幻影①
北と南に分かれぶつかり合う2つの国。
友、家族、故郷、全てを失い、ただひたすら復讐だけを願う少女とその仲間、そしてその敵。
そんな人間たちの人生を描いていく物語。
サタンとマモンの戦死から1年が経過した。
レイン達は恩師の死に非常にショックを受け、
一時的に全員が希望を失ってしまっていたが、
段々と立て直しつつあった。
そんな中で南国のルシファーが動き出した。
「1年前に失ったサタンの思いを引き継ぎ、
北国を責め滅ぼしベルゼブブを殺す。」
そうして、北伐が始まろうとしていた
一方のベルゼブブは受けて立つと発表し、
大将軍の集まりが開かれた。
そこにマモンの代わりに呼ばれたのはレインだった。
「レヴィンの調子はどうだ?
アイツ最近話してくんねぇんだよ」
「はい…一時は部屋に閉じこもりっきりで、
食事すらとれない状況でしたが、
今は回復しつつあります。」
「そうか…お前たちも苦労するな」
前会った時は毒舌だったレヴィアタンも、
状況を察してか、優しめであった。
「それにしても、ベルフェゴールは南国の中では
戦略的なんですね……
ずっと突進ばかりする将軍と戦ってきたから
かなり意外です……」
アスモデウスはずっと分析をしていた。
彼女は人一倍仲間思いであったからか、
少しでもマモンのために行動したいと
思っていたようだ。
そこに、ベルゼブブが登場する。
「私の算段ては、ルシファーと私が決闘するのが
1番効果的だと思う。相手は私の能力を
知っていないし、何せ断れないだろう。
ところでだレイン、ベルフェゴールへの
対策として何かあるか?」
レインはベルフェゴールの行動を思い出した。
「全方向からの攻撃でしょうか、
カルの【鉄壁】を打ち破らなければいけません」
「だとしたら、ここにいる将軍で誰を
連れて行きたいか?」
「連れていくのならばアスモデウスさんが良いかと、
粘り強く戦えそうなので。」
「了解だ。ではこれからのことは段々と決めていく。
会議は終わるので、各自指示を待つように」
そうして、レインはマモン邸に帰ってきた。
昔ほどの明るさは消えていた。
「…みんな、ただいま」
「おかえりレイン、何か決まった?」
「対ベルフェゴールにアスモデウスさんが
協力してくれるかもってくらい」
そのような、淡々とした会話だけである。
口を開けば戦いの話になってしまっていた。
そんな日々に嫌悪感を示していたのは、
サクラ1人だけだった。
「ねぇ、明日誰かご飯食べに行かない?」
「僕はいいかな。
姉貴に突き技教えてもらう予定だし」
「私も修行があるのでまた今度でお願いします。」
サクラはなんとも言えぬ表情で「そう」とだけ言った
内心ではとても寂しく、辛かった。
(きっと皆そうなんだ…
マモン様の仇を取らないとって焦ってるだけで…)
コンコン
ノック音がドアから聞こえる。
「はーいどちら様で…」
レインは一瞬で言葉を失った。
そこには死んだはずのマモンがいた。
全員が驚き、動けなくなった。
マモンは一言だけ呟いた。
「なんだ。全員いるのか」
そう言ってマモンは砂のように消えていった。
全員は狐に騙されたかのように硬直していた。
これは亡霊だったのか……
また全員に涙が込み上げてきた
能力紹介その9
異能力【鉄壁】
攻撃力……1
俊敏性……1
防御力……5
技範囲……3
隠密性……2
5 高い ↔ 低い 1
〈能力者のひとこと〉
頭は柔らかいですよ。