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異世界バスケットボール 魔王様激love!  作者: 鴉野 兄貴
夢なんてありません 希望なんて持つだけ無駄です
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魔都炎上前夜

 彼女を迎えに来た人造人間の娘と吸血鬼の少女に治療を受けながら少女は自らが見聞きしたことを吸血鬼の少女に淡々と語った。

天に昇っていく死族の話。神に見捨てられ、自ら神の祝福を手放した人々が天に迎えられる様子を見た不思議な体験を。

「にわかに信じがたい経験ですね」躯はその整った表情を困ったようにゆがめて見せた。実際困っていたのであろう。

「躯は黙っていて」「理解しました」そういって直立不動で後ろに控える躯に少女は申し訳ない気分になり言葉が途切れる。

「躯さん。あの」「いえ。疑うような態度を取って申し訳ありません」

「躯のねーちゃんはおっぱいでかいのに生真面目だよな」

呆れたように半眼で睨む犬頭鬼に軽口をたたく純魔族の少年。

「吸血鬼になりたいか死体の継ぎ合わせになりたいのか選んでイイわよ?」

自他ともに認める控えめな胸の吸血鬼の少女は冷淡に告げた。

余談だが後に胸を押さえて『大きくなれ』『おおきくなれ』言っているのを少女たちが目撃したときは流石の純魔族・ギンカも申し訳なさそうにしていた。


「そっか。勇征君は昇天出来たのね」


 そういって血の付いた包帯の匂いをかぐわしそうに嗅ぐ仕草はなまめかしい。

ぺろりと少女や少年の血を舐めて見せる。「犬頭鬼や純魔族の血ってどうしてこんなに美味しくないのかなぁ」「ふざけんな。桔梗姉ちゃん」「いや、ホントに死ぬかと思った。ドラゴンだよドラゴン。人間がドラゴンになったんだよ?!」必死で叫ぶ少年と白いもふもふ。現在後者は少女に捕縛されている。

「信じろって言うほうが無理だよねぇ」犬頭鬼はため息をついた。

数と卑劣な戦いを是とする犬頭鬼は個体能力に劣る。犬頭鬼、シロは比較的優秀なほうだがドラゴンは手に余る。

「まぁ俺がばったばったとぶっとばして」「ぶっとばされたじゃん」この二人のやり取りはいつもの事なので桔梗は相手にせず、寡黙な少女の瞳を見る。この吸血鬼、ある程度なら他人の表層心理を読むことが出来る。

「そのドラゴンの話は皆には手が余ると思うから言わないけど」

そういって桔梗はじろりと少女を睨む。少女は相変わらず言葉を出せないでいる。


「むかつく」「???」


 ぷうと頬を膨らませて見せる桔梗に沈んだ顔をしていた少女は不思議そうに眼を見開いた。

「勇征君、長い付き合いの私に挨拶一つもしないってどういうこと?!」「……」「いや、桔梗姉ちゃんに遭ったら弄られるもん」「否定しない」「桔梗様、お言葉ですが勇征様にも勇征様なりの事情が。そもそも最初から死んでいるじゃないですか。慌てて逝ったら会えないかと」矢張り死族は変わっている。

「あ~も~! 最後にちゅーくらいしてあげたのにぃ~!!!!!!??」

いきなり後ろに倒れ、ばたばたと手足をソファにぶつけて悪態をつく桔梗に四人は冷たい瞳を向けていた。吸血鬼の口づけなど欲しくない。

普段躯が埃一つ無いよう心掛けている桔梗の部屋だが、流石にソファを叩けば多少の埃は出る。

「だいたい長い付き合いなのに人の命を狙ってきたり、苛めたり、一回だって艶やかなシーンなかったじゃないのぉ?!」こんな歳だけ余分に取った子供の相手は嫌である。

「勇征様って噂に聞くカタブツだったしな」「なんかすっごく理解出来た気がする」

「あ~んなことやこーんなことだってしてあげたのにぃ?!」「こほん」躯が流石にわざとらしく咳払い。

ちなみに躯は一応呼吸している。しなくても生きられるが。

「命狙われるって何したんだよ。桔梗姉ちゃん」先ほどの泣きまねも忘れてけろっとした表情でとぼける桔梗に少年も呆れる。

「まぁ色々と」「お二人が今の御立場になられる前は色々あった模様です」魔茶を淹れていた躯の手が止まる。次に続く桔梗の発言の所為だが。

「ああ、そうそう。忘れていた」しゃあしゃあと吸血鬼の少女は告げた。


「子供と女は魔都から出ろって言われてたっけ。もうすぐ人間の総攻撃が始まるから」


 三人の血の気が引いた。

なんでも『隕石雨』の効果で崩壊する城壁を遅延魔法で崩壊を無かった事にしておいて勇者を葬る罠にしたのは良いが勇者が何故か生きていたそうだ。

「桔梗様。そういうことは」「だって皆寝てたも~ん。私の所為じゃないもーん?! 」苦言を放つ躯に見苦しい言い訳をする桔梗。

「俺たち、死んだかも」「だね」「……」少年少女たちはお気楽な吸血鬼の少女に幾分救われている自分たちを少し幸せと思う余裕が出ていた。

「でも、あのオズワルドが変化した竜ってなんだったんだろう」少年はひとりごちた。

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