イモン試合は地獄試合
「と言う訳でウンディーネよ」「はっ」
魔王の私室にてその会話は交わされる。
「早速だが由紀子を招いて慰問試合と言う物を行おうと思う」
由紀子曰く。親を失った子供を勇気付けたり希望を失った老人を楽しませたりするために行うものらしい。
「先日の『くりすます』は失敗に終わったからな」「ええ」苦い経験である。
二人は先日の『くりすます』を思い出した。
夜空をかけるトナカイのソリの代わりにデュラハンの首無し戦車を用いたイベントだったが。
「ある意味成功してはいるのだが。ヤツらのお蔭で魔族の子供たちは三倍勉学に励むようになったからな」「確かにそうですが。畏れながら彼ら的に不本意のようです」
「ところで『イモン試合』と言うからには派手な召喚魔法で異界からの」「高度な術が必要ですね」「由紀子の帰還も試せるかもしれん」
二人は複雑な思いを浮かべた。折角仲良くなれたのにとか。
「召喚魔法と言えば魔王様の独丹場ですが、ここは派手に伝説の魔『オキニイリハズシ』を呼ぶとか」「それもよき案だ」
慰問と言う言葉が理解できていないぞ。二人とも。
「ではイモン試合を開始します」「嫌です」『主賓』と書かれた札を体に張られて不機嫌極まりない女子高生はそう答えた。
早くも会場には海軍所属のゾンビにスケルトン。デュラハンに水棲魔族と魔王軍第一軍団が誇る精鋭たちがそろっている。
観客席には昨日自害を予定していたが延期する羽目になってしまった魔族の御老体(見た目は若々しい)達に孤児たち、紛れ込んだ『子供たち』。
「では、魔王様の召喚生物達と第一軍団の『(殺)シアイ』を行います」
「あの」由紀子は鼻と眉間に皺を寄せてつぶやいた。
「また何か勘違いされていらっしゃいませんか」
今更何を。
ちなみに試合自体は引退魔族たちも参戦するほど盛況で魔族的に楽しいイベントとなったことを付け加えておこう。
「決めたッ 現役復帰じゃぁ! 」「カッコいいオジサマ! 結婚してッ 」「お前は子供だろう。あと400年は待てッ 」「サインくださいッ お爺さんッ 」「魔王様ッ 魔王様ッ 魔王様ッ 」「ウンディーネ様に栄光あれッ 」