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異世界バスケットボール 魔王様激love!  作者: 鴉野 兄貴
キューギって超わけわからない
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福祉介護施設。できました。

「大変! 今夜は由紀子ちゃんが泊まりにくる! 」

思いっきり化粧してウキウキで今夜のお泊りに臨んだ水魔将は。

「もっふもふも~」自室の扉を開けて固まっていた。


 水魔将の整った形の小さな唇が動く。

「どうして魔王様が私の私室に」「これは極秘会議だ」

キリリとした表情を浮かべた魔王ディーヌスレイト。しかしその相貌はすぐに崩れた。

「もっふもふ♪ もっふもふ♪ ふっもふも~! 」

由紀子を抱きしめ、髪の手触りを頬ずりで味わいまくる魔王。

水魔将は一瞬本気で魔王打倒を考えたが由紀子の前なので必死で自制した。

「がーるずとーくという奴だ。お前の妹と水奈子、デュラハンの処のあの子も呼んでいる」

真面目ぶって話す魔王だがよだれが垂れている。よだれよだれっ?! 興奮しすぎッ?!


 今回の水魔将の『反乱おとまりかい』を聞いた竜族と議会派は議会収集を策謀し魔王廃位を図るわけだが、その発端は一言で言うと親子喧嘩であった。何故に親子喧嘩?!

その理由は魔族の文化に由縁する。由紀子は人間である。故に魔族の文化をあまり理解できていない。

魔国に所謂福祉施設の類が無い事実に気づいた由紀子は義父にどうしてないのかを尋ねたところ。


「不要だ」即答で帰ってきた。


「だって、御歳を召したかたはどうされるのですか」「死ぬ」

「だったら、必要じゃないですか」「戦えない魔族は誇りをもって自害するのが定めだ」


 これを聞いた由紀子は大いに怒りの声をあげた。

「お二人は恩人なのですッ もし、ノームさんやガイアさんがそうなったら、私が働いて養ってあげますッ! 」と。

「由紀子」「なんですかっ?! 」「私の年齢を言ってみろ。ガイアでもいいぞ」

「五五五歳とさんびゃ……」背後でニコニコ笑うガイア。

魔族とはいえ女性の年齢を聞いてはいけない。


 一〇〇年を待たずに老衰する由紀子が彼らを養える時間など限られている正直意味が無いほど短い。

そういって呆れる土魔将に更に怒る由紀子。そうして義親子喧嘩の末由紀子は土魔将の部屋を飛び出し、親友の水魔将の部屋に転がり込んだわけである。

「たかが一〇年二〇年。最も輝かしい時間を動けぬ戦士に使う? 意味が無い妄言だ」そういってため息をつく土魔将だったが。


 炎魔将は大いに感動した。

「良い義娘ではないかっ?! 嫁にくれっ?! 」「嫌だ」

土魔将はそっけない。

皮肉屋の風魔将も内心『愚かかも知れぬが良い娘だ』と思った。

「お前にもやらん」「ケチ爺」娘心は理解できないがいい義父である。


 魔族というものは男女共に戦いの能力に秀でている。

また多くの魔族が老化そのものと無縁である。

老化をする珍しい種族でも現役引退をすれば喜んで一兵卒に戻って戦って死ぬ。

というか、魔族は一般的にデスクワークを嫌がる。普通に引退を心待ちにしている。


 回復魔法のあるこの世界において『死ぬまで戦う』ことはそれほど珍しくない。大抵の傷は治せるのだから自然そうなる。

人間が犯罪者予備軍として孤児院と言う名の収容施設に放り込む孤児たちの扱いだが魔族はもともと繁殖力が低く、子供を大事にする傾向があり、身寄りを無くした子供は手厚く皆に育てられる。

そんな風習があるからこそ由紀子もノームの義娘になったのである。

同様に保育園などの概念もない。魔族の娘たちは他所の子供でも喜んで育てる。それこそ取り合うように。

障害者という概念もない。魔族には生まれない。

そもそも種族差は多いが個体差があまりないのが魔族である。

結果的に福祉介護の概念が無い。ただそれだけなのであるが。


「私は、ノームさんやガイアさんが戦えなくなったからといって自害するなんて許しませんッ 」


 涙を流して怒る由紀子と何故義娘が怒るのかサッパリ理解できない魔族のノーム。

結果的に由紀子は「今日はうんでーねさんの部屋に泊まりますッ 」と宣言して出て行ってしまった。多感な娘らしい反応である。

しかしノームの反抗期は何百年以上前にとっくに過ぎており、そんな感情を理解できない。義理とはいえ父親としてそれってどうなのだ。


「ノームさんのばかっ! 知らないッ 」


 小さい身体を震わせて怒りを示す由紀子に水魔将と魔王は萌えていた。

水奈子ことセイレーンとデュラハンに仕える血袋の子供は苦笑い。お互い面識がある。

怖ろしい魔王とその側近たちと聞いて今夜こそ血を絞られて死ぬのだろうと彼女は思っていた。

実際、デュラハンはそれこそ実の娘を送り出すかのようにアレヤコレヤと持たせてくれたし最後の晩餐のごとく彼女が食べたこともないような御馳走も作ってくれたし。

鎧姿の首無し騎士が自分の生首を間違えてフライパンに置いてしまうのはどうかだが。

何より鎧姿の首無し騎士がフリフリエプロンと言うのは中々見られない姿だ。


 そうして豪華な衣服に身を纏い、血袋として捧げられる自らの運命を思っていた彼女は。

彼女の主であるデュラハンの親友の妻で面識のある水奈子はさておき、

実際に目にした『魔王』に『水魔将』を見て思った。威厳の欠片もないと。

『土魔将の娘』に至っては彼女と同じ血袋にしか見えない。どうなっているのだろう。


「しかし、弱きものを一括して管理するというのは面白い制度だな」「管理? 」


 由紀子は首をかしげる。魔王はまた何か勘違いしているようだ。

「そうね。そこの血袋」ウンディーネに声をかけられて硬直する少女に水魔将は問う。

「貴女の国ではどうだった? 」と。

少女は言葉少なに戦えない老人や傷病軍人、障害者や子供がどうなっていくかを彼女の知る限りの知識で答えた。

「もったいない」「もったいない」「もったいない」

三人の魔族は即答で人間のやり方を非難した。

その姿に人間の少女は衝撃を受けた。

人間より魔族のほうが仲間を大事にするのだと。


 がーるずとーくは進む。

こうして戦闘能力の衰えた老人を含め孤児や一時的に子供を預かる為の施設の増設が決定した。我々の感覚で言えば老人ホームと孤児院と保育園を混ぜて職員はいるもののの基本は相互に面倒を見る施設になる。混ぜるな危険。


 少女たち人間二人はこう思っていた。

「福祉施設を作ろうとするなんて魔王様はなんと偉大なのだろう」と。

魔族とは人間以上に仲間を大事にする種族なのだと。


 しかし魔族三名の本音というか意見はこうである。

「魔力の源である血袋をあえて弱らせて放り捨てるなんてもったいない」

やはり、人間と魔族は相いれない。

(※ ニンゲン社会における孤児の扱い及び孤児院に対する認識はこの世界における扱いです)

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