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東方鏡霊記  作者: 雪代
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東方鏡霊祭EX二話 祭りってのは神様の遊び、神遊び、つまりこれは祭りなわけで。






「で、もしかしてさっきの衝撃が幻想郷にも行ってた?」

「はい……すげえ衝撃でした」

「あー、幻想郷全体に鏡界属性つけてるせいで位置情報がダブったのかな? 昔は私も手綱取ってたけど、もう全部縁の管轄だし、悪いけど縁のほうに行って来てくれる?」

「了解だってんです」

 ところで。

「そっちの二人はいい加減に落ち着きなよ」

「「はい…………」」

 全く、たかが男だと思ってたのが実は女だったのが発覚しただけなのに、そんなに驚くことかなあ?

「普通は驚くってんです。私も最初は男だと思ってたってんですから」

 タマちゃんもか……。

「それにしても、またこの世界を進まないといけないのね……面倒な」

 と霊夢が呟きながら先へ進もうとするのを。

「ちょっと待った」

 私が止める。

「何よ?」

「実はさ、今ちょっと力が上手い具合に使えないんだよ」

 能力で為っていた龍神ではなく、存在そのものが龍神になっている今は、以前とは何故か力を使う感覚が違っていた。幻想郷で起こったという爆音も、自分がここで力の制御を練習している時に起きた物だ。

「…………嫌な予感がするんだけど」

 さすが霊夢、見事な勘と褒めてあげよう。

「ちょっとスペルカードバトルでもして、私の力加減の調整に付き合ってよ」

「……………………」

 げんなりした顔の霊夢だが、こっちとしては本気出してもそうそうやられないって分かっている相手だからこういう練習に付き合ってもらっても安心できる。

「大丈夫大丈夫、ちゃんと遊び心も考えたスペルになってるから……多分」

「多分って言ったわよね、今」

「そっちの二人もどう?」

「無視するんじゃないわよ」

 懐から二枚のカードを取り出す。

「縁が思いのほかスペルカードルールに興味津々だったからそれに付き合って作ったスペルと今までに作ったやつの合わせて二枚でいいよ。そっちは何枚使っても良い、こっちが二枚使い切るまで耐え切れたらそっちの勝ち」

 本当なら十枚くらいやりたいのだが、多分それだけ提示したら霊夢が怒る、最悪タマちゃんと魔理沙に任せて帰る可能性もあるので、まあこれくらいならいいか……と思わせるくらいの数を提示。

「……まあ二枚くらいなら、そんなに時間がかかるわけでもないし」

 案の定というか、予想通りというか霊夢が乗ってくる。

「三人で来なよ? 今の私は…………加減できないからさ」

 それと、前回負けた復讐もかねておこうか。

「な、ちょ……」

 さあ。


「楽しくなってきた!!」






 まず最初のカード宣言。

「スペルカード」


 逆鱗「龍神激怒」


 八卦を司る程度の能力で生み出した八種類の弾幕をこれでもかというほど雑多に撃ち出す。

 完全にランダム……けれど、前回のと違って速度差はあるもののちゃんと視認できる程度にまで速度は落としてある。

 並みの人間ならともかく、霊夢や魔理沙、タマちゃんが避けれないほどの速さではない。

 まあ……それ単体ならね。

「速い弾幕を避けようとしたら、まだ遅い弾幕が残っていて厄介ね」

「けど、これくらいなら……」

「冗談じゃねえぜ、霊じゃねえんだからそうひょいひょい避けれるかよ!?」

 けっこう悪戦苦闘している三者……正確には二人だけど、きちんと避けている辺りさすがだと思う。

「おー、やるねえ…………じゃあ、もう一段階行って見ようか」

 さらに溜まった神力を込めると弾幕の速度が一段階変わった。

 この八種の弾幕の半数は遅く(ただし全部別々の速度)、もう半数は速く(先の同様)設定してある。そして力を込めるほどに遅い弾幕はさらに遅く、速い弾幕は速くなるよう術式を作ってあるので。

