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世界の謎

「ねえ。本当にこっちでいいの」「間違いない」「信用しないほうが良いよ」


 三人は小さな通気口から這うようにして進む。

少年曰く『城だの城壁ってのは抜け道があって当然』らしいが。

「また迷ったんだね」白い毛がすっかり埃まみれの犬頭鬼に純魔族の少年が食ってかかる。

「ま、ま、まさか。暗殺や諜報を得意とする純魔族ダークエルフが魔王城下の抜け道で迷う筈がないだろう」「迷ったんだよね」「……うん」

少女が追撃をかけるとあっさり少年は認めた。三人はため息。

そして埃を吸ってしまい口元を押さえる。

人間より鼻の利く純魔族や犬頭鬼だが彼らは悪臭には強い。

「とりあえず外に出ようよ」「出れるのかな。ずっと通気口で暮らして飢え死にとかしたら桔梗さんはとにかくゆうちゃんは見つけられないと思う」「うげ。桔梗さんってあの吸血鬼だよな。あの人ちょっと苦手なんだよな」

桔梗曰く、『昔の友達に少し似ている』ということで女装させられるらしい。

「そもそも最強種族が多すぎないか。魔族」お前が言うな純魔族。

「鬼族は数も眷族も魔力も体力も申し分ないね」一応、餓鬼や犬頭鬼も眷族に入っている。

「俺たちは魔力と隠密と異能の力が強いけど純粋な意味での繁殖力が無いからなぁ」

「ゆうちゃんたち死族も強いじゃん」「うーん。死族は圏外。きりがない。ジャック・オ・ランタン族とかもう無茶苦茶だし」

「そもそも殺されても生き返ってくるし」「まぁそうだけど」

「吸血鬼って死族じゃなくて鬼族だって桔梗さんが言ってたけど」「ああ。でも鬼族は認めていない。本体が『反魂樹』って植物みたいなものらしいから」「反魂樹は心臓の位置から神経の代わりに体中に根を張っているらしいんだ。そこを木の杭で突かれると吸血鬼は死ぬって爺ちゃんが言ってた」

犬頭鬼の繁殖力は恐ろしく強いので『爺ちゃん』は何人もいる。

純魔族や犬頭鬼は基本として特定の番を持たない。


「神族っているけど」「ニンフは名前だけだぞ。あいつら数しかいないし。ニンフは魔族の中でも数だけなら多い。魔都でも一〇人に一人はニンフだ。

……神族って言ったら憎ったらしい妖精族のエルフもそうだな。あと上位巨人族とかも」

「ニンゲンの王族は神族の血を引いているって自称しているね。皆」

白い毛が今は埃まみれの犬頭鬼が補足説明する。それは少女も聞いたことがある。

「黒髪黒目の半妖精も神様の子供っていうよ」「それはデマだろ」

「珍しい力を生まれながら持っているけど実用に足るほどじゃないよ」


 埃まみれになりながら雑談ダべリングで不安を潰して前に進む三人。子供の割に立派な態度である。

「ねね。ニンフさんなら一人知り合いがいるけど」「うん? 」「しゃべってないで前に進もうよ二人とも。こんなところで飢え死になんて嫌だよ」


 少女はかねてからの疑問を二人にぶつける。

「ニンフさんって金髪の綺麗な女の人ばかりじゃない。男の人は? 」「……」「……あれ?」


 少女の指摘に動きが止まる二人の魔族。

「いない。そもそもニンフとの子供は昔から神性が強まって強い子が出来ると」「昔のニンフって魔族のなかでも奴隷みたいなものだったらしいよ」

「じゃ、ニンフさんって他の種族の男の人と結婚してニンフさんが生まれるの」「な、ワケあるか。ニンフの子供は昔から優秀な子が生まれるって……」「あれ? おかしいよ。ギンカ」

青ざめる魔族の少年に何故気づかなかったんだという表情を浮かべる犬頭鬼。そこに少女の声が重なる。

「知り合いのニンフさんが言うには優しいお母さんだったって」

「あいつら、どうやって増えているんだ?!!」

少年の声が狭い通路に響いた。

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