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4話 魔力回路

丘の上に据えられた学園は、城でもないのに塔があり、要塞でもないのに隙がない。白い外壁は陽を跳ね返し、芝は刈りたての匂いを放っている。


「久しぶりね、カンザキ君。ようこそ『王立ルミナリア学園』へ!」


ひさしぶりに見るアッシュダウンさんは、黒い外套を肩でまとめ、きりっとした目で笑った。


「お久しぶりです。……元気そうで」


「もちろん!あなたはちゃんと食べてたかしら?読み書きはできるようになった?」


「おかげさまできちんと食事は取れています。読み書きに関しては日常生活には困らないほどは理解できました」


この世界の文法は日本語と一緒だったため、わりとすんなり理解することはできた。何故か日本語でこうして問題なく話せているため、あとは単語を覚えていくだけである。


「なら安心だわ」


彼女は胸を撫で下ろすかのように脱力し、笑みを浮かべる。


「入学式は来週だと聞きましたが、どうして今日、呼ばれたのでしょうか」


「呼んだ理由は二つあるわ。一つは、学園の実技授業は使える魔法でクラスを分けているから、あなたの適性属性を先に知っておきたいの。もう一つは、今日から寮に入ってもらうことになったわ。入学は一週間後だけど、生活に慣れておく方が、あとあとは楽だと思うから」


「配慮ありがとうございます。それで適性属性ってどうやって調べるんですか?」


「ついてきて!」


彼女の背を追う。磨かれた石の床に足音が軽く跳ね、天井には術式のレリーフが蔓のように走っている。中庭を横切ると、青い花の匂いが風に混じった。すれ違う上級生が会釈を寄こす。視線は好奇と敬意の両方を含んでいて、アッシュダウンの立場がこの場でどれほどの権力を持っているかを自然に教える。


「ここルミナリア学園は王国一の魔法学園と呼ばれているわ。王国最難関の入学試験をくぐった優秀な生徒が集う格式高い学び舎。ここに通う生徒のほとんどは並外れた魔法の才能を持つ上級の貴族よ。きっと大変な日々が待ち受けていると思うけど、負けずに頑張ってね」


国一番の教育機関。陛下も、こんな所にいきなり入学させるなんて何を考えているのか分からないな。

果たして、なんの知識も持たない僕がやっていけるのかは甚だ疑問だが、しかしここまで来たらやるしかない。

貴族同士のいざこざや、身分による差別や偏見もきっとあるだろうなぁ。

そんな考え事をしているうちにアッシュダウンの足が止まる。


「…っと部屋はここね」


案内されたのは、廊の端にある静かな一室だった。灰白色の壁。中央に長机が三列。透明な水晶が、台座にのって見える限り三十ほど、几帳面に並んでいる。台座の縁には細かな術線が絡み合い、指先にかすかな引っかかりを残した。


「適性属性測定室。ちなみに、ここにある水晶は、私が作ったのよ!」


彼女は少し自慢げに胸を張るが、自分の無知さ故になにがすごいのか分からない。


「それはすごいですね。さすがアッシュダウンさんです」


「ふふ、思ってなさそうな返事をありがとう。それとここでは一応教師と生徒になるからアッシュダウン先生と呼んで」


「分かりました、アッシュダウン先生」


「よろしい。ではこの部屋の説明をするわね。この部屋の水晶には一つ一つ、対応する属性の『魔力回路』を拾う術式を仕込んであるの。その属性の『魔力回路』を持っていれば、自動で必ず光るようになっているわ。どのくらい強く光るかは『魔力の質』にもよるけど」


「すみません。魔力回路と魔力の質について教えてもらってもいいですか?」


「ええ、そうね。カンザキ君は魔法に関しては初心者だったわね。魔力回路は生まれつき体に持っていて、魔力の流れを作っているもののことよ。魔力をどの属性の魔法に変換するか、どれくらいの量を出せるかを決める装置のようなものね。詠唱でも術式でも、その属性の魔力回路を持っていなければ、魔法はそもそも発動しない。

