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ラヴィング・プア Loving poor  作者: 戸理 葵
パートタイム・ワイフ?
2/54

 家でシャワーを浴びて髪を乾かして、着替えて化粧をして家を再び出る迄に要した時間は、たったの10分だった。我ながら恐ろしい。女じゃないかも。


 ホントさ、よく思うんだよね。もう完璧なお化粧が施された仮面みたいなのがあってね、毎朝それをパカってはめればメイク完成なの。そしたらどんなに楽なのに。ほーんと、こういう時は男って羨ましい。


 みなとは携帯を開いた。昨夜の着信は、一件。夜の10時で、その時間はまだ、飲んでいた。

 壮太からだ。

 折り返しをしようとして、やめた。そんな悠長な時間なんて無い。満員電車にぎゅうぎゅうと詰め込まれ、彼女は会社へと向かった。





「おはようございます」

「おはよう。珍しいね。遅刻ギリギリ?」



 そう言う訳ではない。朝礼にギリギリ間に合った。そのまま頭を低くして、ちっちゃくなりながら席に着いた。

 隣の席の課長が、柔らかな笑みを浮かべた。33歳と若いのにこのポジション。独立が多いこの業界では古株とは言えるかもしれない。それでも、彼は異例のスピード出世だ。

 でも彼の頬笑みからは、そう言った鋭さや世知辛い焦りが、微塵も感じられない。人をほんわかとさせる癒しの雰囲気を持った、これこそ珍しい男性である。


 みなとは眉を下げて、さらに小さく頭を下げた。


「すみません、昨夜ゆうべ飲みすぎちゃって」



 この監査法人に来て3年。28歳とは言え、まだまだ新人だ。だから今まで、少なくとも年次が上の同僚よりは早く出社していたのに。そして同じ課の同僚の机の上を拭いたり、周囲を片付けたりしていたのに。


 世間が言う様な「女の仕事」をやる事に、みなとは抵抗を感じない。お茶汲み、コピー取り、単調なデータ整理、何だって出来る。だってそれをしてもらう側の気持ちが、分かるもの。


 単純にね、すごく有り難いんだもん。

 私……彼らは、本当にギリギリの所で踏ん張って、必死な思いで仕事をしている。そんな時のお茶やコーヒーは、時々涙が出る程嬉しかったりする。

 それにね、そういう仕事をするときは笑顔が、ポイントなんだなぁ。

 すっごく、癒されるの。


 だったら最初から事務職についていればいいものを、と思う人もいるかもしれない。

 そこは、「どうせなら精一杯、死力を尽くして働いてみたい。人生の経験として」なんて真面目に思っちゃったのだ。


 そして文字通り、前の職場では死力を使い果たしてしまった。

 だからここにやってきた。


 したがって、やりがいは求めても昇進は求めていない。これ以上忙しくなって責任を負わされるのは、正直恐い気がする。

 だから私は、結婚に逃げるのだろう。



「随分具合悪そうだったから、心配したよ。本当に大丈夫?」

「はい、ご心配無く。定訪、行ってきます」



 みなとは笑顔で答えると、元気よく立ち上がった。本当は、あまりこの椅子に座っていたくない。

 ……二日酔いが、ばれそうだからだ。匂いで。

 ああ、あたしってばいつ、乙女を卒業したのかしら。


 彼女が思わず一人で遠い眼をしていると、暖かい課長が下から声をかけた。



「高松精機だよね? 二課の吉川くんも一緒に連れて行ってくれないかい? 社長からコンサルの依頼もあるらしいんだけど、上地くんが病欠で彼がピンチヒッターなんだ。社長に面通し、してやってよ」



