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東方鏡霊記  作者: 雪代
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東方鏡霊祭EX五話 主人公だって、何度もトライして少しずつ進めているんだよ。つまり初見クリアなんて簡単にはできないってことだよ。

撃墜された魔理沙は神社に強制的に戻されました。

残念、あたなの冒険はここで終わりのようだ。






「スペルカード!」

 三枚目の符が破られたのを見て取った縁がすぐさま四枚目の符を宣言する。


 騎士「赤白ナイトの大戦争」


 宣言と共に二人の左右に現れた赤色と白色の数千にも及ぶ山のように中央が突き出す形で並んだ大量の弾幕に霊夢の表情が引き攣る。

 そして、その直後、左右の弾幕が互いが互いに向かうように同時に動き出す。

 その中間点にいるのは、霊夢。

「嘘でしょ!?」

 弾幕の量と言う意味では梗だってここまでひどくは無かったわよ、と内心呟きつつ回避行動を取ろうとして、唖然とする。

「どこ抜ければいいのよ!?」

 隙間など無いのではないかと思うほどに密集した弾幕は、最早壁と呼んでも差しさわりの無いほどのものだった。

 だが、縁は言った。自分と遊ぼう、と。つまり、これは遊びであり、弾幕ごっこに過ぎない。

 だとするなら避け方があるはずだ、避けれない弾幕など、遊びの中では無粋でしかないのだから。

 そうこうしている内に、左右の弾幕が迫ってきており…………。

「って、初見でいきなり分かるわけないでしょ、こんなの!! カード宣言!」


 神霊「夢想封印」


 発動したスペルが巨大な光の玉を生み出し、自身の周囲を回転して赤と白の弾幕を次々と消し去って行く。

 さっきも思ったが、どうやら梗と違って威力はそれ程でもないらしい

 けれど。

「数が多過ぎるわよ!!」

 焼け石に水。例え百や二百弾幕を消したところで、消した数の十倍以上の数が一秒ごとに増えているのだから意味が無いとしか言いようが無い。

「どうしろってのよこんなの!!」

 今使われている魔力弾だって自身の魔力を消費して撃つのだ、当然一個人が短時間で撃てる量には限りがある。

 だから霊夢はお札や封魔針と言った普段から霊力を込めて作った道具を使ってスペルカードに使う霊力を節約している。

 けれど、縁の魔力量は霊夢の比ではないらしい、中堅程度の妖怪なら干からびてもおかしくないほどの魔力を放出していながら、それでも顔色一つ変えないのは最早人間ではない。

 最悪の場合、梗と同じくらいだと考えないといけないのかもしれない。

「…………最悪過ぎるわね」

 自分で考えておいてなんだが、それは最悪過ぎる。もしそうだとするなら、この百倍の量の弾幕を張っても平気そうな顔をしていそうな気がするし。

 どうもこのスペルは防ぐよりも避ける方法を考えたほうが良さそうだった。

 となると……………………。

「ここね」

 スペル発動中に観察して気づいたこのスペルの逃げ場。

 気づいたのはふと縁を見た時。あの弾幕の壁は縁にも迫っていた。けれど縁は一切被弾した様子が無い。

 この弾幕が実体を持っていることはスペルで消し飛ばしていることからも分かる。

 そして実体あるからには、縁自身の魔力だとしても被弾しないのはおかしい。

 となると、何か被弾しない方法がそこにはある。

 そしてふと見たとある場所。そこに答えがあった。

「ちょうど、真ん中。赤と白の弾幕が最初に交わるこの境界線」

 そこが、このスペル唯一の逃げ場だった。




「あれ? 気づかれた」

 霊夢が弾幕が交わる境界で止まったのを見て縁が呟く。

 一見回避不可能のような弾幕だが、実は弾幕が交わる中央の境界左右二メートルくらいは結界によって視覚的に見ることはできるが、その実弾幕自体はその場には無い幻のような存在になってしまっていたりする。

 と言ってもその結界があるのは弾幕が最初に交わる場所だけで、後は普通に被弾する。

 山状の弾幕の突き出した場所は毎回変わるので、逃げ場も毎回違っている。

 まあ自身の場所は常にその結界が張ってあるので安全なのだが。

 けれど、まさかこの仕掛けに気づかれるとは……となると。

「なら次のカードか」

 さすが主人公。楽しませてくれる。

 内心呟きながら、そして次の符を宣言する。

「スペルカード」


 昇格「女王アリス」




 さきほどから思っているが…………スペルの宣言が早すぎる。

「まさに……遊びね」

 確かに攻略されたスペルをいつまでも使っていてもただの力の無駄であり、逆に隙を突かれてしまうことすらあるので、いつまでも続けるのは愚策でしかないことは分かる。

 けれど、だからと言ってスペルカードの枚数に限りがある以上、そうそう簡単に変えていてはすぐに全てのスペルが攻略され、負けてしまう。それでも彼女がスペルをさっさと切り替えている。

 つまり、彼女、縁にとって勝っても負けてもどちらでも良い、と言うまさしく遊びなのだろう。霊夢はこのことをそう結論付けた。

「気が楽と言えばそうだけど…………」

 なんか釈然としないわね、内心そう呟く。

 まるで自分との勝負なんてどうでも良い、そんな風に言われているようで、実際勝負を投げたような行動ばかりの縁に少しばかりもやもやとしたものが湧きあがる。

 もしかして…………舐められている?

