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異世界バスケットボール 魔王様激love!  作者: 鴉野 兄貴
夢なんてありません 希望なんて持つだけ無駄です
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魔都炎上。あるいは逆転の狼煙

「エル。疲れていないか」「純魔族は身体的な疲労を感じません」


 労わる声に毅然と返す魔族の少年兵士・エル。エルは通称である。

とはいえ、魔力的な損耗は激しく彼の表情には色濃い疲労の様子がうかがえる。

「血を飲むか」「禁止されています」固いな。貴様は。

そうつぶやく熟年兵はニコリと笑った。

「無いがな」「無いなら言わないでください」無いと言われると『飢え』がきつくなるのが魔族のさがだ。人間の美味に通じる。

二人は重い脚を引きずり、純魔族の血で黒く染めた皮鎧の重さに苦しみながら歩を進める。その皮は特殊加工で強化した人間の皮を用いている。

エアリーアーマーと呼ばれ、本来は軽く動きやすく装着者の身体能力を強化する鎧だが使用者の魔力が足りなければ重いだけの革鎧と化す。


 エル。彼の正しい名前は『くろくくらいやみのうず』なのだがそう呼ぶ仲間はあまりいない。エルフや純魔族ダークエルフの名前はニンゲンには歌にしか聞こえないので実用性に欠けるのだ。魔族の殆どは短気であり名前など持っていない者も少なからずいるので結果的に自分でも『エル』と名乗るようになっている。


 竜族の血を引くというその熟年兵はエルを伴い歩く。

魔竜山脈の戦いでほぼ壊滅した第四軍団兵、バルラーン絶対防衛線の防衛で多くを失った第一軍団兵たちは『多少の損害』(??)を受けたものの魔竜山脈の竜族の生き残りと言う力強い援軍を得、魔都から事前に脱出した女子供たちを加えて魔都に向かっていた。その数五〇〇〇〇近い。

急げ。急げ。歩を進める彼ら。


 竜族は石ころすら食料にできる力を持つ。

五万もの人間の食料問題は竜族の魔法で解決した。

竜族の食事はエルフの食事、レンバスに匹敵する。非常に不味いが。

「この食べられる石ころはもう飽きた」ぶつくさ言う兵士たち。

苦笑いするエル。実は防衛線脱出時から大事に持ってきた飴玉の残りがあるのだが口には出さない。生き残ったら食べようと思っている。

食事がすめばまた強行軍だ。フラフラと歩みを進める彼ら。魔力と体力の使いすぎでボロボロだ。

竜族の本質は『気』と熟年兵は言う。『瘴気』『磁気』『空気』『気力』等々。

「台風や地震なども竜族なのだ」「そうなのですか」「うむ」

水の流れや川の流れなども竜らしい。信じがたいが事実らしい。

「魔族も人間も、それだけではない。世界は竜を宿す」「そうなのですか」

竜族の哲学は独特なので興味深いのだが疲労の濃いエルには少々うっとおしい。

「故に純粋な竜族、否、『竜』は性行為によって生まれることなく、龍脈の中央に卵が……」

男の言葉は兵士たちの言葉によって途切れる。

「見えたぞ。魔都が」喜びの声が絶望に代わっていく。


 魔都は燃えていた。激しく強く。赤々と。

「なんてことだ」「間に合わなかったか」悔し涙を流す戦士たち。

しかし様子がおかしいと女たちが声を上げる。

遠見の魔法を使えるものがニンゲン達の陣地を『見る』。多くは対探知魔法によって妨害されたが。

「敵は慌てています」「私たちを見て混乱しているようです」意味が解らない。

「魔都は陥落したのではないのか?」口から泡を飛ばして状況の把握に努める彼らに女たちはしっかりしろとビンタを張る。ビンタどころか拳だ。

魔族の女は怖い。結婚に成功した魔族男の多くは尻に敷かれるのも無理はない。清楚で貞淑と人間にも評判が高い魔族妻は子供が出来たら肝っ玉かーちゃんになる。

『少女時代は天使や妖精、子供を産んだらオーガやトロル』とは肝っ玉母さんを指す魔族の言葉だが人間の世界にも輸出されている。何処の世界でもお母ちゃんは怖い。


「魔王城から旗が見えます」「勝利の旗? 意味が解らん」

「人間の軍が魔王城を囲んでいるようですが」「殺せ!」

最早自らがどうなってもいい。人間どもを皆殺しにしてやると気勢を上げる彼らに遠見の術や聴覚に優れたエルフの兵が告げる。

「自ら武装を解除して助けを求め魔王城の戸を叩いています」「????」


 わけがわからない。

エルたちは絶望の声をあげて真っ赤に焼ける魔王城の門を素手でたたき、慈悲を乞いながら燃えていく人間どもをただ呆然と眺めていた。

エルフの兵が用いた『風の声』は人間どもの断末魔を乗せて彼らの耳朶に届く。

その地獄の亡者を思わせる声は彼らの正常な思考力を奪うには充分なものだった。


 「魔王様ッ! 魔王様ッ!!! お助けくださいっ!!!!!!! 哀れな我らを御救い下さいッ!!!!!」「哀れで無力な私達を御救い下さいっ!」「いれてくれっ! いれてくれっ! 城に入れてくれっ」「俺はしにたくないっ」「いやだいやだいやだっ 死にたくない」「魔王様ッ! 魔王様ッ!!! お助けくださいっ!!!!!!! 哀れな我らを御救い下さいッ!!!!!」「哀れで無力な私達を御救い下さいっ!」「いれてくれっ! いれてくれっ! 城に入れてくれっ」「俺はしにたくないっ」「いやだいやだいやだっ 死にたくない」「魔王様ッ! 魔王様ッ!!! お助けくださいっ!!!!!!! 哀れな我らを御救い下さいッ!!!!!」「哀れで無力な私達を御救い下さいっ!」「いれてくれっ! いれてくれっ! 城に入れてくれっ」「俺はしにたくないっ」「いやだいやだいやだっ 死にたくない」「魔王様ッ! 魔王様ッ!!! お助けくださいっ!!!!!!! 哀れな我らを御救い下さいッ!!!!!」「哀れで無力な私達を御救い下さいっ!」「いれてくれっ! いれてくれっ! 城に入れてくれっ」「俺はしにたくないっ」「いやだいやだいやだっ 死にたくない」

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