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異世界バスケットボール 魔王様激love!  作者: 鴉野 兄貴
キューギって超わけわからない
9/103

お泊りしてよいですか

 切っ掛けは魔国の客人にして土魔将ノームの義娘の一言であった。

水魔将ウンディーネの副官にして妹ニンフが当時の回想を日記に綴っている。


「今夜お泊りしていいですか」「良いわよッ 喜んでッ?! 」


 この一言で出陣寸前だった『水のウンディーネ』は即座に予定をキャンセルした。その判断に一秒かからなかった。

ちなみにとばっちりを受けたのは皮肉にも由紀子の義父のノーム。

いきなり水魔将が『明日用事が出来た』などあり得ない。普通に反逆罪だ。


 「水魔将の首を跳ねよ」と言う返事を期待し、

『土魔将ノーム』、魔王の魔力によって生み出された魔法生物にして精霊の御子でもある『風魔将シルフィード』、『炎魔将サラマンダー』の三名は魔王の私室に踏み込んだ。


「魔王様。水魔将が反逆をッ! 」


 そこで三人が見たものとは。

「ええっと。寝間着はこれで。詩集も持ったし……えっ?」

固まる彼らの主。魔導人形『魔王ディーヌスレイト』だった。

完全にフリーズする三魔将。普段の威厳の欠片もない魔王。


 魔王は大量のお泊りセットを手にウキウキと準備を整えている姿を直属の部下三名に見られた事実に狼狽えながら必死にクローゼットに押し込もうとして。

「がらがらがら。どすん」中身が溢れた。どれだけ持ち込むつもりなんだ。


 「魔王様」ノームは表情を動かさずに告げた。

「見なかったことにしますので、落ち着いてくださいませ」

魔王はしゅんとした表情を浮かべて「はい」とだけ呟いた。

「がたがた。どすん」「ええと、手伝いは要りますか」「すまん。荷物をまとめるのを手伝ってほしい」

……一応言っておく。これでも魔王である。


「反逆か」


 報告書を読み上げながら精一杯の威厳を見せようとする魔王。

必死で真面目な表情を繕う風魔将と炎魔将。

威圧感と一切の情も通わぬ魔王の瞳が土魔将を射抜く。

「土魔将よ」「はい。魔王様」

跪き指示を待つ土魔将ノーム。魔王はつぶやく。

「頼む。その目つきは辞めてくれ」「誰の所為だと」

土魔将は洒落が効く男だが上司には厳しかった。


「ええ。畏れながら水魔将は今回の出陣を明日予定が出来たからと」


 報告を続ける三魔将。魔将が己の任務を拒否するなどあり得ない。立派な反逆だ。

「だが、その大本の原因はなんだ? 土魔将。私の『耳』を軽んじているのか」

「これは任務だ。水魔将は処分しない。そして。私も今夜用事があるので去るように」


 苦虫を噛み潰したような表情の土魔将とニヤニヤ笑いの風魔将。

そして感動のあまり「良い義娘ではないかッ 」と叫ぶ暑苦しい炎魔将。

比喩ではなく炎魔将の身体は炎で出来ている。本気で暑苦しい。

「由紀子か。ますます面白いな」フワハハハとノームを小ばかにする風魔将。その身体は風で構成され、魔王自ら鍛え上げた銘刀『風鳴』を力の源とする。

「良い義娘ではないか。ノーム。俺は感動したぞッ 」政敵相手に何を熱くなっている。サラマンダー。

「アリガトウ」腹は立つ。政敵どもに恥を晒したのもそうだがそれでもサラマンダーに棒読みながらも礼を告げるノーム。

『魔王ディーヌスレイト』圧倒的戦闘能力と歴代最高の人気を併せ持つ偉大なる魔族の王。

その実態を知る者は。少ない。

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