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東方鏡霊記  作者: 雪代
8/20

動物王国幻想郷第一話 やっぱり犬より猫派? 猫より犬派?






 夜。

 世界が闇に覆われる時間帯。

 今日の空は雲が多く、月も見えない完全なる暗闇の世界。


 妖たちが時間。


 そんな時間に、一人の少女が闇の中を歩く。

 カラン、コロン……と下駄で歩く音が周囲に響く。

 けれど、その音を気に留めるものもいない…………ここは狭間の世界。

「…………ふふ」

 ふと、少女が苦笑する。少女が見上げた先には闇の中にあって尚黒々と異彩を放つナニカ。

「…………うん、そっか。キミも…………」

 物言わぬソレに、少女が一人話しかける。

「…………そっか、そっかあ。うんうん、いいね。キミのその素直さは中々に気に入ったよ……だから」

 ニィと少女が悪戯っぽく笑って。


「存分に満たすがいいよ。自分が存在するその意味を」






 朝起きると霊夢が猫になっていた。

「にー」

「なにこれ可愛い」

 隣でそう呟く縁の言葉に苦笑いする。

 体長三、四十センチほどの大きな猫がそこにいた。いや、正確には霊夢に猫の耳と尻尾を生やしたみたいな生き物。

 朝早くから境内を掃除しているはずの霊夢が今日に限っていつになっても起きてこないので不思議に思って様子を見に来ればこんなことになってるとは。

「すっごくおもしろ……ゲフンゲフン、大変なことになってるねえ」

「本音が洩れてるよ、縁」

 人差し指で小さくなった霊夢の頬をつつく。ふにふにとして気持ち良さそうだが、霊夢は嫌そうに顔を振る。

「これどうなってるの?」

 存在情報からして霊夢本人なのは分かる……けど。

「縁から見てどんな感じ?」

 鏡界操作能力者は一目見たものの情報を手に入れる。だからボクには分からないことも分かるはず、と思い縁に尋ねるが。

「ぷ……くす……くす……」

 笑っていて返事がない。と言うか、明らかの状況を楽しんでいた。

「はぁ…………」

 憂鬱だ、と内心呟く。だってそうではないか、幻想郷のパワーバランスを調整する博麗神社の巫女がこんな状況だなどと言えたものではない。

「ってあれ……? 猫耳……尻尾……?」

 前にどこかで同じような光景を見た覚えが……。

「三人とも、どうしたってんで……す…………か」

「あ、タマちゃん」

 襖を開けて入ってきたのはタマちゃん。そしてそ視線が霊夢へと注がれ…………。

「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

 たっぷり十数秒沈黙を保ったまま硬直しているタマちゃんに、笑いを堪えながらボクはそれを見守る。

 そのまま一分以上たって、ようやくタマちゃんが顔をこちらに向ける。

「こ、これって……」

「うーん、キミの時とは違うっぽいよ?」

 言いたいことは何となく分かったので、そう返しておくと、縁がああ、と一つ手を叩いた。

「そう言えばタマちゃんって猫に憑り付かれたんだっけ?

 縁はボクの記憶持ってるから、当然知ってるわけで、けれどそれを知らなかったタマちゃんは顔を引き攣らせている。

「な、なんで知ってるってんですか!?」

「僕は梗の記憶も持ってるからね」

 正確には、縁が持ってるんじゃなくて、鏡界に記憶されてるだけだけどね。

 だから、縁はあの時ボクが抱いた感情までは知らない。

「と言っても、ボクから見たタマちゃんの様子は全部記録されてるんだけどねえ」

「んなっ!?」

 ボクの言葉に赤面するタマちゃん。まあ色々と恥ずかしい部分もあったしねえ。

「って、んなこったどうでもいいってんですよ!! これ、霊夢どうなってるんってんですか!?」

 羞恥心が限界に来ていたタマちゃんが、咄嗟に話題を摩り替える。

 ん……まあいいか、今回はこのくらいで、可愛い顔も見れたし。

「…………ん~。どう思う、縁」

「なんか変な影響受けてるねえ…………憑依された、っていうよりは何か能力の影響でも受けたかな?」

「人を猫耳にする程度の能力ってどんな能力?」

 そんな能力持ってるやついたかなあ……?

「とりあえず、原因が不明だから対処法も分からないねえ…………タマちゃん、霊夢を頼める?」

「梗様は?」

「他にこんなことになってる人たちがいないか探してみる」

「なら、人里は見ておくってんです」

 んー、霊夢のほうは縁もいるし、大丈夫か。

「じゃあお願いするよ」

 了解、とタマちゃんが頷くのを見届け、ボクは神社を出た。




 笑っては見たものの、実際博麗の巫女が行動不能と言うのは不味いので、ちょっと真面目に調べることにする。縁は怪しい笑みを浮かべて神社に残った。

 まずやってきたのは紅魔館。

 門のところにいつも通り美鈴が立っているので、降りる。

「やあ」

「あ、梗さん。おはようございます」

 今日は居眠りしていないようで、ボクに挨拶を返す。

 美鈴とは実は意外と交流があったりする。フランが外で遊ぶ、それにボクが巻き込まれる、そしてフランが美鈴を巻き込む、お互いに顔を合わせてやれやれ、と言う感じの流れでけっこう仲が良い。

「今日も妹様に御用ですか?」

 いつもの流れでそう尋ねる美鈴、お疲れ様です、みたいな気遣ったような笑顔は彼女の美点だと思う。

「いや、今日はちょっと違うんだよね、もう屋敷の住人はみんな起きてる?」

「お嬢様はまだ就寝なさっているかと、妹様起きていると思います」

「……んー、今日屋敷に変わったこと無かった?」

 ボクの抽象的な質問に美鈴が唇に指を当て首を傾げる。まあ仕様が無いよね、ボクだってこんな質問されたら首を傾げるだろうし。ていうか、そんなに傾けてよく帽子落ちないね。

「うん、じゃあ先にこっちの事情を説明しておくけどさ…………」

 そうして一通りの説明をする。

「そう言うことでしたか、うーん、私はあまり館の中に入らないので分かりませんが、朝一度入った時は特に変なことはありませんでしたよ」

「そっか…………一応館の中見てきて良いかな?」

「玄関に居れば咲夜さんが来てくれると思うので、そちらに聞いてもらえますか?」

 了解、と頷き門を潜らせてもらう。



「わふ!」

「うー! うー!」

「………………………………………………………………………………はぃ?」

 玄関を扉を開いた瞬間、目が点になる。

「……………………え?」

 そこにいたのは、頭を抱えてうずくまるレミリアと……………………犬の耳を生やし、体長三、四十センチほどまで小型化した咲夜。

「………………………………えー?」

 思わず頭を抑えてしまったボクだった。



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