 はあ? と思って背後の二課を振り返ると、今日もお洒落なスーツを着こなした吉川拓也が二課の課長の側に立ち、既にバリバリと仕事をこなしている雰囲気だった。


 …ちっ。これだから男は楽で羨ましいのよ。あいつ絶対、ロッカーに代えのスーツ、隠し持っている。そもそもあのスーツは、どこのだ? なんで奴が着ると、かったるくかっこいいのよ。バーニーズとかにぶら下がってそう。そうだあいつ、バーニーズのドアボーイでもしてればいいんだ。


「…はい、わかりました」



 ニッコリ笑顔で課長に向き直った。これ、基本。だってこの課長は、何も悪くない。ほんわかな微笑みで返してくれる。

 見てよ、この邪気のない笑顔。こんな人が家族にいると、奥さんやお子さん、幸せだろうなあ。





「みなちゃん、お疲れー。昨日は豪快だったね。お酒強いよねー」



 給湯室の前を通ると、仲の良い同期、山田舞彩まあやが顔を出した。短卒で入社3年目の23歳。長い睫毛と丸いおでこがチャームポイントの、誰からも好かれる元気で可愛い女の子だ。

 みなとはこの彼女が、可愛くって可愛くって堪らない。あたしの母性本能は今現在、全てこの子に向かっていると言っても過言ではない、と思う。


 そして五つ年下の彼女の前では、ついつい、必要以上にお姉さんぶってしまう。

 

「そう? あれぐらい、いつもだよ」



 そもそも昨晩あれだけ飲み過ぎたのも、若手同僚の会で血気盛んな男性どもが舞彩まあやに群がり、下戸な彼女にどんどんお酒を勧め出したのを止める為だった。彼女を目の前でみすみす、酔いつぶさせる訳にはいかない。

 そして男たちの注意を舞彩まあやに戻さない為には、とにかくみなとが盛り上げるしかなかった。故の、あの結果。胃の中で、テキーラとワインとビールのちゃんぽん……。

 うえっ。



「すごーい。今朝とかよく来れたよね? あたしだったら起き上がれないよ」


 素直な舞彩は素直に、湊の努力と気遣いには気付かない。そこがまた、初々しくって可愛い。


「大丈夫だよ。ほら、御覧の通り、ね?」


 ふらついてるでしょ?


「あんなに飲んでも、ちゃんとお家に帰れたの? 記憶とかも飛んでないの?」

「それは平気なんだけど、あたし酒臭くないかな?」

「んー? どれ?」


 

 彼女が鼻を近づけた時、左サイドから別の鼻も近づいた。



「匂うんじゃない?」

「吉川くん!」



 舞彩が黄色い声を上げる。

 拓也はニコッと人懐っこい笑みを彼女に向けると、湊に向き直って手を差し出した。


「はい、ブレスケア」


 透明な粒の入った容器を持って、みなとの手の平を要求している。

 …こーのやろーぅ。

 彼女は黙って、手を出した。



「……ども」

「すごいよねぇ、藤堂さん。あれぐらい、いつもなんだ? 俺だったら絶対、吐いちゃうなぁ。そんで家まで自力じゃ辿りつかなくて、絶対どこかで寝ちゃいそう。それが女の子なら危ないよねぇ」

「……本当よねぇ。誰かに助けて貰わないと」


 

 わざとらしく顔をひきつらせて、笑顔で丁寧に答えてやった。

 なのに彼は、更なる笑顔でトドメを刺す。



「そんな醜態、さらしたく無いよねぇ」

「男の子の前で吐いちゃう女の子って、やっぱちょっとイタイよね」

「だよね、舞彩まあやちゃん」

「……」



 違う。トドメを刺したのは、邪気のない彼女だ。悪意が無い分、余計に傷が深いわ。

 一人悶えていると、彼はまるっこい瞳を湊に向けて言った。



「じゃ、俺、下に車出して待ってるから。なるべく早くに来て下さいね」

「え?」

「……女の子って、時間かかるんでしょ?」


 

 意味ありげな、拓也の目。眉間に弱冠、皺が寄っている。湊もつられて、眉根を寄せた。

 仕事の外訪に、時間がかかるも何もないでしょ? 鞄持って行くだけよ。


 そう言いそうになって、やっと真意を理解した。


 あ、車乗る前に、吐いとけって言ってるのね?