一方で魔力の質は変換のしやすさのことね。質が良ければ強く、安定して、効率よく魔法に変換できるわ。魔力回路さえあればその魔法は発動はするけれど、質が悪ければ大した威力にならずに消えたりする」


「なるほど」


「それと基準を言っておくわね。一般の人はだいたい五属性くらい魔力回路を持っていることが多いわ。そのうちの一つは回路と質が良いようにマッチして他の属性よりも特に強く光ることが多い。もちろん強く光った属性はより強力な魔法を使えることになるでしょう。その強く魔法を出せる属性を『適性』と呼んでいるわ。ちなみに、この学園の生徒なら十個前後の属性が光る人も多いし、強く光るのが二つ三つの子も珍しくないわね。適性の属性にはそれだけ伸びしろがあるということだから、適性の属性をメインに伸ばしていくのが普通よ。この説明で理解できたかしら」


「はい、ありがとうございます」


アッシュダウンは過去に僕の魔力を見て不思議な質感だと言った。

これは異世界転生ものによくある、チート能力を授かったという前フリなのではないか。

とにかく今は力が欲しい。僕はどんな魔法が使えるようになるのか、こんなにワクワクしているのは久しぶりだ。


「では、始めましょうか」


並んだ台座の端に、金で小さく銘が刻まれている。火/水/風/土/雷/氷/木/金属/闇/光/回復/毒/音/召喚/霊/精神/幻/空間……


「まずは火から」


僕は深呼吸して、火の水晶に手を置く。ひんやりした硬さが掌に返る。

……何も起きない。


「火回路は無しね。次、水」


まあまあ、火はちょっと物語にしてはベタすぎるしね。

それに火、水、風、土、回復あたりはスラムでも詠唱を教えてもらったけど何も起きなかったし、なんとなく結果は察せる。


『水』 反応なし。


「次にいきましょう」


『土』 反応なし。


「うーん。次」


『雷』 反応なし。


「次」


『回復』 反応なし。


「次」


『光』反応なし。「次」

『空間』反応なし。「次」


アッシュダウンの「次」が、流れるように落ちてくる。僕の手も、台座から台座へ機械的に移動していく。だが、ひとつも光るそぶりすら感じられない。

静かな部屋の空気が、足首からじわじわせり上がる。大丈夫、焦るな。まだまだ水晶はこんなにも…


と思っていたのも束の間、何も適性を示さないまま、すぐに最後尾の台座の前に到達してしまった。


台座に書かれた属性名は…


『美容』


視力が落ちたのかと思い、眉間にしわを寄せ集中するように見ても、やっぱり美容。


「あ、あのー…ちなみにこれは何ができる属性なんです?」


「ニキビを治したり、肌をつるつるにできる魔法を使えるようになるわ…切り傷や跡に効く魔法もあるの。戦場帰りの戦士や恋する乙女たちからには需要は高いわ…案外、重宝するもの…よ?」


戦闘に使えねえじゃねえか。

いや、落ち着けカンザキ。そんなことを言っていられる状況じゃない。

ゼロかイチなら間違いなくイチの方が良い。


僕は息を呑む。


手を伸ばし、そして触れる。


結果は……


反応なし。


沈黙。アッシュダウンさんは腕を組み、目を細めた。「こうも反応がないのは初めて。この部屋にない属性を持っているのかしら……美容属性でも光ってくれたら毎日のお肌のケアも楽になったのに…」


「何か言いました?」


「ああ、いいえ何も、気にしないで!」


いや、ぼそぼそと小声で言ってましたけど、僕には聞こえてるからね!

美容属性が光れば何か僕を良いように使おうとしてたな!クソ!


