花一匁 73
撫子が鋏を振り上げて、美也子の脳天へ振り下ろそうとした時だった。
「雨宮! やめろ! 雨宮あぁぁ――――っ!」
柊吾の叫びと同時に、目の前に二人の少年少女が飛び出した。
「撫子ちゃん!」
「雨宮さん!」
七瀬が撫子を羽交い絞めにし、拓海が美也子を突き飛ばした。
だがたったそれだけの邪魔立てでは、美也子の『愛』も撫子の『憎悪』も止まらなかった。
撫子が手足を振り回して抵抗し、大振りな動きに翻弄された七瀬の身体が、右に左に揺れ動く。
「撫子ちゃん! 私だよ! 七瀬! 怖がらないで!」
七瀬は必死に叫んだが、撫子は耳を貸さなかった。
貸したくても、貸せないのだ。〝言霊〟で呪われた双眸は、七瀬の姿を映さない。透明人間に身体を触られた撫子の顔が、強い怯えで蒼ざめた。甲高い悲鳴が森の空気を切り裂いて、がむしゃらに振り回された鋏の刃が七瀬のセーターを引っ掻いた。
「篠田あぁ――――っ!」
胃が引き攣れそうな程の声で柊吾は叫んだ。息もつかせぬ斬撃が七瀬の髪を叩き、頬を掠め、首筋を薙ぎ払った。鈍色の閃光に切り刻まれた七瀬の顔に苦悶が滲み、腕から撫子の身体がすり抜ける。
撫子は鋏を地面と水平に捧げ持つと、美也子目掛けて走り出した。
「……させない!」
体勢を立て直した七瀬が撫子の進路へ回ったが、撫子はそれを最小限の動きで避けて、野兎のように駆けていく。目が『見えて』いるのと寸分たがわない動きの理由を、柊吾はすぐに悟っていた。
土だ。草だ。枯葉の音だ。瑕疵ある『視力』を全身の感覚器官で補いながら、人の息遣いと気配を拾い、撫子は『敵』を目指している。
――『敵』。
ぞわりとした既視感に、身体が芯から冷えていく。
――撫子は、美也子を敵だと言った。
そんな風に撫子が『憎悪』を他者へ向けた姿を、柊吾は既に一度見ている。
中学二年の初夏。病院へ運ばれた氷花を狙って、撫子は刃物を手に取った。
――ここにいるのは、あの時の撫子だった。
人が『見えない』孤独な世界で、一人で敵を討ちに行った撫子。
あの時と同じ撫子が、再び柊吾の元へ戻ってきたのだ。
「撫子ちゃん! 撫子ちゃん……!」
七瀬は何度でも撫子の行く手を阻んだが、人間の『声』では修羅と化した少女の演舞は止められない。『見えない』敵の喉笛目掛けて撫子が鋏を横凪に振るい、間一髪で避けた七瀬が寸刻までいた樹木の前を、鈍色の風が吹き抜けた。
木肌に刀傷が刻まれ、薙ぎ払われた枯葉が舞い、鋏はキンッと澄んだ音を立てて宙を旋回して、森の地面へ突き立った。寒々しいほどに青い明かりが、二枚の刃で煌めいた。
その一連の動きを目で追った撫子は、鋏へ手を伸ばしたが――膝からくずおれ、地面に両手をついて臥せった。
「……っ、はあ、はあ、はあ……っ!」
薄い胸板がふいごのように上下して、表情のない顔には玉の汗が浮かんでいた。がくがくと異様なまでに震える身体に、柊吾の頭から血の気が引いた。
無茶な動きをしたからだ。撫子の身体は元々、こんな立ち回りができるほど丈夫ではないのだ。それを柊吾は下手したら、撫子本人より分かっている。
撫子の目は見開かれ、瞳孔も極限まで開き、疲労に喘ぐ姿に人間らしい理性はない。ただ『敵』への憎悪と悲しみが、涙となってぼろぼろと頬を伝っていた。
二度目の既視感が炸裂し、柊吾の『動けない』身体に鳥肌が立つ。
――九年前の、夏の罪。