「さらに避けにくくなった!?」

「やべえってんです」

「おい、一番速い黄色の弾幕もう目で追えねえぜ!?」

 余裕そうだったタマちゃんですら目を剥いて弾幕を凝視している。

「カード宣言!!」

 さすがに耐え切れなくなって霊夢がスペルを宣言。


 夢符「封魔陣」


 霊夢の周囲にする退魔の法陣……けれど。

「それは悪手だよ」

「っ!?」

 退魔の陣、要するに魔を打ち払う概念を込めた結界を外に向かって広げるだけのものなのだが……。

「霊夢と私じゃ力の総量も違えば、スペルに込めた力も違う」

 つまり、霊夢の場合全力でやるくらいで無いと焼け石に水。大した効果も望めず……。

「スペルブレイク……だね」

 逆に霊夢のスペルのほうがあっさりと破られる。

「まず……」

「霊夢! スペルカード!」


 恋符「マスタースパーク」


 魔理沙が撃ちだした砲撃の光によって弾幕が片っ端から撃ち落されていく。

 攻撃こそ最大の防御と言うが……まさしくこの場面においてそれこそが正解だったりするのだ。

「守るんじゃない……逃げるわけでもない。全部撃ち落すくらいの気概で来ないとね」

 魔理沙のあの前向きな性格と、目標に向けてただ一心に動こうとする直向きな気持ちには感心させられる。

 だからきっと、この砲撃の光はとても綺麗で、そしてとても重いのだろう。

「うーん……これで一枚目のスペルブレイクかな……って、あ……」

 そろそろ一枚目も切り上げるか、と考えていたその時。

 力加減間違えた。

 切り上げるのだから、弱めないといけないのに、間違えた力を強めた……結果。

「「「うわあああああああああああああ」」」

 高速で過ぎ行く弾幕に三人が慌てふためく。

 タマちゃんは弾幕なんてほとんど見ていない、視界に映る影だけを見てほとんど条件反射的に避けているだけだ。

 霊夢は完全に勘頼り、それでも一撃ももらわないのはさすが過ぎた。

 魔理沙は避けるより落とすほうに専念し、なんとか被弾を防いでいた。

「おー、さすがだね、みんな」

 軽口叩きながらスペルを解除し、ようやく弾幕の嵐が止む。

「…………やばい、一枚目で後悔したわ。金輪際梗とスペルカードでやらないようにする」

 遠い目で霊夢が呟く。タマちゃんは荒い息を吐きながら、そんな霊夢の様子に苦笑し、魔理沙は地に膝を付き、それどころでは無い様子だった。

「じゃあ、二枚目ね……スペルカード」


 幻想「龍神白霊」




 スイミーという絵本を知っているだろうか。

 赤い小さな魚がたくさん集まり、一匹の巨大な魚に見せかけることにより、敵から身を守ろうとする、そんな話。

 このスペルは実にこれに良く似ている。

 大小様々な大きさの弾幕が密集し、一匹の巨大な龍を生み出すのだ。

 妹紅ちゃんの使う「火の鳥」が一番分かりやすいだろうか。

 

まあ…………あの五倍くらいはでかいけどね。




 まあ、範囲は広くなってるけど、相手の場所依存の一直線攻撃だし、さっきよりは簡単に思えるかもなあ。

 なんて思ってたら。

「スペルカード!」


 「夢想天生」


 霊夢がズルしてた。スペルカードの時間切れ狙って無敵化したみたいだった。

「霊夢ずりーぞ」

「スペルカード使って何がいけないのよ」

「まあ私もできってんですけど……ほら、魔理沙、逃げねえと、やられるってんですよ」

 そして魔理沙を抱えたタマちゃんが…………。

「三十六計」

「逃げるが勝ち……てか?」

 逃げ出した。


「…………………………あれ?」

 逃げられた?

 ふと視線を移すと霊夢も消えていた。

「………………こんな終り方ってあり?」

 一人首を捻りつつ、呟いた。





「あんなの付き合ってられねえってんです」

「同感だぜ」

「全くね……」

 スペルカードバトルが始まった時に霊が言った。

『付き合ってたら進めなくなるってんです』

 だからほどほどに付き合ったら、さっさと次に行ってしまうのが吉だと。

「っと、二人は先に行ってろってんです」

「霊は?」

「梗様を放っておくわけにもいかねえでしょ」

 面倒そうに、けれどどこか嬉しそうに来た道を引き返し始める霊。

「んじゃ、頼んだってんですよ」

 そして飛んでいった霊を見送り。

「…………あ」

 押し付けられた、そう気づいた時にはすでにその姿は見えなかった。


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