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岩の涙

 大柄な体に剣が突き刺さる。勿論少女の命を奪うほどの力はない。

岩で出来た身体は剣を弾き、酸を含む血はその剣を溶かす。

少女は泣いていた。意味も分からず悪意を受けて泣いていた。

さらりと金色の光が少女の瞳を焼く。まぶしい光は美しい女性の髪であった。

「一緒にくる? 」差し延ばされた細い腕。細い指は折れそうなほどに細くて頼りないのに。

「うん」少女はその手を取った。予想通り手折りかけたが。


「お義母さん」「ちょっと。いい加減歳を考えてね。私の腕がちぎれちゃう」


 かつての少女は立派なトロールになり、

今だ母と慕われている所為で彼氏に逃げられると悪態をつくニンフと共に生活している。

「というか、私はまだ処女なのよ?! せめてトモダチ、同僚と言ってほしいわ?! 」叫ぶ義母に呆れる鬼族の娘。

「私もなんだけど」義娘が呟くと冷たい瞳を鬼族の少女は向けた。

鬼族の少女は普通に六尺近くある。

非常に見目麗しい容姿なのだが却って迫力があって怖い。

実際、彼女に世話される魔軍の兵士たちは『鬼みたいに怖い』と言う。まんまだ。


「ちょっと。いい加減にしなさいよ」「この縫いぐるみ可愛いっ?! 」「悪くはないけど、私縫えるよ」「えっ。縫って縫ってッ 」


 非番の日は三人で繰り出して遊んでいた。

赤十字軍と呼ばれる治療、応急処置専門の前線部隊は新設されたばかりだがその軍功は華々しく敵も味方も負傷具合のみで判断、治癒し、多くの命を救った。

鬼族やトロールの少女たちは前線で思わぬ活躍をした。ニンフの女性の高度な治癒魔法もそうだ。


 人間が空から降ってきた。

大きな布を閃かせ、輝くように舞い降りるニンゲンたちは仲間たちに暴虐の限りを尽くして消え去った。

魔軍の後の解析では帰属系の呪術をかけられた人間の犯罪者たちで構成された部隊だったそうだ。


 少女は泣いていた。

剣の通らぬ身体を呪って泣いていた。

酸で出来た血と涙を流し、動かぬ友たちを想って泣いていた。

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