「はは、アッシュダウン先生はいくつ適性属性があるんですか?」


「うふふ、ほとんど全部よ」


またもや得意げな顔で自慢するように胸を張っている。


「……はあ。そのセリフ、僕が言いたかった」


今の惨状を見たからこそ今度は分かる。これはかなりすごいことだ。

そういえばこの年で『伯爵令嬢』ではなく、『伯爵』と呼ばれているし、今、目の前にいる女の子は実は予想だにしないビックな存在なのかもしれない。


「ふん…何かこのまま終わるのも忍びないし、ちょっと見てみましょうか」


彼女は小さく息を吐くと詠唱を始めた。行と行の切れ目で息の高さが変わり、言葉が空気の網を編む。

詠唱が終わるや否や、ぐっと距離を詰めてきた。肩、鎖骨、腹、腰、背へと視線が滑り、そして僕の顔に顔を寄せてきた。彼女の息が顔に触れる。睫毛の影、頬の産毛まで見えそうだ。


「……何をしているんですか」


「あ!ごめんなさい!近かったわね。探知属性の魔法で魔力の流れを見てるの。この状態だと人の顔がよく見えないからつい意識するのを忘れていたわ」


彼女は顔を赤くして恥じらいを見せた。

なるほど、彼女はあざとい系の人間だな。


「もしかしたら水晶と相性が悪かっただけの可能性もあるし、魔力回路を見ればどんな属性の回路に近いか当たりが付けられるかもしれないと思って。二十分も観察すれば分かると思うから、そこの椅子に座ってちょうだい」


椅子に座るとアッシュダウンは僕の周囲をゆっくり回り、角度を何度も変えながら覗き込んだ。

髪が頬をかすめる距離に寄る瞬間がある。普段ここまで人を近づけることはないから正直、くすぐったい。


「あなたの魔力、透明で見にくいわね…」


彼女がさらに僕の身体に顔を寄せた。もはや顔が僕の身体にぶつかるのではないかと思う距離で彼女はずっと僕の身体を観察している。


だが僕は動じない。なぜなら、きっと彼女にとってはこれが当たり前なのだ。ここで僕が恥じらうようなそぶりを見せれば「何意識してるの」とドン引かれること間違いない。あくまで紳士として平然を保つのだ。


そして僕は無我の境地に至る。さながら、川の流れに身を任せて角を取る石のよう。


やがて、四十分ほど過ぎたころ、すっと距離をとった。唇の内側で囁くように言葉がほどける。


「そんなこと、あり得る……?でも彼の魔力は…」


「何かわかりましたか?」


「ええ。あなたの魔力の動きに法則性が見られなかった。まるで、魔力が体中を自由に飛び回っているよう」


「それだと何か悪いんですか?」


「魔力回路は魔力の流れを作っているものだと説明したわよね。基本、魔力は魔力回路に沿って体中を巡っているから、魔力が自由に動くなんてありえないの。つまりねカンザキ君、あなたには『魔力回路そのものが無い』可能性が高い。回路が無ければ魔力はどんな属性の魔法にも変換することは不可能よ」


なんだよそれ。僕の第二の人生、魔法を極めて無双するんじゃなかったのかよ。

これからも情力一本で頑張って行けって?さすがに無理がありすぎる。剣を折ったおっさんにだって、直前に感情が爆発していて、かつおっさんが本気でなかったから切り抜けられたにすぎない。普段の僕と戦えば間違いなく今度は負ける。そんな易々と感情を爆発させることも不可能だ。