 瞬間、もやもやは明確な怒りとなって自身を突き動かす。

 宣言と共に飛んでくる白い弾幕を避け、縁の元へと一直線へと向かう。

「っ!?」

 突然の行動に面食らったように縁が目を見開き。


「ざーんねん。これは耐久スペルだよ」


 投げた符が縁をすり抜ける。

 口元を歪めた縁が手をかざし。

王手チェック

 弾幕を射出した。




 自身の失策を悟った瞬間、霊夢の頭が急速に冷えて行く。

 そして同時に勘が囁き始め、それに従って弾幕を紙一重で避ける。

「この距離で外せるのかい?」

 目を丸くして呆ける縁の隙を見て、さっと後ろに下がる。

「まあ、そこも危険地帯だけどね」

 縁の視線がいつの間にかこちらを捉えており……そして咄嗟に浮かんだ危機感にさらに上空へと飛び上がる。

 瞬間。

 パァン、と言う破裂音がしたと同時にさきほどまで自身がいた場所に弾幕が広がっていた。

「昇格だよ? 赤の陣営まで届いたなら女王さいきょうに為って帰ってくるに決まってるじゃないか」

 縁の言葉通り、放たれた弾幕が背後の赤の弾幕が並んだ地点まで届くと同時に弾かれて自身の方向へと戻ってくる。

 そして、近づいた瞬間。

 パァン、パァン、と次々と破裂していき、その度に大量の弾幕を周囲の空間へと吐き出す。

「っ!」

 どんどん逃げる空間が削られていることに歯噛みしながらもそれでも勝算はあった。

 耐久スペルは、文字通り相手に耐久を強いるスペル、つまり時間経過以外では破られないスペルを指す。

 耐久スペルの使用中は皆方法はそれぞれだが、一切攻撃を受けない状態になる。

 だから耐久スペルを使用中は使用者は無敵と言っても良い。自分の「夢想天生」などがそれに当たる。

 けれど、その無敵具合から通常のスペルよりも時間が短いのもまた耐久スペルの特徴だった。

 基本的に耐久スペルの時間と難易度は反比例する。秒数の長い耐久スペルほどその時間の大半は非常に簡単な構成になってしまう。紫の「弾幕結界」のような最初から大量の弾幕を使っているのは、あれが最後の一枚、切り札と言っても良いスペルだったからだ。

 つまり、最初から全開に飛ばしているこのスペルは時間が短い……恐らく三十秒と無いはず。

「発動からすでに二十秒……後十秒くらいなら」

 こちらもスペルを一枚切ってしまえば良い。

「ざーんねん」

 そんな言葉が聞こえたのはその直後だった。




「大丈夫かなあ、霊夢」

 神社のお気に入りの縁側に座って、タマちゃんと二人過ごす。

 神社に強制送還された魔理沙から大体の話を聞いたけれど、ちょっと頭が痛くなった。

「大丈夫じゃねーですか? あれでも異変解決はかなりこなしてるってんですよ?」

 そう言う問題じゃないんだよねえ。縁も何考えてるだか……。

「タマちゃんも言ってたでしょ、縁は性格悪い……というか、人の心を掻き乱すからねえ」

 やっぱ十日じゃ分からないことも多いってことだよ。最近になって縁の知らなかった一面がたくさんあることに気づいた。

 まあそれは嬉しいんだけどねえ。

「あの子、何だかんだでまだ子供だからさあ…………そう言うのはどうなんだろうね」

 単純な弾幕ごっこなら経験キャリアのある霊夢が強いだろうけれど…………。

「計算高さなら、縁ってボクよりも……多分、紫より凄いからねえ」

 縁が何を目的としているのか分からないけれど、弾幕ごっこで勝ちたいなんて理由じゃないだろうねえ。

 もし本気で勝とうとしてるなら…………魔理沙に聞いたような遊ぶようなことはしてないだろうし。

「まあ縁だから最終的には問題無いだろうけど…………」

 少なくとも現状をぶち壊しにするようなことはしないだろうけれど。

「…………ホント、何考えてるんだか」

 目を細めてそっと呟く。

 ひょっとしたら、と言う想像はつくけれど、確証に至るほどではない。


 全く、ボクもまだまだだね……かあさん





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