人伝に、全て聞いていた。だから柊吾にとってその記憶は、拓海の声の形をしていた。
呉野和泉がまだ十八の青年、『イズミ・イヴァーノヴィチ』だった夏の頃。
この場所で『呉野』と名のつく大人達が、三人いっぺんに姿を消した。
親族同士で殺し合い、死んだと柊吾は聞いている。
その内の一人は『イズミ』が見ている目の前で、人を一人、殺害した。
その男の名は――呉野伊槻。
呉野氷花の〝言霊〟で、自我が狂気に染まった男。
理解が、頭に流し込まれたように湧き上がった。
この撫子は――伊槻と、同じ状態なのだ。
娘の〝言霊〟で狂気を爆発させた伊槻は、当時の神主である呉野國徳を襲い、神社にガソリンを撒き、イズミをも殺そうとした結果、イズミの父を手に掛けた。
その伊槻と、この撫子は同じなのだ。
人知を超えた感情が、器を壊すほどに膨れ上がり、人の心へ収まり切れずに、現の世界へ溢れている。
その奔流に惑わされて、撫子は今動いているのだ。
さながら操り人形のように全身へ細い糸を張り巡らされ、自由を奪われてしまったのだ。肥大化した感情に、意思を、身体を、奪われてしまったのだ。
――だが、その理解では違うのだ。
これが本当に九年前と同じなら、撫子は操られているわけではないからだ。
何故なら、さっきの撫子の告白は――おそらく、全て本心だからだ。
この撫子は、嘘をつけない。封じていた言葉も想いも、包み隠さず明かしてしまう。この撫子の発した言葉は、何から何まで本心だ。
美也子を、『敵』だと言ったことも。『きらい』だと、言ったことも。
その死を、願ったことさえも。
だが、このままでは――撫子が、壊れてしまう。
「雨宮、よせ! お前がそんなことしたら、身体が……っ!」
柊吾は唾を飛ばして叫んだが、声が届かないのは分かっていた。
撫子は荒い呼吸のまま立ち上がり、鋏を探して視線をふらふらと彷徨わせた。
「こんなものっ……!」
七瀬が間髪入れずに鋏をローファーで蹴飛ばしたが、転がる鋏を追って伸ばされた撫子の指先が、隣の樹木の木肌へでたらめに打ちつけられた。
人の爪が割れる音を、柊吾は生まれて初めて聞いた。
「もう、やめてくれええええ……!」
目頭がかっと熱を帯び、あっという間に涙が滲んだ。罅割れた声で叫びながら、柊吾は力の限りに手を伸ばした。
だが、手は伸ばせない。指の末端にまで過剰な力をいくら込めても、異能の呪縛に絡め取られた身体は、磔にされたように『動かない』。
血を吐きそうな歯痒さが、壮烈に胸を焦がしていった。
……柊吾は、何も出来ないのだ。
撫子の身体が、心が、目の前で壊れようとしているのに、ここで指一本動かせずに、ただ見ていることしか出来ないのだ。
七瀬も長い悲鳴を上げた時、別の金切り声が、場の空気を切り裂いた。
「邪魔しないでよっ! 私は、撫子ちゃんに殺されたいんだからあっ!」
美也子が頤を空へ向けて、大声で泣きじゃくっていた。弛緩したその身体を拓海が引き摺り、「離れるんだ!」と激しい怒声をぶつけていた。
「殺されたいなんて、言わないでくれ!」
聞いたことのない大声に、柊吾は涙で霞んだ目を瞠った。
「殺される風見さんは、それでいいかもしれない! けど、俺達は! 雨宮さんの友達なんだ! 殺されたいなんて、言わないでくれ! 自分の我儘のために、雨宮さんを、使うなっ!」
「坂上……」
