうやって体勢を立て直しながら「ごめん」と呟き、気まずさを覚えながらも対面の少女と向き合った。

「えっと……その。ありがとう。平気だから」

 少女は拓海を気遣わしげに見ていたが、拓海の背が少女よりだいぶ高かったからか、それとも男子慣れしていないからか、驚いたように目を瞬いた。そのままきゅっと身体を委縮させて、軽く拓海から身を引いた。

「うん。……よかった、です」

 それだけを言って、軽く会釈される。

 不意打ちだったので、少しどきりとした。

 悲しげな顔の子が、笑った。控えめながらもほっとする笑みだった。人見知りのきらいはあるが、優しそうな子だ。女の子に気遣われてしどろもどろになる拓海だったが、相手から自分に似た匂いを感じて、ふっと肩の力が緩んだ。

 だが、そんな風に安堵している場合ではなかったのだ。

 異変は、たった今起こった。その現状把握さえできないまま、拓海は一度倒れていた。

 そんな目に遭いながら、何故ここまで油断出来たのか。

 悪役になりきれなかった甘さが、この詰めの甘さを生んだのか。

 ともあれ、状況を刹那忘れた拓海の目は、背後の声で、覚まされた。


「毬ちゃん。……みぃつけた」


 ぱちん。

 鋏が、鳴った。

 すぐ近くからだった。

 恐ろしいほど近距離で、冷たい刃物の音が鳴った。

「え?」

 少女が振り返る。

 拓海から視線を外し、顔が廊下の方を向いた。

 その左頬に、泣き黒子を一つ見つけた時――――拓海は、瞬時に悟っていた。

 毬。

 綱田毬。

 この子が。

「君は、もしかして」

 言葉はそこで止まった。

 毬の顔が、引き攣っていたからだ。

 視点は一点に固定され、驚愕に目を見開いている。

 その視線を、拓海も追う。

 そして拓海も見た。

 毬が、恐れているものを。

「ふふふ、見つけた。毬ちゃん、見つけた……」

 笑い声が、不気味に響いた。

 気付けば再び静まり返った校舎一階の昇降口で、話す者はたった一人。鋏の少女を除いて誰も、口を開こうとはしなかった。

 生徒達は皆、蒼白だった。蹲った生徒の中には、まだ立てない者もいる。身が竦んで動けないのだ。鋏を持った少女の異常に、この場の全員が気づいている。動いていいのか分からない。凍った沈黙を破った時、何が起こるか分からない。そんな破滅が薄氷の下に覗いていた。

「ミヤ、ちゃん……」

 毬が、一歩後ずさる。

 声を震わせながら、さらに数歩、下がっていく。拓海の隣から、どんどん後方に退避する。瞳に薄く、涙が滲んだ。

「どうして……? ミヤちゃん、高校受験、どうしたの……? 受けるって言ってた西高校、ここからだいぶ遠いんじゃ……」

「毬ちゃんを、探してたんだあ。やっと一人、みぃつけた。……隠れても私が皆、見つけてあげるんだから。早く次を、探しに行かなくちゃ。でも、とりあえず毬ちゃんが見つかって、私、安心しちゃったぁ」

「ミヤちゃん……?」

 毬の顔に、心配と、それよりずっと強い恐れが浮かぶ。

 拓海は茫然自失の体で成り行きを見守っていたが、はっと我に返り、毬に叫んだ。

「あの、君はっ……!」

 君は、綱田さん?

 だが、そこで言葉は止まった。

 あと一歩という所で、拓海は口を噤んでしまった。

「……」

 たとえ毬に訊ねたとして、拓海に、何が出来るだろう?

 拓海は毬を、見殺しにしようとしたのだ。そんな拓海が毬に関わって、今更何が出来るだろう?

 ――偽善者。

 脳裏に浮かんだ冷たい言葉が、そのまま胸に突き刺さる。後ろめたさを後押しするように罪悪感が湧きあがり、拓海は声が出せなかった。

 その躊躇が、命運を分けた。

「!」

 風が、拓海の脇をすり抜けていく。

 一足飛びに駆けた少女が、毬に向かって跳躍したのだ。

 獰猛な動きだった。少女然とした雰囲気からは大きく逸脱した、まるで獣のような動作だった。

「あっ」

 発した声は拓海の声で、同時に毬の声だった。

 少女は一瞬で毬の真正面に立っていた。

 がつっ、両肩を掴む。「あっ」と毬が再び声を上げた。上ずった声。今度は悲鳴だった。苦しそうに、声が引き攣れる。身体がびくんと、一度跳ねた。

「毬ちゃん、捕まえた。えへへ、やったあ! 一人目! みぃつけた!」

 歓喜の声を少女が上げて、ふふふと密やかに笑い始めた。

 毬の両肩を押さえつけたまま、その場で楽しげに笑い続けた。

 まるで、愛を囁くように。学び舎で過ごす少女達が、秘密を打ち明け合うように。無邪気で、愛らしく、秘密裏に、慎ましく。淫靡とも陰険とも邪悪とも取れる笑い声が、ひしひしと場に流れ続けた。


