魔石の値段と今後の方針
三時間ほど第一層で狩りをした後、昼休憩のためにダンジョンを出た俺はギルドへと向かう。ドロップの買い取りをしてもらうためだ。
ダンジョンで得たものは原則ギルドが買い取ることになっている。ギルドの利権のためであるが、探索者側にも利点はある。
手数料は取られるが、ドロップの鑑定、買い取り、納税から、銀行のように現金の預け入れ、引き出し、資産運用など諸々を引き受けているからだ。探索者にとって便利な組織であることは間違いない。
ギルドに着くと大勢の探索者で賑わっていた。お昼時に来たのは間違いだったかなぁと思いつつ、少しでも列の短い受け付けを探す。と、一個だけ妙に空いてる受け付けがあるのでそこの列に並ぶ。少しすると俺の番が来た。
そこにいたのは冴えないオジサンだった。あれ?と俺は不思議に思う。
ギルドの受け付けは花形の職業で、その席に座るのは美男美女だからだ。気性の荒い探索者を上手に扱うために、見目の良い男女に専門の教育を施し受け付けをさせる、というのがダンジョン庁の方針だと思っていた。
でも目の前には冴えないオジサン。まあ気にすることでもないかとドロップを預ける。
「鑑定します…しばしお待ちください…」
声が小さい。そんで雰囲気暗い。もしかして…!
この人、俺と同じコミュ障だ!
オジサンに謎の親近感を覚えていると、すぐに鑑定が終わったようで査定額と内訳が書かれた紙を提示される。
内訳はスライムの魔石複数、ゴブリンの魔石複数、それとスライムのレアドロップであるスライム液が瓶三つ。そう、ドロップは魔石だけでなく、そのモンスター固有のレアドロップがあるのだ。
スライム液の効能は保湿。化粧品である化粧水や乳液に使われるので女性人気が高く、レアドロップ率上昇のスキルを持ったスライム狩り専門探索者なんてのもいるくらいだ。
ちなみに査定額は合計2800円…。三時間やってこれ、東京の最低賃金にも満たない…。やはり第二層から奥へと進み、もっと効率の良い狩りをしないと労働とは言えないらしい。
お昼ご飯にギルド内の食堂でラーメン(900円)を食べ、こちらもギルド内のショップに入る。
ショップには探索に便利な様々な商品が置かれており、武器や防具から、照明器具、糧食や飲用水、魔導具もある。
その中から俺が買ったのは糧食一食分と飲用水、そして肩掛けカバンだ。
家から腰に付けるポーチを持ってきていたのだが、第一層で三時間狩りをしただけでドロップで満杯になってしまったのだ。
なので仕方なく肩掛けカバンを購入。それも内部拡張型の魔導具で5万円もする。初日とはいえ大赤字だ。
これは狩りで取り返すしかないと急いでダンジョンに入り第二層を目指す。第二層への階段を降りると、そこにはゴブリンの王国が広がっていた。
階段を降りた先は小高い丘になっていて、第二層全体を見渡せる。地下にあるくせに青い空、緑の草原が広がり、そしてそこら中にゴブリン。目を凝らすと奥の方にゴブリンが作ったと思しき木造の要塞まである。
もしかして、第三層への階段ってあの要塞の中なのか?
講習で聞いたことを思い出す。第二層は攻略推奨レベル5、第三層はレベル10。これは四人パーティーを組んでいる場合のものだ。そして今の俺はというと…
NAME:忍野 瞬
JOB:
LV:3
EXP:8.2
SP:0
HP:30
MP:30
STR:3
VIT:3
INT:3
MND:3
DEX:3
AGI:30
LUK:10
SKILLS:
隠密Ⅰ
相変わらずAGI型ではあるが、【隠密】というスキルを取ってみた。効果は一定時間ごとにMPを消費して、自身の気配を薄くするというもの。AGI型として逃げ回るのも戦法の内なので、隠れ潜むスキルは必要だろうと思ったのだ。
まあ今すぐ必要な訳ではないが、ゴブリン要塞攻略時には使うだろうなぁ。
まずは平原に点在するゴブリンに近付き、ナイフで首を刈り取る。一撃だ。そう、俺は一撃でゴブリンを殺せるようになっていた。STRはほぼ上がっていないのでSTRのおかげではない。
先輩探索者の皆さんによると、物理攻撃力はSTRだけで決まる訳ではないそう。研究の結果、物理攻撃力は(STR×1.0)+(DEX×0.8)+(AGI×0.7)という計算が行われるらしい。なので前衛物理型はSTR>DEX>AGIで上げることが多い。
俺は逆にAGI>DEX>STRの順に上げるつもりだ。AGI以外も上げるのは、DEXが命中率とクリティカル率に関わっていて、AGIだけでは攻撃力に欠けるのでSTRも欲しいからだ。
物理攻撃力の他にも、魔法攻撃力、物理防御力、魔法防御力の計算方法もあるが、これは俺とはあまり関わらないので割愛する。
ともかくゴブリンを一撃必殺出来るようになった俺は、平原を駆け抜け刈り取って行く。基本素手で戦っているゴブリン達だが、要塞に少し近付いたところでナイフを持った一匹のゴブリンと相対する。多分ゴブリンソルジャーの末端だろう。
俺がナイフで首を刈りに行くと、そいつはナイフで俺の攻撃を防いてきた。今までのゴブリンとは違う。俺は即座に飛び退ると、【隠密】を使って近くの茂みに入る。
ゴブリンソルジャーは俺を見失ったのか、辺りを一度見回すと力を抜いた。
その瞬間、俺は【隠密】を維持したまま走り寄り首の後ろにナイフを突き刺した。ゴブリンソルジャーはビクリと震えたあと消滅した。
勝った。ただまさかこんなに早く【隠密】を使うことになるとは。俺はドロップを拾って要塞から離れる。
ゴブリンソルジャーのドロップには、魔石の他にレアドロップであろうナイフもあった。これはギルドに帰ったら鑑定して貰わねば。
しかし、しばらくは平原でゴブリン狩りかなぁ。要塞攻略にはステータスが足りてないのは間違いない。でも同じモンスター倒し続けるのは効率が悪い…。
探索者だけでなくモンスターにもレベルがあって、探索者のレベルがモンスターのレベルを超えると、得られる経験値が減るのだ。レベル差が大きくなるほど経験値は減る。つまり雑魚狩りをし続けるのはレベル上げに関しては非常に効率が悪いのだ。
まあ仕方ない。レベル5までは我慢だ。ギルドに帰ろう。