拓海は、今にも泣き出しそうな目をしていた。決死の顔に多様な感情が浮かんでいる。怒りが、悔しさが、伝わってくる。柊吾の元にまで伝わってくる。
こんなにも声を荒げて誰かを糾弾する拓海を、柊吾は今まで、知らなかった。
「みいちゃん! だめだよ、みいちゃん……!」
森の小道の方からは、陽一郎が叫んでいた。
首を『動く』限界まで傾けて、蒼白の顔で、だが明らかに友達を心配している声で、陽一郎が美也子へ叫んでいた。
「殺されたいなんて、言っちゃだめだよ! みいちゃんが死んじゃったら、悲しむ人がいっぱいいるよ!」
「そんなのどうでもいいよ! 私は今すぐ死にたいの! 陽一郎には分かんないよ! 私のこういう気持ちなんて、陽一郎には分かんないよお!」
「分かるよ! 僕だって、分かるよ!」
陽一郎の声が、涙声になった。
「僕だって、苛められたことあるし、し、死にたいって思ったことだって、あるよ! あるけど、でも! 撫子がいたから、死にたくないって思えたんだ!」
死という言葉に、はっと柊吾は息を吸い込む。
陽一郎から、そんな言葉を聞かされるとは思わなかった。
美也子も驚いたのだろう、不意を打たれたような顔で、陽一郎を見返した。
「僕が学校行くの嫌がったら、撫子が一緒にいこうって言ってくれたんだ! 僕がクラスの子を怖がったら、怖くないよって言ってくれたんだ! 撫子がそう言ってくれたら、ほんとに怖くない気がしたんだ! 明日も学校に行こうって、思ったんだ! 一人だったら怖いけど、撫子がいるなら、行こうって思えたんだ! ……だから、みいちゃん! 僕、こんなの嫌だよ! 撫子に殺されないで! 撫子に、そういうひどい事させないで! 嫌だよ、僕、こんなの、嫌だよ……!」
「陽一郎……」
柊吾が美也子へ目を向けると、美也子は獣のように唸りながら、唇を噛みしめて震えていた。そして急に大声で泣き出すと、拓海に寄りかかってくずおれた。美也子と一緒に下草へ倒れた拓海が、困ったような顔になる。
やがて拓海が「……日比谷の所まで、行こう」と、微かな労りを感じる声で囁いた時だった。
事態の急変を、柊吾はいち早く視界に捉えていた。
「! 篠田! 止めてくれ!」
撫子がよたつく身体で走り出し、再び美也子を目指したのだ。
「だめっ! 撫子ちゃん!」
七瀬は即座に反応して、撫子の腕をぱしっと掴んだ。
拓海も慌てた様子で駆け寄ろうとしていたが、美也子の傍を離れるべきか判断に迷い、そんな刹那の逡巡の間に撫子の手が鋭く伸びて、七瀬の首へ突き出された。
「くうっ……!」
至近距離の攻撃を七瀬は素早く躱したが、体勢を崩して倒れ込んだ。
撫子は七瀬を気に掛けずに、ただ失ってしまった鋏を探して、首をゆらゆら振っている。
「美也子は、私の敵……きえてもらわないと、だめなの」
夢うつつの目で呟き、撫子が七瀬に背を向けた時だった。
ばしゃん! と叩きつけるような水音が立った。
飛沫が上がり、月光が煌めく。柊吾は、度肝を抜かれた。
「おい……っ!」
――七瀬が、泉に飛び込んだのだ。
畔から近い浅瀬で、身体をうつ伏せに寝かせて倒れている。
「……篠田さん!?」
拓海も慌てた様子で顔を向けた。その呼び声に応えるように、七瀬はむくりと起き上がった。
片膝をつく七瀬の髪から、制服から、ぼたぼたと水が滴る。
凄みを孕んだ双眸が前髪から覗き、撫子を真っ直ぐに捉えた。
「……これで、『見える』ようになったでしょ?」
