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One Apple  作者: 胡瓜パフェ
第一章 開幕
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開幕

北と南に分かれぶつかり合う2つの国。

友、家族、故郷、全てを失い、ただひたすら復讐だけを願う少女とその仲間、そしてその敵。

そんな人間たちの人生を描いていく物語。

レンガ造りの家

少女が階段を降りていると

突然1人の少年が飛び出してきた。


「おっはよー!!レイン!!」


「おはよう、アズ。朝から元気ね」


「だって明日だぞ!リンゴ!!」


この世界には、とある果物が存在していた。

力の果実、通称「リンゴ」

匂い、形、食感、味、全てリンゴである。


ただ1つ違うのは食べてからだ。

食べた者は、本来なら人間が使えない異能力を

使うことができるようになる。


だが、そのリンゴは貴重すぎた。

果実の生産方法を多くの人々が探し求め、

ようやく生まれた技術を巡って大国が分裂した。


その結果、リンゴの生産技術を手に入れ、

南国から独立できた北国と、技術も手に入れられず

独立も許し一気に弱体化した南国が生まれた。


これは、北国に生まれたレインと、

挽回を狙う南国の壮烈な争いの物語である。



2人は買い物の道中に話していた。


「アズはどんな異能力が欲しいの?」


「そりゃあ!戦えるやつっしょ!俺がこの国の将軍に

なって南国ボコボコにしてやるんだ!

この街って国境にめっちゃ近いから、

かあちゃんたちを守ってやるんだ!」


レインは寂しげな表情でアズを見つめた。

北国が南国から独立して10年、

未だに戦争は終わらない。


そこに国境へ出撃していた軍隊が帰ってきた。


「すげぇー!かっけぇー!!」


アズの目は輝いていた

しかし、レインが見ていたのは1人だけだった。


(何あれ……めっちゃかっこいい……)


彼女はずっと1人の青年を見ていた。


「あのー…レ、レインさん、?」


アズが気まずそうに話しかけたが、

レインはそのまま城門までついて行き

衛兵につまみ出された。


「レイン……お前緊張してる?」


アズが心配そうに話しかけてきた。


「大丈夫よ、なんだか初めての

感情にビックリしちゃって…」


それを聞いたアズは一瞬

宝くじの1等ラスト1桁が違って落選した時のような

顔になったがすぐに戻り


「変なの、さっさと帰ろーぜ」


と言った。


家でその話をするとアズの親は

そっとアズの頭を撫でた。



いつも通り、平凡な1日

けれど明日何か変わるかもしれない1日


「おやすみ、お母さん。」


レインはペンダントをそっと机の上に置いた。


外が光った。


「異能力 【憤怒の火山】 」


誰かがそう呟いた気がした。

その次の瞬間、街が燃えた。


レインが目を覚ますと、倒壊寸前の家があった。


「あれ……何が…?アズは、皆は…?」


そう呟くと同時にまた外が光った。

アズが部屋に入ってきて叫んだ。


「逃げろ!!!!」


目が覚めると、アズがいた。

辺りは焼け野原だった。

アズしかいなかった、

レインは左腕に火傷を負っていた。


突然空から1人の女性が降ってきた。

茶髪で髪の短い人だった。


「運がいいな、生かしといてやる」


何が何だか分からなかったが、

アズは何かが分かっているようだった。


「お前だろ…こんなことしたのはッ!!」


女性は振り返り言った。


「こんなところで死にたくは無いだろ?」


アズは何か大声で叫んで、レンガの破片を片手に

女性の方へ走り出した。

次の瞬間、アズの胸に鎖が刺さった。

血が、レインの肩に降りかかった。


「面白そうなやつだったんだがな」


と女性は言って、去っていった。

レインはあまりのショックに仰向けに倒れ込んだ。

そこに1人の青年が通りかかった。


「鎖のコントロールいい感じなってきたな」


そう言って、アズに刺さった鎖を引き抜き、

その場を去っていった。


間違いなく、軍隊にいた男だった。

あまりの出来事に、レインの心は完全に砕かれ、

5分間ほどボーッとしていた。

だが、アズが喋った。


「レ……イ………お……れ……」


レインはただただ黙って聞いていた。


「しに…たく………な……い」


言葉が聞こえなくなった。

呼吸音も聞こえない。

レインはその場で意識を失った。



少し賑わっていた、小さな街だった。

レインはその街の唯一の生存者として、

多くの質問を受けたが茶髪の女性のことや、

青年のことは何ひとつとして言わなかった。


レインの望みはその日から、

平穏に生きることでは無くなった。

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