 なんつー気のきかせ方だ……。


 了解です、と軽く頷くと、拓也は気だるく肩をすくめて去って行った。


 

 こういう所が、得体がしれない。優しいのか冷たいのか。



 大きな外訪鞄を片手に歩いて行く彼の後姿を見やっていると、隣で舞彩まあやが呟いた。



「……吉川くんって、彼女いるのかな?」

「……舞彩まあや、本気? あれはタチが悪いよー?」

「え、別にあたしは、ただ、吉川くんは彼女がいるのかな、って。それに彼、すごく優しいよ。いつもとても丁寧な言葉をかけてくれるし」

「それ、みんなに、だから」

「仕事も出来るし、確実だし。あの、つぶらなうるうるって瞳も、結構ヤバいし。社内人気ナンバーワンだよね」

「……だろうね。見た目は申し分ないもんね、あの子」

「でも、プライベートは絶対見せないよねぇ」

「ああ、完璧な秘密主義だよね。それも昔から、だから」

「専門学校時代って、どんなだったの?」

「えー? どんなだっただろう?」



 ふらつく頭で、数年前の記憶を手繰り寄せてみた。

 当時みなとは、就職浪人の勇気が持てず、専門学校に通いながらの社会人一年目だった。



「かったるくって、適当で。みんなと一緒にニコニコしてたけど、なんか目が、笑っていなかったって感じ」

「仲いいじゃん、みなちゃんと吉川くんって」

「仲いいって言うか、専門が一緒だったから、数回飲みを一緒したくらい。あの時からよくわかんない人だけど、女癖は悪そうだったよ」

「……そっかぁ…」

「純粋な舞彩ちゃんには、似合わないよ。危険危険。やめた方がいいって」

「……お姉さま」

「同期です」



 ひらひらと手を振り、湊は拓也とは反対方向に向かった。そう、トイレに。





「ちゃんと吐いた?」


 助手席に乗り込むなり、拓也に聞かれた。

 ピクっときた彼女は、つんと澄まして答えた。



「吐きましたよ? 上からも下からも出しときました」

「ちょっと。女性のたしなみ持って下さいよ」



 車を発進させながら、拓也が呆れた様に言う。

 湊は前方を見たまま、唇を尖らせた。



「持ってますよ? でもどんな美女でもお手洗いには行って、出すモノを出すんです」

「そうやって少しずつ、乙女の要素が消えていくんだ、女って。こぇえな」

「乙女なおばさんの方が気持ち悪いでしょ? 大体日本の男はロリコンが多すぎる。開き直らないと子供なんて産めないのよ」

「……みなとって、子供いんの?」



 拓也に目を丸くされ、彼女は前にのめり込んだ。



「……いるよ、実は」

「……ああ、お姉さんの子供か。そういや出産ビデオ、一緒にまわしたって言ってたな」

「真顔で聞くから、運転席から蹴り落としてやろうかと思っちゃった」

「このスピードでやったら、それ心中だから。あなた、そんなに俺の事好きだったの?」

「はいはい、そのお喋りな口を閉じる」



 そう言って彼女は、ゆるく隣の男を見上げた。

 今朝のキスが、嘘みたい。気まずさも、甘い雰囲気も、これっぽっちも、ない。

 彼女は助手席に沈み込み、目を閉じた。

 