言うや否や、七瀬が泉から弾むように飛び出した。
水を吸った衣服の重さをまるで感じさせない跳躍に、新たな飛沫が撒き散らされる。撫子の目に、はっきりとした驚愕が浮かんだ。
透明人間だったはずの存在が、透明な水を纏って突如世界へ顕現した。美也子と二人きりだった世界の均衡が崩されて、竦む撫子へ七瀬の身体がぶつかった。折り重なるように倒れた二人は身体の上下を入れ替えながら、地面を転がり、石が跳ね、砂が飛んで、皮膚が泥に染まっていく。
「目を覚ましてよ! 撫子ちゃん!」
七瀬が撫子を組み敷いて、身体を強く抱きしめた。
「私だって分かってるんでしょ! ずっとこうしてきたんだから分かるでしょ! ねえ、撫子ちゃん、元に戻ってよ……!」
悲痛な訴えが森の黙に木霊して、七瀬の髪から伝う泉の水が、撫子の頬を濡らしていく。撫子の目に微かな悲しみが光って流れるのを、柊吾は確かにこの目で見た。
だが、元には戻らなかった。身体に触れても、温度を伝えても、何をしても、情は心に届かない。
撫子は血で染まった唇を動かすと、「みやこ、死んじゃえ、みやこ、死んじゃえ、みやこ、死んじゃえ……」と呪詛の言葉を淡々と念仏のように唱え出す。
「言わないで! もう黙って!」
頭を振った七瀬が撫子を抱く力を強めても、滝の流れのような怨嗟は止まず、美也子の泣き声が大きくなる。螺旋を描いて渦巻いた憎悪の雨に打たれながら、森の気配がさんざめく。本当に泣いているかのようだった。この山の自然に宿る清らかな魂が、撫子の揺れる心に反響して、何かを悼んで嘆いている。腐敗した空気の下で、抑圧された情動が、静謐な涙を流している。
「雨宮……」
柊吾はただ、茫然としていた。
撫子が、今まで柊吾に見せなかった心。隠し続けてきた想い。
それは……美也子への、『憎悪』だった。
混乱、していた。頭の芯が、痺れていた。それを柊吾が知ったことで、己がどう思ったのか。その感情が、掴めない。だから何なのだと、遅れて思った。だが、それは柊吾の心だ。撫子の想いとは異なる、柊吾自身の感情だ。
撫子は――どんな気持ちで、いたのだろう。
柊吾の隣に立ちながら、どんな気持ちでいたのだろう。
風見美也子。小学五年で転校した、あわよくばもう会う事のない少女。
忘れてしまっても、良かったのかもしれない。忘れてしまえば、良かったのだ。
だが、忘れられなかった。
何故なら、美也子も、撫子も……一人の『人間』の死を、背負っている。
命が、失われてしまったのだ。柊吾も共に時間を過ごした、小学五年の苛めの所為で。
もし柊吾が撫子の心を、もっと早く知っていたら。
柊吾は果たして、言えただろうか。
紺野のことも美也子のことも、全部忘れていいのだと。
だが、たとえ柊吾がそれを許したとしても、他の誰でもない撫子が、それを許さないに決まっていた。
柊吾がそう思う理由は、明白だ。
撫子は、そういう少女だからだ。
真面目で、義理堅くて、目の前の人間一人一人に一生懸命になれる。人の心の痛みも分かる。寄り添い合うことができる。受け止めて、抱きしめられる。決して誰かを、一人ぼっちにはさせない。紺野に対しても、そうだったではないか。誰も見せなかったその勇気を、柊吾達全員が、もう知っているではないか。
だから――皆、惹かれるのだ。
撫子のことを、好きになる。
「三浦くん、『動いて』よ!」
七瀬が、ばっと柊吾を振り返った。
