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第2話「にじすくーる!には手を出すな!」

「みんな一昨日ぶり~!」


 俺は画面の向こう側にいるたくさんのリスナーさんに向かって喋る。


「今日はゼントー・ランギ君とアースレイダーズやってくよ」


 俺はそう言って今人気のFPSゲームの名前を挙げた。


「ゼン君とは初コラボかな?」


「うーん、そうだね」


「でも全然そんな感じしないね」


「裏でめっちゃ仲良しだもんね」


:そうなんや

:なんか似た雰囲気あるもんな

:にじすくーる!の人と接点あるの単純にすごいな


「あ、たしかに仲良くなってから忘れてたけどゼン君にじすくーる!所属だもんな」


 にじすくーる!とは大手VTuber事務所の一つのこと。


 今の勢力図的ににじすくーる!、ライブミックス、ぶいふぁみ!の三つの企業がVTuber界を席巻している。


 ちなみにれいくんもゼン君と同じにじすくーる!所属だ。


「ほんと俺なんかと仲良くしてくれてありがとな、好きだぞ」


「急に何だよきも!BL営業してないからやめてくれ」


 めちゃめちゃ爆笑された…


 確かに今のはきもいな。


:きもwww

:お前…

:助かる

:きっしょwww

:にじすくーる!に手出すなww


 コメ欄にもこの言われようだ。


「ごめんなさい…、にじすくーる!には手出さないようにします」


「そういえば依織最近れいさんと仲いいみたいじゃん」


「仲いいっていう関わらせてもらってるというか…」


「本当にれいさんにだけは手出すなよ」


「だから俺に男の趣味ないって!」


 冗談めかした俺のツッコミにゼン君は乗ってこなかった。


「あ、うん。まぁれいさんだけは本当にダメだからな」


:え、?

:これがちなやつ?

:これゼン君が取られたくないだけ説


 あ、なるほどそういうことか。


 男の趣味あったのは俺じゃなくてゼン君の方だったってわけか…。


 今の時代そう簡単に触れられる話題じゃないしそっとしといてあげよう。


「わかった。なんかごめんな?」


「え?なんで謝るんだよ」


「まぁまぁ!ゲームやろ?ね?」


 ただゼン君がそういう趣味なんだろうな、という結論でその日を終えた。


 ゼン君のこの言葉の本当の意味を知ることになるのは明日の話だった―――


♢♢♢


「じゃあ今日の配信はここまで!ゼン君ありがとうねー!」


 そういって俺は配信を閉じた。


 そしていつものようにれいくんの配信を開いた。


「今日は雑談か」


 れいくんの雑談は暖かいからみんなの需要も高いんだよな。


『みんなちょっと待ってて~、飲み物取ってくるね』


 そう言ってれいくんは席を立った。


 だがミュートをし忘れてたのか生活音が駄々漏れだった。


「放送事故にならなければいいんだけどね」


 そう思ったときだった。


「きゃっ!」


 がっしゃーん!!!!


 女の人の声と共に隣の部屋からものすごい音が聞こえた。


「あれ、大丈夫かな」


 そんな心配をした矢先だった。


『きゃっ!』


 がっしゃーん!!!!


 全く同じ音が画面の先から聞こえたのだった。


「えっ…?」


 一昨日と全く同じだ。


「まただ…」


 もしかしたら本当に…


 でもだとしたら声の高さが違う理由は?


「ボイチェン…」


 もしかしたらボイスチェンジャーで声を変えてるのかも…?


「でも大手企業Vに限ってそんな訳…」


 そもそも女の人が男の人のふりをするメリットがこの業界にはあまりない。


 逆はやってる人もちらほらいるが男の人のふりをしてる人は聞いたことない。


 でもだとしたらなんで…


「いや、でもまだそうと決まった訳じゃない」


 でも二回もこんなことがあったんだ。


 疑わざるを得ない。


「どうしたもんかねぇ~」


 ピンポンしてみるか?


 いや、もし違ったときどうすんだって話だな。


 壁どんどん叩いてみる?


 もしれいくんが隣の部屋に住んでたとしてもその方法はダメだ。


 そもそも詮索すること自体がナンセンスだよな。


 でも気になるっっ!!


 気になる、気になるけど…


「我慢しよう」


 そう決意した俺は席を立って夜ご飯の準備をすることにした。


 一人暮らしだからご飯も全部自分で用意しないといけないからな。


 もちろん掃除も。


 でも掃除まで毎日やることはできない。


 めんどくさいから。


 だから週の終わり頃の配信部屋は適度に散らかっている。


 たまに足を取られて転びそうになる。


 そのたびに掃除をしなかった過去の自分を恨む。


 だが今日ほど掃除をしなかった過去の自分に感謝したことはない。


「やべっ」


 その言葉が発せられた次の瞬間にはもう地面と天井は入れ替わっていた。


 そして壁にぶつかりながら転んだせいでものすごい音が鳴った。


 どがんっっ!!


 そんな痛々しい音、でも次の瞬間には痛みなど忘れていた。


『どがんっっ!!』


 れいくんの配信から俺が先ほど出した音と全く同じ音が鳴った。


『えっ!?大丈夫かな』


 れいくんはそんな風に隣人である俺のことを心配していた。


 でも大丈夫じゃないよれいくん。


 推しが隣の部屋に住んでいる、その事実はさっき転んだ衝撃よりも大きいものだったから―――

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