 そう、まるで――――〝言霊〟の、ように。


「……何、あれ……」

 誰かが、そう言った。

 硬い声。目の前のものが理解出来ない。微かな揶揄と侮蔑、生理的嫌悪を含んだ声。だが何よりも強く感じた戦慄を、誰もが隠そうとしなかった。

 手に鋏を持った女子が、同級生の肩を掴んでいる。

 蜘蛛の巣に絡め取られた蝶を捕食するように、身体の自由を奪っている。

 その様を全員が、息を詰めて見つめていた。

 だが、永劫のように感じられた拘束の時間は、唐突に終わりを告げた。

「ばいばい、毬ちゃん。動いちゃ駄目だよ? 他の子に来てもらうまで、絶対、動いちゃ駄目だからね?」

 少女の手が、毬から外れた。

 ふい、と身体が離れていく。

 そのまま踵を返し、少女はローファーの踵を鳴らして歩いていく。

 誰もが動けない止まった時間の中を、鋏をかちかちと鳴らしながら、悠然と、可愛らしく、歩き去っていく。

 唐突に、くるりと。

 少女が振り返り、毬に向けて笑ってみせた。

 花のようなその笑みは、ぞっとするほど無垢だった。

「毬ちゃん、一昨日のプレゼント。駄目にしちゃったんだ。だからね、今度、新しく買ってあげる。ねえ、マフラー、今度は気に入ってくれるかなあ……?」

 毬は少女に答えなかった。

 恐怖の表情で、微動だにせず少女を見つめ返している。

 その様子を見た少女は、ほんの少しだけ、悲しそうな顔をした。

 ここに来てから、初めて見せる顔だった。

 無表情でも、壊れたような笑みでもない。ようやく血の通った人間らしい感情が、異常な少女の顔に浮かぶ。

 だが、すぐに笑顔に戻った。

 楽しそうな声で「ばいばい」と言って、少女は毬に手を振った。

 そして、もう二度と振り返らずに――――突然、走り出した。

 瞬間。

 学校は、阿鼻叫喚の只中に突き落とされた。

 人ごみが、一斉に乱れる。刃物を携えて駆ける狂人を、誰もが恐れて逃げ惑った。昇降口の人垣が崩れ、走り、蹲り、泣き出した。怒声と悲鳴が入り乱れ、混乱が錯綜する。誰もが冷静さを失って、その場でばらばらに乱れ続けた。

「何だ、今の……」

 拓海は呟き、手をぎゅっと握り込む。そうやって身体の震えを殺しながら、少女の向かった昇降口の、硝子扉を目で追った。

 人垣が邪魔で、ほとんど見えない。だが、まだかろうじて見えている。七瀬に似た巻き髪が。毬と同じ袴塚中学の制服が。まだ確かに見えるのだ。

 誰だ。一体何者なのだ。彼女は。

 拓海は答えを求めて、立ち尽くす毬を振り返る。

 だがそこにあったのは、予想もしなかった光景だった。

「た……助けて……」

 震える声で、毬が言った。

 顔は廊下の果てに向いたまま、そのままの姿勢で毬が言った。

 それが自分への呼びかけだと、拓海は最初気づかなかった。

 毬の目が、あまりに誰も見なかったから。だから他者への呼び声だと気づけなかった。

 それでも、拓海が気付けたのは――毬が、泣いていたからだ。

「助けて、下さい。誰か……お願い……助けて……」

 毬は震えていた。すとんと降ろされた両手も、ブレザーから覗く白い手の指先も、立ち尽くす足も。全身が小刻みに震えていた。

 だが、その立ち姿は妙だった。

 こんなにも、震えているのに。辛そうに、立っているのに。息遣いさえも、苦しそうなのに。

 何故、毬は。


 一歩も、動かないのだろう。


「なあ、綱田さん、だよな……?」

 意を決して、声を掛けた。

 緊張で、拓海も震えた。怖かった。確かめるのが。だが確かめないわけにはいかないのだ。何が起こっているのか、この目で見なくては分からない。そうしなければ、毬を助けられないのだ。

 一歩、毬に近づく。距離は二メートルもない。数歩歩けば、隣に立てる。

 やはり、毬は動かなかった。先程拓海を前にして縮こまっていた少女は、今や石のように動かない。蛇に睨まれた蛙のように、恐怖で震えるのみだった。

 それでも声を受けてか、毬の顔がぎこちなくこちらを向いた。

 酷く硬い、動きだった。

 目に戸惑いを浮かべて、毬が拓海を見た。

「どうして、私のこと、知って」

「俺は……東袴塚の、坂上拓海だから。綱田さんの事、聞いてるんだ。……綱田さんで、合ってる? 篠田さんの、友達、だよな……?」

「ああ」

 毬の目から、また一筋涙が零れていった。

「七瀬ちゃん、の。……助けて、下さい。坂上君。お願い、します」

 身体が、ふらりと揺れた。

「動けないの」

 それが、毬の最後の言葉だった。

 がしゃん――――、と。陶器を床に叩きつけたような激しい音が、校舎一階に響き渡った。

 髪が、揺れた。揺れた黒髪が、毬の泣き黒子を隠していく。髪が隠した毬の目は、すうと緩やかに閉じられた。

 眠るような穏やかさとは裏腹に、その顔色は悪かった。苦悶の色が炎のように、赤い火影を頬に翳す。目の前でバランスを崩す少女の身体に厚みはなく、そんな肉付きの薄さは拓海に、雨宮撫子を思い出させた。

