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 新学期…張り出されたクラス割の自分のクラスのメンバーを確認したとき、こんな事もあるのかと漠然と思った。


 私の名前は佐藤優姫サトウユウキ

 私の名前の一つ前に書かれている人物は佐藤裕樹サトウユウキ

 常々、私の名前は字画数が多くて記入するのに時間がかかるし大変だと思っていたのだが、彼の漢字もまた面倒くさそうな字である………じゃなくって!


 先生~、クラス分けどうにかならなかったの?

 よくある名字によくある名前だから同姓同名になる確率は普通の人より高いのかも知れないけれど、これじゃぁ授業で困るじゃないか。


 「サトウ」とか「ユウキ」って呼ばれて彼でしたとかだったら嫌なんだけど?

 これから一年もやもやしながら授業を受けないといけないんだろうか?

 新学期早々なんてついてない・・・。

 とりあえず、私は教室に入って席を確認しておくことにした。


 1年は3F、2年は2F、3年は1F。

 クラスは一学年ひとがくねん6クラスで、昇降口横の階段側が一組で一番奥が6組。

 一番奥のクラスになった人は不憫だ。

 去年も何人かみかけたけど、家をギリギリに出るやつは遅刻との戦いがまっている。

 今年はもっと増えそうだなぁ。その代わり、売店が近かったりはするんだけどね。


 私のクラスは2Fに上がって3つ目。

 座席を確認すれば、2列目の一番後ろだった。

 いつもだいたい2列目の真ん中あたり、下手したら最前列なんてこともあるのでラッキーだ。


 席について少しすると友人達が入ってくる。

 彼女らは登校してくる時間が一緒だ。通学方面が同じとかうらやましい。

 私真反対なんだよね。


 「 おはよう 」

 「 ゆうきー おひさ!! 」

 「 おはよう。

   さくらにまなみ、久しぶりー 」


 かわいい声がさくら。 明るい声がまなみだ。

 声じゃわからんって?

 容姿の説明苦手なんだけど・・・。


 えーと、さくらはショートだけど、雰囲気がふんわりほんわり。

 まなみはロングでポニーテール、明るく快活な感じだ。

 髪はどっちも黒い。

 さくらは若干茶色っぽい気がしないでもないけど、染めてる茶髪と比べるとね…地毛だから黒く見える。


 「 春休み遊べたらよかったのに 」

 「 しょうがなかろう? 春期講習が県外だったんだから…

   文句なら私が通ってる塾に言え! 」


 あと発展してそうで、都会と比べれば田舎なこの市にとかな!


 「 今年も同じクラスになれて良かったね 」

 「 ねー 」

 「 うん、それは思う 」


 「 何? なんか含みのある言い方は 」

 「 いや、前の席の人でちょっとだけこの一年が憂鬱なだけですー 」


 ちなみに前の席の人はまだ来ていない。


 「あ、そっか。 災難だねー…って言ったらこの席の人に悪いか 」

 「 うーん……今日からゆうきのことなんて呼べばいいんだろう? 」

 「 いままで通りでいいじゃん。 性別違うんだし、区別つくでしょ 」


 「 せっかくだから、この際あだ名つけちゃえば?

   今後も同じようなことはありそうじゃない?

   サトウもユウキもよくある名前だしさ 」

 「 えー。 あだ名ってなんかよくない予感しかしないんだけど・・・ 」

 「 そりゃぁ、ここはもちろん姫でしょう! 」


 「 いや! 絶対嫌!! 」


 名前をもじったのは分かるが、こんな性格の私にそんな可愛らしいあだ名なんかつけるな!


 「 えー 」

 「 かわいいのに・・・ 」

 「 可愛いからいやなの! 」


 「 じゃぁ、プリンセス! 」

 「 そこから、は~な~れ~ろ~~ 」


 「 シュガー・・・ 」

 「 それじゃぁ呼びにくいでしょうが!

   しかもなんで英語!?」


 というか、さくら・・・佐藤=サトウ=砂糖=シュガーって・・・


 「 わがままだなぁ・・・ 」

 「 あのね、普通の候補をあげてくれる? 頼むから 」

 「 えー上げたじゃん。一番最初に! 」

 「 最初だけだろうがっ! 」


 「 うんと、優しいに姫だから、やさ姫 」

 「 姫がつくから嫌だー 」

 「 いいじゃん、やさ姫 」


 「 えー? 」

 「 やさぐれた姫で、やさ姫。

   ほら、あんたにぴったり 」

 「 うっさいわ! 」


 「 けってーい! 」


 あ、突っ込んだせいで否定しそびれた!

 くそーっと思っていると、前方よりクククッ・・・と抑えた笑いが聞こえてきた。

 男子らしい低音のそれに視点を若干上にあげると、整った顔立ちのイケメンが目に入ってくる。

 一目でそれだと分かるほど明るい茶色の少し癖毛で柔らかそうな髪。染めてるのか?と疑いたくなるけど、肌が女子の私から見ても羨ましいぐらい白いので、単に色素が薄い人なんだと思う。日焼けしたら大変そうだから羨ましくても欲しくはないけど。

 笑っておいてそのまま座るのは気が引けたのか、彼は目じりが少しだけ垂れた茶色の瞳を私に合わせると、 


 「 同じ名前で前の席の佐藤祐樹です。 よろしく、やさ姫さん 」


 見た目通りの柔らかい笑顔で挨拶してきた。

 うん。嫌味なんてものは一匙ひとさじも入っていなかった。

 軽い冗談。


 だけど、そんな彼の笑顔にここでムカっときた私は、どうせやさぐれてますよ!!


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