 男女の友情って、存在するのかも。


 しばらくして、拓也が口を開いた。



「後藤課長って、実は庶務の岡田さんと出来ているらしいよ?」

「ふーん」

「部長って、前の支店で新人の女の子をホテルに連れ込んだって噂」

「へー」

「上地さんって今日、実は体調を崩した訳じゃなくって、奥さんがヒスったかららしい。子供がひきこもっちゃってるんだって」

「ほー」

「……興味、無い?」



 声のトーンが変わったので、彼女は閉じていた目を開けて、彼を見た。

 彼は前方を見たまま、特段変わった様子は、ない。



「何が?」

「俺の話」

「自分だって興味無さそうに話しちゃって、何言ってるの。え? 今の話、興味持って欲しかったの?」

「……」



 すると彼は、丸っこい瞳でじーっとみなとを見つめだした。

 途端に彼女の頭の中で舞彩まあやの台詞が再現された。あのつぶらな瞳でうるうるって……。



「……何よ? てか、前向いてよ、恐いって」


 焦って言うと、彼は前方に向き直った。

 それでもやっぱり、真顔。



みなとってさ、もし彼氏がこうやってつまんない話をしたら、そやって生返事をしちゃうの?」

「はい? もちろん、ニッコリ笑って、相手の話に耳を傾けますよ? 頭の中では、次行くコンサートの事でいっぱいだけど」


 旋律がガンガン、リフレインされていてね。


「それで旦那さん、怒んないの?」

「まだ旦那じゃない。怒らないよ。バレないもん」

「もん、ってまた。本当にバレてないの? そうゆう事重ねているとね、後で天罰が下るよ」


「下らない事に耳を傾けなかったから天罰が下るって、そんな事がありますか」


「あるんですよ、これが。相手にとっては、くだらなく無かったりするんです」


「さっきから、何? 私がヨシの話を聞かなかったからって、そこまで絡む? 拗ねてんの?」



 湊が体を起こして尋ねると、拓也は思いがけずビックリした様子を見せた。

 たまたま赤信号になったのでブレーキを踏み、彼女に顔を向ける。

 その顔に少し、戸惑いがあった。



「え? あ、まさか。……なんか、過去の自分を見てる様な気がしてきちゃって」

「……珍しい。ヨシがそこまで他人に興味持って突っ込むなんて。なんかあった? ……はっ、まさか……」



 湊は助手席のドアまで、のけ反った。



「私に惚れた、とか」

「……すみません、そこ、俺、全力で否定しても大丈夫かな?」

「じゃ、なんなのよぉ」


 

 迷惑な奴、とでも言う様に彼女が顔をしかめると、拓也は愉快そうに身をかがめて笑い、そして再び車を発進させた。


「ちょっとテスト」

「てすとぉ?」







「これ、藤堂さんに似合うと思って」



 顧客の経理主任から渡されたモノは、ブランド物のリップだった。

 みなとは絶句する。相手は40歳手前の独身男性。痩身で、見た目はうだつがあがらなさそうだけど、その純朴な性格が彼女は嫌いではなかった。


 気を取り直して、笑顔を見せる。



「……わあ。イブ・サンローランの口紅。いいんですか、こんな素敵なモノ」

「機内販売で一目見て、君が思い浮かんだんだ。そうしたらどうしても、あげたくなってしまって。迷惑だよね? ごめん」

「そんなとんでもない。凄く嬉しいです」

「……それで、今度……どう? 夕食でも。いい店知っているんだ。君、和食が好きだっただろ?」



 キタ。キタキタキタ。



「ごめんなさい。私、再来月、結婚するんです。だから、そういうのは……」


 悲しそうに目を伏せると、目の前の男性は飛び上がった。


「そうだよね! だよね、悪いよね。ごめん、忘れて」

「はい、悪いと思います。だから……」



 湊は緩やかに微笑むと、背伸びをして、彼の頬に掠めるように、唇を一瞬近づけた。

 彼が、全身で固まる。目を見開いて、微動だにしなくなった。

 脳内ではきっと、湊の甘いキスをしっとりと頬に受けた事になっているのだろう。



「これはナイショ。このリップも、今度の彼とのデートで付けますね。ナイショ、ですよ?」



 取りみだしながら訳の分からない事を言って、お礼を言う彼。

 そんな男性を見ながら、湊は思った。


 うーん、私、もうちょっと若かったら、六本木でどれくらい稼げたのかなぁ。素質、あるかも。



「……そーこまで、やるんだぁ」

「げ、ヨシ」



 絶妙のタイミングで、男が去った後に拓也が現れた。

 全て見てました、と顔に書いてある。あんたは社長室にいたんじゃなかったのっ?


