魔将・由紀子様。風のシルフィードを撃破!
『本日正午の戦いの城壁側防衛線において風のシルフィード様負傷』
『海軍壊滅的損害を受けるも敵海軍を殲滅』『新造中の新型艦船のドッグは奇跡的に無事』『勇者たち六名中、無能、戦士、忍者、僧侶の死亡を確認。残すところあと二名。魔導士、万能のみ』
『魔王様激loveにゅーす』を手にして一喜一憂する人々だが新刊の到着が遅い。情報も入ってくるのが目に見えて遅くなった。
騒がしい『子供たち』の姿が激減してしばらくたつ。
無邪気なふるまいに反して味方すら粛清する冷酷さを持ち、
不死身の身体で魔族の将を散々悩ませた『忍者』が死んだと言う吉報が届いたがそれを成した勇士が誰かという話は聞かない。
一説ではサラマンダーの副官でもある『子供たち』の一人、
『英雄ミリオン』であるとされるが彼の所在もまた不明である。
「で。由紀子はなぜシルフィード様を敵の『魔導士』と討ったんだよ」
眼鏡をかけて『魔王様激loveにゅーす』を読む犬頭鬼に問う魔族の少年。
「うん。シルフィード様が引き起こした風でスカートをめくられて思わず二人で殴り掛かってKOさせたと記事にある」「相変わらずこの記事は出鱈目だらけだな」少年たちは嘆息した。
『魔王様激loveにゅーす』はエルフの変異種、『子供たち』が趣味で運営する情報チラシである。
その記事の大半は面白半分かついい加減な憶測と誇張で成り立っており魔族の皆はその内容を完全に信じているわけではない。
しかし、現場記者が見聞きした事実は、紛れもない真実であったりする。
何をやっている由紀子。真面目に戦え。