月光を受けた涙の滴が、ぱっと輝いて散っていく。
「何ぼさっとしてるわけっ? まさか撫子ちゃんの言葉にショック受けて動けないわけじゃないよね!? 三浦くんって特別なんでしょ! 実はすごいんでしょ! 異能持ちかもしれないんでしょ!? 〝アソビ〟で『動けない』くらいなら、さっさと馬鹿力で動いてこっちに来て! 早く撫子ちゃんのこと助けてよ!」
「なっ……、ショックなんかっ」
「受けるわけないって、はっきり言ってよ!」
七瀬が、顔を歪めて泣き叫んだ。
「こんな言葉が何なの!? これくらい、思うよ! 私だって思うよ! 誰だって思うよ! これは、ほんとに撫子ちゃんの本心かもしれない! ――でも! こんな言葉を! ほんとに声に出して言っちゃうことが! 撫子ちゃんの本心なわけないじゃない!」
「三浦! 篠田さんの言う通りだ! これは、〝言霊〟の所為だ!」
拓海も、美也子を引き摺りながら叫んだ。
「今の雨宮さんは、ずっと前に呉野さんから受けた〝言霊〟の所為で歯止めが利かなくなってるだけだ! 〝言霊〟に無理やり言わされてるだけだ! こんなのは、違うんだ! これは雨宮さんの本心でも、絶対本心なんかじゃない!」
支離滅裂な叫びだった。聡明なはずの拓海が、こんなにも整合性の取れていない、矛盾した言葉を叫んでいる。
だがその理論を、柊吾もきちんと理解できた。
これは全部、撫子の本心でも、本心ではない。
柊吾だって――――分かっている。
拓海と七瀬に言われなくても、ずっと前から、分かっている。
「このまま言わせ続けたら、雨宮さんが辛いだけだ! ――だから! 止めるんだ! 三浦! 佐々木さんだって『動けた』んだ! 三浦にも、絶対できるから……!」
その言葉に柊吾は返事をしかけて、はっと顔を強張らせた。
撫子が七瀬の項へ、唇を寄せたのが見えたのだ。
「――雨宮、よせっ!」
だが制止は間に合わず、撫子はやめなかった。
撫子は、自分を組み伏せる透明人間の首筋へ、歯を強く立てて噛みついた。
「……っ!?」
七瀬の身体が弾んだ。唇が開き、悲鳴にも似た乾いた声が、刹那の間だけ空気に漏れる。歯を食いしばってそれを止めた七瀬は足をばたつかせてもがき、撫子と身体の上下が入れ替わった。撫子の背に回す腕をそれでも外さない七瀬の項に、撫子の歯が食い込んだ。
「う……っ、うう、ぁぁああ!」
堪えきれなかった悲鳴が七瀬の喉を突き破った時、血相を変えた拓海が到着し、七瀬から撫子を引き剥がした。
突然の闖入者を察して錯乱したのか、撫子は叫びながら右手を大きく振り上げた。
血だらけの指が、割れた爪が、拓海の顎へ迫る。
「うわ!」
仰け反って避けた拓海の額を、撫子の爪が切り裂いた。
呻き声と共に血がしぶき、目を押さえた拓海が蹲る。
「坂上!」
「坂上くん!」
撫子の表情が、僅かに動いた。
「みうらくん? そこに、いるの……?」
心細げな様子で赤く染まった両の手を、撫子はそろりと、何もない空間へ差し伸べた。
目に入ったのだろう血を手の甲で拭った拓海が、そんな撫子の姿を見る。
茫然の顔が、やがて悲しげな笑みに変わった。
「雨宮さん……ごめんな。俺は、三浦じゃない」
拓海は立ち上がると、臆することなく撫子の両肩を掴んだ。
その、瞬間だった。
「……さかがみくん?」
撫子の目に、薄い光が灯ったのは。
拓海が、息を吸い込んだ。