それでは底が見えすぎている。


もはや一周回って冷静になる。


「……まずいわ」


アッシュダウンが机に両手をつき、珍しく表情を曇らせる。


「この学園のカリキュラムに、魔法なしでついていけるのかしら。実技に出たらきっと危険な目にあってしまう。私が招いたのに……ごめんなさい」


そこでアッシュダウンはその先の言葉を言うべきか迷ったが、一拍おいてまた、口を開く。


「入学はやめた方がいいのかもしれない」


僕はこの学園の授業内容を知らないが、アッシュダウンは知っている。この情報の非対称を考えれば、僕の大丈夫だろうという思考は希望的観測に過ぎず、アッシュダウンの言葉に従った方が賢明だと言わざるを得ない。しかし、逆境に立ち向かわずしてそこに成長はあるだろうか。入学をやめたところで魔法との力の差は埋まるだろうか。否。そんなことはない。このまま学園入学を諦めれば、これ以上の成長の扉を閉ざし、無作為の悪意に轢き殺されると直感が告げている。立ち止まって死ぬくらいなら…成長する機会を持ってあがくべきだ。


僕は決意を固める。

俄然やる気になってきた。


「身体能力には自信があります。実技授業で、魔法が使えなくてもごまかせそうなクラスはありませんか?」


アッシュダウンの目がこちらを測る。


「剣術クラス…かしら。身体強化系の魔法は遠距離系の魔法と比べて見た目には分からないことが多い。あのモンフォールの剣を折ったんだもの、もしかしたら素の戦闘力でもついていけるかもしれないけど…」


「そこに入ります」


もう迷うわけには行かない。

僕は即決する。


「ほんとうに?あなたの実力を否定したいわけではないのだけれど、モンフォールはあの時、まだまだ本気ではなかった。あなたが子どもなこともあったからね。自分の力に驕りはない?命の保証はできないわよ?それと、ここは王国一の魔法学園、この学園に来る人はみんな強い。それに、貴族が多いからきっと嫌味を言われ続けるわ。それから…それから…」


彼女は高校受験に息子を送り出すかのごとく質問攻めをしてくるが何を言われようともう決めている。


「大丈夫です。入らせてください」


僕は彼女の目を真っすぐ貫く。

彼女は顎に手を当て考え事をする素振りを見せるが「はあ」とため息をついて向き直る。


「よし!そこまで言うならきっと大丈夫ね!でも死にそうだと感じたらすぐに逃げること。いいわね?」


「ありがとうございます」


「一つ、学園で過ごすにあたって気を付けるべきことがあるわ。魔法が使えないことは、聖教にとって異端者に捉えられる可能性がある。異端者と知れば、どんな手を使ってあなたを排除しようとするか分かったものじゃない。それと、信徒じゃなくてもその価値観は広がってるから、聖教ほど過激でなくても良いように思われることは基本無いと思って。つまり、極力魔力回路がないこと、魔法が使えないことは誰であろうと言わないこと」


「肝に銘じます」


「そうね…あとはごはんはちゃんと朝昼晩食べること、早寝早起き、授業には遅刻しないこと、甘いものは食べ過ぎないこと、夜遊びはほどほどにすること!」


「はは、そんなに心配しなくても大丈夫ですって。アッシュダウン先生は僕のお母さんになったのですか?」


そこで彼女は、ふっと肩の力を落として笑った。


「あーあはは。そうねごめんなさい。ついカンザキ君を見ていると過去の私を見ているみたいで危なっかしく思えて」


彼女ははにかむように笑い終えると、きりっと真面目な顔を作る。


「あなたは同年代の子と比べて精神がよく発達している。それでいて、優しくて聡い。だからこれだけは覚えておいて。辛いときは必ず誰かに頼るのよ。誰でもいい。なんなら私がこの胸を貸してあげるわ。独りだけにはならないようにね」


彼女もいろいろな苦悩があったのだろう。

しかし、場違いだと言われるかもしれないが、善意を向けられて今、高揚感があふれ出ている。

表には出さないようあくまで真面目を装う。


「覚えておきます」


「はい」と胸の前で手を叩くと空気を入れ替えるように彼女から明るい雰囲気が戻る。


「それじゃあもう一つの目的、寮にいきましょうか!と言いたいところなんだけど、思ったより時間を使っちゃったわね。本当にごめんなんだけど、この後、入学式に向けて少し事務作業をしないといけないの。寮の場所、食堂の時間、洗濯場、門限などはこの案内書に全部書いてあるわ。ここからは一人でいけるかしら」


