お前の話、真面目ぶって超キモイ
話変わって簡単にこの世界の地図を説明する。
二つの大陸、その二つを結ぶ一つの都市国家。
これが人類が支配する領域である。
我々の世界で言えば逆さ向きのアメリカ大陸とユーラシア大陸のような形状に近い。
この都市国家北側の巨大な島々を『魔族』と呼ばれる雑多な種族たちが支配している。
特に巨大な島は魔国と呼ばれる魔王が支配する国となっておりマトモな人間は近づくことはない。
と、いうのも魔族と呼ばれる一族は人間を食べるという厄介な特性を持っている。
彼らとて心があり、愛を知り、夢を抱く知的生命である。
で も 人 間 を 食 べ る 。大事なことだから二度でも三度でも言う。
彼らは人間の生肉を食うことで精気を取り戻したり、脳髄を喰らうことで経験を奪ったり、生き血を啜ることで魔力を回復する能力を持っている。
反面、繁殖力に欠け、子供を大事にし貞淑な性質を見せる。
男女共に数百年単位で純潔を守る個体はそれほど珍しくはない。男性は別の意味が多いが。
大雑把に人間は自らの敵対種族たちを十把一絡に『魔族』と呼んでいるが魔族の中にも様々な種族がいる。
代表的で最も人間に身近な存在である餓鬼族及び犬頭鬼は繁殖力が高く数年で肉体的に成人する特性を持ち、前者は卑怯、後者は卑劣を是とする種族である。
長ずれば高い知性を持ち得るがそこまで長生きする個体は珍しい。
長じた個体で言えば前者は毒をあえて摂取して楽しむなどの不可解な文化を持ち、
後者は困っている人間の仕事を勝手に手伝って意趣返しする妙な趣味を持つ。
彼らは鬼族の一員であり、暗闇での完全な暗視能力を持っており、身体は小さいが力は強い。
後者は力は餓鬼族に対してやや弱めだが敏捷性に優れる。
付き合ってみると中々ユニークで飽きない奴らであるが、真面目な人間とは反りが合わない。
魔族は多種多様な種族と形態を持つ。
神の直接の子孫とされる上位巨人族や神の瞳の落とし子とされる単眼鬼率いる巨人族が筆頭。
餓鬼族や犬頭鬼を支配する鬼族。名前だけは神の一員であるニンフ。エルフによく似た容姿を持つが別種族である魔の申し子純魔族。雑多な種族を持つ水棲魔族(生存区域の都合で空を飛ぶものも含まれる)、猫に犬に鼠に虎などなどの獣と人間の双方の特徴を持ち雑多で纏まれば相当な数になるはずだが村々単位で種族が違い、人間と獣の混合比も違うため全体では一度もまとまった事の無い獣人。取り敢えずカテゴリ分けも面倒な(ひどい)魔法生物たち。そして死族が代表的な魔族であろうか。
別格の存在として竜族がいる。
一応魔族だが魔王の指示にすら従わない。個をもって王とする。
多数の眷族を保持し、竜の一族ではない者達も自由を求めて彼らの眷族に参加している。
魔国本拠地、魔王城の喉元と言える魔竜山脈を本拠地とする。
魔王を廃する権利を持つ議会派の後ろ盾でもある。
厳密に言えば魔族ではないのであるがエルフやドワーフと呼ばれる雑多な妖精達の中でも特に有名な一族も魔族領域に多数存在し魔王に忠誠を誓っている。
彼らには本来独自の王族がいるのだが人間の勢力拡大により中央大陸側では生活しにくくなり安住の地を魔族の地に求めてやってきた。あるいはもとより住んでいる。
前者は神の末裔とされており、基本的に魔王すら細かいことは指示しない。
独自の判断で行動しているが義と正義に厚く、魔王を裏切るようなことはしない。
逆に人間の世界に住んでいるエルフは人間と魔族との戦いに不干渉を貫いている。
エルフの変異種は特に『子供たち』と呼び、幼児の姿と驚異的な運動能力、理不尽な強運、ある種の予知、生まれながらに忍びの技を持つ。
エルフとは違った独自の文化を持つが、基本的に人間や魔族と共に生きる。
東方では『ザシキワラシ』とも呼ぶ。
ドワーフの変異種は六尺を超える長身と端正な容姿、
圧倒的な武勇と確かな技術を誇る。ドワーフ巨人と俗称される。
こういった人間たちが『魔族』と呼ぶ者達の中でも『死族』は謎が多い種族である。
独特の感性を持つ魔族たちの中でも『変わり者揃い』と言われており、実態を把握するものは更に少ない。
生死の法則に反して存在する彼らは神の加護を得ることは出来ず、滅せばすべて地獄にて焼かれる定めとされるが死後の世界など誰も見たことが無いのでハッキリ言って不明なままだ。
しかし死族の中には見てきたものもいるらしい。やっぱり死族は変わっている。
この物語はそんな死族の連中と一部の人間の捕虜たち、魔族言うところの『血袋』が織りなす奇妙なお話である。
やっぱり死族は変わっている。