 拓也の表情は、からかいでも、軽蔑でも無かった。淡々としている。



「あーゆーのって、みなとのタイプ?」

「性格悪いよ。覗き見も、その台詞も」



 嫌そうに横目で睨み上げたのに、彼は痛くもかゆくも無い様子だ。

 腕を組んで、むしろ冷たく思える目を、彼女に向けた。



「そお? 男を手玉に取っちゃってます、って感じのあなたの方が、性格悪そうに俺は見えるけど?」

「……何度同じ台詞を言わせる。あ・ん・た・が・言・う・か」



 力を込めて嫌味を込めて言ったのに、拓也は首を傾けただけで肩さえすくめなかった。

 

 湊は少し、イラッと来た。そんなに呆れられる事ですか、今のって。



「彼、来週末には地方に転勤なのよ。それより前から、私に気があるのは知ってたし。ああいう男の人からしてみれば、一世一代の勇気を振り絞って声をかけてくれたんじゃないかな?」

「ふーん。やーさしいねーぇ」



 グイっと顔を近づけた拓也の瞳に、初めて、色が見えた。

 挑発の、色だ。



「一人で生きていける女は、自分の楽しみが優先されて、それに合わない登場人物は退場させられるって訳だ」

「……はあ?」

「それで貞操観念が薄くて、口が堅い、と。ね、お姉さん、バイトやんない?」

「……はあ??」



 彼の台詞が理解出来ず、話にも全くついて行けず、湊はどんどん口が開いていった。


「何、それ」



 顎を引いて体をおこし、まるで監査報告書を読み上げるように喋り出した彼のその話に、


 湊は正真正銘、唖然となった。



「契約奥様。丸一日から最長約一週間、別人になりきって誰かの奥様になる。暖かい食事と暖かい笑顔を提供。時には愚痴を聞いたり、マッサージをしてあげたりして、相手に癒しの空間を提供する。もちろん『仕事場』ってのがあって、そこかしこに盗聴・監視カメラがついていて見張っているので、セキュリティーは万全。外出の際にはGPSもついているから安心。セックスはオプション。バイト料は一日最低六万円から、平均十万円」


「……何、ですって??」



 やっとの思いで絞り出した台詞は、なんとも平凡な物だった。

 そんな彼女に構う事無く、拓也は『説明書』を読み上げた。

 


「目的はね、とにかく癒しを提供する事。相手は忙しくてスキャンダルも禁物なビップが多いから、そういう人達を人目から守り、ストレスを取り除いてやる事なんだ。家庭的な雰囲気を求めている人が多いけど、そればっかりとも限らない。そこらへんも、やりがいがあるだろ?」



 やっと拓也の『説明書』を飲み込めて、湊は叫び出しそうになった。


 それって何っ? 高級援交? アダルトな援交お部屋付き、ってヤツじゃないっ?

 吉原の花魁と、何が変わるのよっ変わんないじゃないっあたしが芸を出来ないってだけでっ!



 しかし湊が叫ぶより早く、拓也が腹黒い笑顔で、彼女の台詞を封じ込めた。

 


「貞操観念が欠如していて、かつ相手を思いやり、芝居が上手くて慰めのキスを提供できる身としては、ね? やりがいどころか、ハマるかもよ? 毎回、今までの自分とはまったくの別人になれんだぜ?」



 目の前の、この男は誰?



 湊は初めての物を見るように、見慣れた年下同期の顔を凝視し続けた。









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