 見れば、周囲の生徒がコートやマフラーで寒さを凌ぐ中、この少女だけは薄着だった。コートも手袋もマフラーもない。制服以外の防寒具を、何一つとして持っていない。

 ――マフラー、今度は気に入ってくれるかなあ……。

 陰湿な声音が、脳裏に冷たく響き渡った。

「――綱田さん!」

 動揺している場合ではなかった。

 距離を、一息に詰める。大股で駆け寄り、滑り込むようにしゃがみ込んだ。

 だが毬に手を伸ばした瞬間、拓海は更なる異常に気がついた。

 手を、思わず引っ込める。

 倒れた毬の姿は、一目で判るほど異様だったのだ。

 手は腰の隣に降ろされたまま。顔の向きもそのままだ。

 さっきの立ち姿と、全く同じ姿勢。そのままの格好で、毬は仰向けに倒れている。

 白い喉から、苦しそうな呼吸が洩れた。見る間に息遣いが荒くなり、呼吸のスパンが短くなる。呼吸の加速に喘ぐように、蒼白な頬に涙がぼろぼろ流れ落ちた。

 過呼吸。

 すぐに気付き、蒼ざめた。

「……誰か、先生呼んでくれ!」

 ともかく声を張った。ざわりと、喧騒が乱れる。誰かが拓海の声に応えたのだ。振り返ると見知らぬ生徒が頷いてくれて、近くの保健室に駆けていった。顔を上げれば騒ぎを聞きつけた教師が数名、慌てた様子で走ってくる。

 助けが、来る。だがこうなってしまっては、最早安堵など出来なかった。

 この症状は、過呼吸だけではない。むしろ過呼吸はついでだろう。この状況にパニックになって併発したに過ぎないのだ。知識は薄いし論拠もないが、きっとそれで正解だ。

 毬の身体は動かなかった。まるで凍りついたように動かない。

 そして『凍り』という観念に思い至った途端、確かに蘇る顔があった。

「綱田さん、しっかり!」

 覚悟を決めて、拓海は毬の腕を掴んだ。

「!」

 すぐに驚いて、腕を離す。

 ……びっくりするほど、硬かったのだ。

 筋肉が、硬直している。どんな病に侵されたら、突然こんな風になるのだろう。これほど緊張状態になった身体に、拓海は今まで触れた事がなかった。

 だが、予想済みだった。

 毬が『動けない』と言った時から、何となくだが気づいていたのだ。

「……」

 携帯を取り出し、画面を見下ろす。

 一瞬、躊躇した。本当に、いいのかと。通話をすれば、戻れなくなる。

 だが迷う時間が惜しかった。拓海は躊躇いを無理やり断ち切って、『雨宮撫子』の名が表示された携帯のリダイヤルボタンを叩き込む。そして相手が何かを言うのと同時に、勢い込んで叫んだ。

「三浦!」

 だが、その通話に出たのは、三浦柊吾ではなかった。

『え……っ』

 女の子の、声だった。

「え、……まさか」

 戸惑ったような、その声は。

 助けと応援を求める為に、意思を曲げてかけた電話。

 その相手が、よりにもよって。

 手が、汗ばんでいく。言いたくない。言っては駄目だ。この相手にだけは、絶対に。だが、もう駄目なのだ。拓海一人で、どうにかできる時は過ぎた。

 ……それに、もう出会ってしまった。

 会いたく、なかった。出会ってはいけなかった。顔を知ってしまったら最後、もう見捨てる事など出来なくなる。

 拓海には、出来なかった。柊吾に答えた通りだった。

 悔しさがじわりと、涙のように心に沁みていった。まるで決められたシナリオの上で、踊らされているようだった。それを覆せなかった自分の無力が、ただただ悔しく、悲しかった。

 泣きじゃくる毬に教師が駆け寄り、紙袋を口元に宛がう。処置の邪魔にならないように立ち上がりながら、拓海は背後を振り返った。

「……」

 もう〝彼女〟はいなかった。

 ざわつく生徒と不快感を訴える生徒で、地獄絵図となった校舎。その風景のどこを探しても、鋏で遊ぶ狂人の姿は見つけられなかった。

『……坂上くん! 私、七瀬! 三浦くんもいる! どうしたの!?』

 七瀬の声が、耳朶を打つ。

 その声に応える為に、拓海は、息を吸い込んで――決意を固め、ついに言った。


 こうして、〝アソビ〟は始まった。

 一人目、みぃつけた。

 笑みを含んだ少女の声が、拓海の頭から離れなかった。

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