革の包みを渡される。中にはここ最近読めるようになった文字だらけだが…かろうじて読める。


「はい、問題ありません。事務作業頑張ってください」


「ごめんね、じゃ私は行くから。また入学式の日にでも会いましょう!」


そういって彼女は走り去っていった。

窓の外の陽は傾き、床に長い影が伸びている。







それにしても寮は思ったよりも遠かった。

まあ貴族ですらないしね。こればっかりはしょうがない。

寮棟は三階建てで、赤い屋根に白い壁。玄関前の掲示板には落とし物の知らせと合唱団の募集。

受付に座る丸背の女性が顔を上げた。


「今日からの子かい」


「カンザキ・ケーラです。お世話になります」


「寮母のマルタだよ。部屋は二十七号室」


「ありがとうございます」


言われた部屋の前に立ち、ドアノブを回す。扉は厚く、金具は丈夫そうだ。しかし、中に入って扉に向き直ると違和感に気付く。


鍵穴がない。さすがに鍵くらいは常識だと思い、横や下、さまざまな位置を確かめても、どこにも鍵穴が見つからない。


踵を返して受付へ戻る。


「すみません、鍵がないんですけど」


「ああ、渡し忘れてたね。この術式札が二十七号室の鍵だね」


マルタは引き出しから薄い札を取り出し、ひらひらさせる。表面に緻密な線が幾重にも走り、花のような、歯車のような紋が浮いている。


「この術式に魔力を込めると二十七号室の扉の鍵の開け閉めをコントロールできるようになるよ」


恐るべし魔法学園。部屋の鍵すら魔法を使うのか。

いや、まてよ。さっきアッシュダウンは術式にも適性の魔力回路がないと発動しないと言っていたはずだ。この術式の属性の魔力回路がない人はどのように魔法を発動するのか


「術式ってその属性の魔力回路が必要なんじゃないんでしたっけ?これは、何属性の魔法ですか?」


「いい質問をするね新入生!これは複合術式といってね。いくつもの属性の術式を組み合わせて作られているのさ。火、水、土、風などの一般的な魔法を持っていればまず間違いなく発動するはずだ。まだまだ他の属性にも対応していたはずだけど、あとは忘れてしまったね。二十近くはあったと思うんだがね」


「あ、あはは。分かりました。便利ですね(白目)」


魔力回路を一つも持っていない僕は年中無施錠で生活しろと?プライバシーはどこへ?


「ああ、そうさ。なんたってこの複合術式は学園の若き天才、『テレサ・アッシュダウン先生の発明』なんだからね。あんたもこの学園に入るなら、一度は名前を聞いたことはあるだろ。最先端の技術、うちの学園だけの贅沢だよ」


アッシュダウンめ、なんてものを発明してくれてんだ。これは僕への当てつけなのか。いや僕が悪いんだろうけど。


そして僕は今度会ったときに、苦言を呈すことに決め、苦笑いを咳に紛らせて術式札を受け取る。


部屋に戻る。廊下はすでに夕闇で、月明かりが窓から差し込んでいる。部屋の蝋燭を灯し、ベッドの前で、もらった術式札とやらを持ち、魔力を流そうと、踏ん張り、いきみ、諦めて、もはや情力を流してみてもやはり何も反応はない。札は静かなまま、扉も沈黙している。


もういいや。

僕は術式札を放り投げ、そのままベッドに倒れる。

もう鍵なんてどうでもよくなった。時には不可能なこともある。見切りをつけて前に進むことも大事だ。


中は質素で清潔だった。小机と椅子、棚。窓辺の白いカーテン。ベッドは思ったより柔らかい。


無施錠のまま、目を閉じる。

胸の中は、不思議と軽い。


学園生活頑張らないとな。

そう決めて、眠りに落ちた。



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